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村上海賊の娘

むらかみかいぞくのむすめ

和田竜の歴史小説。 瀬戸内最強を謳われた戦国時代の海賊「村上武吉」の娘「景(きょう)」の生き様と、織田軍vs本願寺の「石山合戦」の一端を描く。
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『村上海賊の娘』とは、和田竜による歴史小説作品である。


概説

織田信長本願寺顕如の抗争の最終幕である石山合戦を舞台とし、そこに紛れ込んできた戦国最強の海賊と謳われる村上水軍の棟梁・村上武吉の娘の姿を、「第一次木津川口の戦い」へと向かって描いた作品。


瀬戸内海・能島(のしま)周辺と大阪湾一帯という、離れた場所を豪快に行き来する和田竜作品でもかつてないスケールで描かれており、そのページ総数も単行本にして500頁級で二巻(文庫版で四巻)という、和田竜氏の作品では過去最長編の作品となった。


作者曰く、「創作の切っ掛けは、広島の小学生時代にまわりに村上姓がたくさんいて興味を持ち、家族旅行で因島にも行き、村上水軍の存在を知ったこと」だという。

このときの疑問を作家デビュー後に本格的に調べ、そこで村上水軍をテーマとした作品の構想に至ったとしている。



あらすじ

1576年(天正4年)。

かねてより抗争の続いていた織田信長と浄土真宗総本山・本願寺は、石山合戦にて遂に雌雄を決することとなった。

長きに亘り籠城戦で抵抗する本願寺だったが、いよいよ兵糧不足が深刻化し、加勢する武士団や門徒たちの疲弊は頂点に達しようとしていた。

この打開策として、本願寺に身を寄せる雑賀孫市は織田側と対立する毛利氏と、その傘下にある村上水軍へ十万石の兵糧の催促を顕如に具申する。


兵糧の具申を受け、毛利氏もいずれ戦うであろう織田氏との関係を見据えて具申を受け入れる。しかし一代の傑物・毛利元就はすでにこの世にいないため不安は拭えず、家臣団をまとめる小早川隆景は具申の受理に否定的な考えをもっていた。

しかし家臣団の勢いは抑えられず、交渉の決裂を案に願いながらも隆景は村上氏へと遣いを出すこととなった。


そんな混迷の中で一人、手ずから船団を率いる若き女海賊が交渉団の前に現れた。

彼女の名は「村上景(きょう)」――

村上武吉の娘であり、武吉の才の一切を受け継いだ近在一の“悍婦(かんぷ)”にして“醜女(しこめ)”であった。



登場人物

村上水軍

村上景

村上武吉の娘。当時20歳。

近在でも知られた悍婦で、目鼻立ちがはっきりとした彫の深い顔の(戦国時代の日本人の美的感覚における)醜女

その評に違わず、大変に気が強く乱暴で、手ずから船団を率いて海賊働きを楽しむじゃじゃ馬娘。

弟の景親を舎弟のように扱っている一方、口うるさい兄の元吉を苦手にしている。

戦い慣れしており、特に船上での立ち回りと太刀裁きは、並みの兵よりも抜きんでて達者。

しかも幼い頃に武吉から「合戦」の話を聞かされて以来、些か合戦に対して“憧れ”のようなものを抱いており、いつか本物の合戦に出陣したいと夢見ている。

この性格だが色恋には興味はある。しかし面食いで押しが強く、嫁ぐなら海賊の嫁がいいと言ってきかない。

鶴姫伝説』に心酔しており、いつか自分も彼女のように名を上げたいと考えていたが……


村上武吉

能島村上氏の当主であり、村上水軍の棟梁。

飄々とした食わせ者で、誰であろうと武吉の頭の中を正確に予測できる者はいないとまで言われる。

史実においても陶晴賢毛利元就大友宗麟を天秤に掛ける食わせ物ぶりを見せている。

卓越した水軍の指揮能力を持ち、さらに合戦の大局、ひいては敵将の考えまで掌のように読んでしまう、怪物じみた頭脳の持ち主。

しかし娘の景には大変に甘く、彼女の海賊働きも咎めず、目下の悩みは「娘の輿入れ先」を探すこと。


村上吉継

来島村上氏の重鎮。

毛むくじゃらと形容されるほど体毛が濃く厳つい風貌をしてる。

武吉の気まぐれに振り回されては、彼を叱責するのが役割であるが、当の武吉には「暖簾に腕押し」である。

ちなみに、当時の来島村上氏当主の来島通総や兄・得居通之は武吉と不仲だったとされる。


村上吉充

因島村上氏の当主。

物腰の柔らかい優男で、武吉に食ってかかる吉継を制止しつつ武吉の真意を探るのが主な役回り。

今回の武吉の突飛な考えの裏を考えながら、自家存続の道を模索している。


村上元吉

村上武吉の長男。

勤勉実直な性格で、景の目付役でもある。

村上水軍の兵法書を隅から隅まで頭に叩き込んでいるが、少々頭の固い硬骨漢。

気ままに歩き回る景に悩まされ強く出ることも多いものの、それも彼なりの妹への思いやりでもある。


村上景親

村上武吉の二男で、景の弟。

後の能島村上氏の当主

気弱で軟弱なため、兄妹内でも地位は底。特に景には舎弟同然の扱いを受けている。

兄以上に景に悩まされるものの、反面誰よりも姉のことを良く知っている。


毛利氏

小早川隆景

毛利元就の三男で、現当主・輝元の側近。

稀代の知将であり、父亡き後の不安定な毛利氏を支えるべく奮闘している。

武吉とは幼馴染であり、彼の性格や思考を誰よりも理解している。

本願寺からの兵糧の具申を快く思っておらず、上杉謙信の北伐が終了して加勢に来ること条件とすると言い訳し、出来る限り織田氏との衝突を避けようと苦心する。


乃美宗勝

隆景の重臣。

毛利軍警固衆(水軍)の古つわもので、かつては村上水軍とも矛を交えた実力者。

禿げ頭の飄々とした老兵で、呑気な言動で周囲を振り回し、主君の隆景すら食ってイラつかせてしまう。

しかし本性は“古豪”に相応しい武辺者であり、心の内で荒々しい合戦を渇望している。


児玉就英

毛利警固衆の長を任される若き武将。

色白の美丈夫で、生真面目で誠実な性分。

ただ気位が高く、海賊から武家へと成り上がったことからその気質に拍車がかかっている。

村上水軍との交渉で、突然景の婿に推挙されるという災難に見舞われてしまう。


織田軍

眞鍋七五三兵衛

景が大坂で出会った眞鍋海賊の党首を務める巨漢。

息子が一人いる。

ひょうきんな好漢であるが、一族をまとめる当主として現実的な視野を持ち合わせている。

作中でも“怪物”と形容されるほどの戦闘力を有し、特にの投擲は直撃すれば小隊程度は容易に吹き飛ばすほどの破壊力を有する。

景を別嬪と褒めて自陣で持て成し嫁に迎えようと企てるが、あることから景の本質を見抜いて彼女を追い出す。

だが景とはこののちも因縁を持ち、景にとって「最強の敵」としてたちはだかることになる。


眞鍋無道斎

七五三兵衛の父で、眞鍋海賊を躍進させた前当主。

人当たりの良い好々爺。

禿げ頭の巨漢で、宗勝同様にその歳で現役の兵と渡り歩く武辺者。

一族の決定を七五三兵衛に託しているが、やはり息子と孫にはまだ心配が多い。


沼間義清

泉州武士団を束ねる触頭(ふれがしら)で、沼間任世の息子。

父と共に眞鍋海賊の台頭に危機感を募らせ、眞鍋氏と水面下で対立している。

一方、触頭の重圧と織田軍と亘るための礼儀を叩き込んだ経緯から、カタブツの自分では触頭として泉州武士を統率できないのではという不安も隠している。

のちにこの不安は、かたちとなって的中してしまう。


松浦安太夫

寺田又右衛門

人呼んで「悪たれ兄弟」。

主家の鞍替えや戦場での遁走など、生き残るためならいかなる手段も辞さない。

泉州武士の中では油断ならない食わせ者として知られる一方、共に武辺には一家言を持つ隠れた実力者。


原田直政

本願寺攻めの総大将。


本願寺

顕如

当代の浄土真宗の門主。

織田信長とは長らく因縁の相手として戦ってきたが、いよいよ追い詰められてしまう。

紀州に一向宗の多い雑賀氏を頼り、孫市から村上水軍への助力を打診するよう進言される。


下間頼龍

顕如の側近を務める僧侶。

美声の持ち主である一方、大変に気位が高く、また小心者で門主の威光を盾にする高慢で器の小さい男。

自己中心的で独断行動が多く、門徒たちへの慈悲も薄いため、何かと孫市の頭を悩ませる。


雑賀孫市

紀州にその名ありと謳われた傭兵集団「雑賀衆」の頭目。

故郷に一向宗の門徒が多数いる縁から、本願寺側に加勢する。

頼龍の無茶に振り回されながらも、本願寺の善戦のために苦心する。


源爺

留吉

安芸国の百姓で、一向宗の門徒の穏やかな老人と、口達者で生意気なその孫。

本願寺に加勢すべくほかの門徒たちと目指す最中に海賊に襲われるも、そこを景の船団に発見されて救われる。

救われた恩返しに景を大坂へと案内して別れると、そのまま本願寺の籠城戦に参加した。

のちに彼らの存在が、景に大きな影響力を及ぼすことになる。




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村上武吉 村上水軍 海賊

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