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昏の皇子

くらのみこ

「昏の皇子」とは小説家サイト「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアップ+」「ハーメルン」等で連載中のオンライン小説。
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概要編集

カクヨム小説家になろうノベルアッププラスハーメルンにてweb連載しているファンタジー小説。

作者は水奈川葵氏。

各サイトによって更新日が異なり、最新話はカクヨムで先行で読める。


異世界騎士譚。

内容はシリアス、ダークファンタジーに分類している。執筆式は三人称。

貴族の内事情や世界観等、設定が丁寧に書かれているのが特徴。超常現象は含まれているが、剣と魔法のファンタジーではなく一部の人間が超人といった範囲内のもの。


ハーレムご都合展開は含まれていないので、硬派又は王道的なファンタジーを好む方にお勧めする作品。



以下、原作のネタバレを含みます








物語編集


『オヅマ』は死ぬ間際、自身に問いかけた。これしか道はなかったのかと……。



きっと助けるから

もう一度、会いましょう


―――――今度こそ、あなたを救う。必ず。



最後まで己の望みがわからぬまま死に…オヅマは目覚めた。

目の前には「夢」で死んだはずの最愛の母ミーナと妹マリー。そして、母に殺された憎き義父コスタスがいた。


十歳に還ったオヅマは「夢」で見た未来を変える為に、異なる道を選択する。

翌日、義父は事故死。残された親子三人は路頭に迷い、母は伝手を使い帝都に向かう事を提案する。

オヅマは強く拒否し、思考を巡らせるとある人物が思い浮かんだ。


レーゲンブルト領主ヴァルナル・クランツ男爵。

「夢」の彼は、公爵家嗣子を守り命を散らした清廉潔白な騎士であった。


オヅマは自らヴァルナルに交渉し、領主館で家族の職を得る事に成功する。

そしてヴァルナルはオヅマの才能を見込み、騎士として養育しようと決めた。


「夢」の選択はしない。オヅマの二周目の騎士道が始まる。


登場人物(ネタバレ注意)編集

主要人物編集

  • オヅマ

物語の主人公。

粗暴で働かない義父のせいで過酷な生活を送る少年。ある日、「夢(一周目)」を見て母と妹を守る為に最悪の未来を回避するべく行動する。

義父亡き後は黒角馬を対価にクランツ男爵家に住み込みで下男として働きながら、騎士を目指す。翌年、正体を隠した対番のアドリアンと友情を育む。彼の誘拐事件を切っ掛けに稀能『千の目・瞬の爪』を発現した事でグレヴィリウス公爵家に目をつけられ、母親とヴァルナルの再婚でクランツ男爵家の籍に入り「オヅマ・クランツ」となった。

12歳でアドリアンの近侍となり、公爵邸に移住。単身でルミア老師の元で修行し稀能『澄眼』を最短二ヶ月で取得した。アドリアン一行が戻るまでの間に度重なる騒動に巻き込まれ、公爵領でハヴェル一派の奉仕隊に裏工作を仕掛けた後、母親を失ったアドリアンの異母妹クリスティアを保護して独断で自領に預けた。

認知された彼女と共に公爵邸へ帰還し兄妹の仲立ちに協力。公爵邸の兄妹に対する変わらぬ理不尽な横暴に我慢の限界に達し、公爵や大人達に正論をぶつけ自ら謹慎する。

出自はランヴァルト大公の私生児。今代の神女姫エヴァサリアの孫。

稀能とは別に異母兄シモンよりも実父から才能や風格を濃く受け継いでおり、勉学でも数学に強い関心を持つ。

「夢(一周目)」では母親の死後、妹と共に帝都へ渡りモンテルソン大公家に引き取られ、妹と共にアンブロシュ家の養子に入る。そして稀能『千の目・瞬の爪』取得させる為の過酷極まる修練を強制され、ついに妹まで犠牲となる。

玉座に就いたランヴァルトに黒杖を賜り『昏の皇子』と呼ばれる騎士となるが、最後はこれまでの選択を悔いながら死去した。

性格は明るく態度は尊大。警戒心が強く喧嘩っ早い。家族を大事に想っており、特に妹のマリーには甘い。肩には幼少期にマリーを庇った火傷跡がある。

「夢」の影響を受けており、作者によると相手の懐に入っていくのには躊躇はないが、信頼するのはまた別になっているとの事。同性と寝台を共にする事を嫌っている。また義父と「夢」の実父の仕打ちによって父親不信で、ヴァルナルとは複雑ながら騎士として敬愛し、少しずつ距離を縮めていく。対策で清毒を飲み、生殖能力を捨てる代わりに無毒化の肉体を得る。中和のときは黒髪に染まる。

アドリアンとは主従関係であるが忠誠心は皆無で、友人として支えている。敵意には敏感な一方で母親と同じく恋愛には鈍感。

亜麻色の髪に薄紫色の瞳を持つ。肌は薄い褐色。母親似の艶のある美男子。皇家でも一部しか発眼しない『金龍眼』の持ち主。


  • アドリアン・オルヴォ・エンデン・グレヴィリウス

グレヴィリウス公爵家嗣子。オヅマの一つ下。

母親の命と引き換えに誕生した事で父親から恨まれ、ハヴェルを擁護する使用人や一部の騎士から冷遇される日々を送っている。

園遊会でモンテルソン大公家と諍いを起こしてしまい、自ら責任を被る事で被害を抑えた。罰を下されるもヴァルナルの計らいで身分を隠し見習い騎士としてクランツ男爵領に送られた。

対番となったオヅマとは紆余曲折あったが盟誓を刻む程信頼を向けるようになり、オリヴェルやマリーとも友情を築き上げる。

ハヴェル一派の暗躍で命を狙われるがオヅマの活躍で難を逃れ、結果的に精神的な成長を遂げる。一年後はオヅマを含む五人を近侍に迎えて半大人の仲間入りを果たす。

同年オヅマ不在時に度重なる騒動で精神が疲弊し、その上でオルグレン男爵家の陰謀に巻き込まれ近侍キャレを糾弾した。オヅマの帰還と共に認知された異母妹クリスティアとの対面を切っ掛けに、公爵邸で自分達兄妹への横暴を許す父親を見限り、決別した。

オヅマの「夢(一周目)」では刺客からヴァルナルに庇われた後、彼の命と引き換えるように公爵家を継いでいる。

一族の教育で年不相応に老成し、冷静沈着で思慮深い性格。気性は素直だが卑屈気味。

父親の命で母親の情報や一部の関係者と隔絶されるという異質な環境に置かれている。故に心許せる人間の中でオヅマに強く執心し、大公との親子関係に気付くと歪んだ独占欲を抱くようになる。

密かに皇女イェドチェリカに憧れている。

父親達が大公家との戦略を巡らせる中で計らずもランヴァルト大公と密かに交流を持つようになり、巧みな甘言に惑わされ傾倒していく。

貴族では珍しい黒檀色の髪と鳶色の瞳を持つ。父親と瓜二つの美男子。


クランツ男爵家編集

  • ヴァルナル・クランツ

グレヴィリウス公爵家傘下男爵家当主。レーゲンブルト騎士団の団長。

稀能『澄眼』を持つ黒杖を賜った騎士。南部の部族戦争で戦功をあげた英雄。

商家出身の元平民で、私腹を肥やさず作物改良等の農業政策を指導し、領民達の人望は厚い。

黒角馬を対価にオヅマの願いを聞き入れ、親子を下働きとして邸に引き取った。

政略結婚で長男オリヴェルを儲けるが妻エディトとは不仲で一方的な離婚を経験している。優しいミーナに心惹かれ、彼女の秘密に気づきつつも不器用ながら求愛を繰り返す。オヅマを手に入れたい公爵家と周囲の後押しもあり、再婚した。

公爵親子の忠臣であり、大公家と諍いが起きたときは孤独なアドリアンの為に身柄を自領で引き受け、オヅマ達と引き会わせ友情を育ませた。オルグレン家の陰謀ではカーリンの身柄を預かり、ミーナに託した。

皇帝が直属配下に欲した程の実力者で、アドリアンの後ろ盾でもある。その為、ハヴェル一派や選民思想の強い貴族に疎まれている。戦場での通り名は悪鬼

父親に不信感を持つオヅマとの距離感に悩んでいるが、騎士として敬愛されている。

亡きギリヤ王国民の子孫が多く住む土地で育ったため、同郷の人と話すと方言が出る。真面目で武骨な性格。鈍感。再婚後は愛妻家となる。

オヅマの「夢(一周目)」ではアドリアンを庇って毒を食らい、死亡した。

赤銅色の髪に髭を持つ。瞳の色はグレー。外見は武骨で凡庸。


  • ミーナ

オヅマとマリーの母親。『嘘なき民』の末裔。

飲んだくれの暴力亭主に仕える薄幸な女性。小作人の妻でありながら気品と貴族以上の教養がある。

夫の死後、伝手に縋り帝都に向かおうとしたがオヅマの機転でクランツ男爵家の下女となる。一部の女中達から嫌がらせを受けるも、献身さと有能さを評価されてオリヴェルの侍女となり、ついにヴァルナルから求愛を受ける。惹かれ合いながらも身分違いで断っていたが、子供達の後押しもあって求婚を承諾。ニクラ家の養女になった後、「ミーナ・クランツ」となった。その後は賢夫人として男爵家を支え、公女クリスティアの教育を任された。

実はグレヴィリウス公爵家とモンテルソン大公家との因縁の起因となった人物。

少女期にランヴァルト大公の元で皇宮女官にさせる為の教養を受けていた。やがて身籠ると正妻の追放を受け、大公の為に自ら出奔する。従僕の助けで商家に身を寄せて出産するも、その後は相次ぐ不幸で親子共々奴隷に身を堕とし、コスタスの脅迫を受けて結婚という経緯があった。ランヴァルトから贈られた笛を大事にしていたが、再婚後はオヅマに譲った。

オヅマの「夢(一周目)」では子供を守る為に夫を撲殺し、絞首刑に処されてしまった。子供達にガルデンティアの邸へ向かうよう遺言を残す。笛は遺品としてオヅマが持った。

子供想いで優しく、お淑やかな性格。しかもオヅマが案じる程お人好しであり、他者からの悪意に鈍い傾向にある。ただし教育の面では厳格。

余談であるが作中1のモテ女。大公やヴァルナル、コスタスの他に村人達や黒角馬の研究班等、惹かれる男達は多い。

淡い金髪に薄紫色の瞳持つ美女。西方の民の血を引き、肌色は薄い褐色。


  • マリー

オヅマの異父妹。コスタスとミーナとの間に産まれた娘。

粗暴な父親のトラウマで大人の男性が苦手。兄の機転で父亡き後はクランツ家で働き、孤独であったオリヴェルと友人になる。

後に母親の再婚で男爵家に入り、「マリー・クランツ」となった。

母親と同じくトラブルに巻き込まれる事が多く、誘拐と人の死に直面して一時期ショックで声が出なくなってしまった事も。

明朗快活な性格の持ち主。良くも悪くも善人であり、他者に寄り添う慈愛の心を持つ反面、感情移入してしまう。「夢」の影響でオヅマから特に大事に想われている。

オヅマの「夢(一周目)」では兄と共にアンブロシュ家の養子に入り、イェドヴェリシア公女の侍女となる。しかし兄に起因すると考えられることで、若くして死去した。ハルカとも仲が良かった。

栗色の髪に緑色の瞳を持つ。雀斑がある。


  • オリヴェル・クランツ

男爵家嗣子。ヴァルナルの一人息子。愛称はオリー。

産まれながら病弱で母親やその侍女にも捨てられ、父親からは多忙を理由に放任されている。邸内で腫物扱いされており、孤独な日々に蝕まれ癇癪を起こしていた。

マリーとオヅマとの出会いで友達となり、ミーナが世話係を担ってからは精神的な安定を得る。父親との仲も改善していき、再婚も後押しし晴れてオヅマ達と義兄弟となった。己の体質故にオヅマに爵位継承も譲る気でいる。

芸術の才に恵まれており、趣味で絵を描いている。同じ芸術家気質のチャリステリオと交流を深め、水彩画を勧められた。体力の問題はあるものの感性が鋭く聡明な人物。交流範囲の狭さから一時期、アドリアンに嫉妬心を向けた事も。マリーに淡い恋心を寄せる。

赤銅色の髪に青みがかったグレーの瞳を持つ。


  • ネストリ

執事。

ヴァルナルの叙爵により公爵家から送られた(左遷)。

公爵家に勤めていた矜持からヴァルナル以外の同僚には見下した態度をとっている。

邸内管理に優秀な能力を有するものの、主に無断で規則を増やし、発覚するまで使用人達の行動を制限していた。

執事となる前はハヴェルの従僕を勤めており、アドリアンへの心証は悪くレーゲンブルトに来たときは冷遇した。しかし誘拐事件で信頼していたアルビンに利用された挙句脅迫され、不本意ながら加担。もみ合いの事故で死なせてしまったオッケに罪を押し付ける事に成功して難を逃れた。その後はケレナと惹かれ合い、一度はプロポーズしたが内縁関係に落ち着いた。しかしモンテルソン大公家の手先により過去の罪を掘り起こされ、保身で駒となる。

根が小心者で大それた野心は持たないが利己主義者で嫌味な性格の持ち主。


  • パシリコ・ライル

レーゲンブルト騎士団の副団長。ヴァルナルの副官。

歴戦の勇士であり、外見も含め生粋の武人。

恋愛事に疎いが、帝都には家族がいる。謹厳実直な性格で頭が固い。


  • カール・ベントソン

レーゲンブルト騎士団の主騎。ベントソン九人兄弟の次男。

ヴァルナルに次ぐ実力者で、柔軟な思考で彼の意をくんで行動する。色々と苦労が多く、弟の結婚で男兄弟唯一の未婚となり一時は不貞腐れていた。しかし主君の再婚が縁で出会ったヤーデ令嬢と懇意になり、ニクラ準男爵家に婿入りした。皮肉屋で真面目な性格の持ち主。

金髪碧眼の青年。


  • アルベルト・ベントソン

ベントソン九人兄弟の三男。

レーゲンブルト騎士団の騎士。武術競技大会で最優秀者として表彰された程の弓の名手。

無口無表情な性格だが、話始めると意外と喋る。騎士団の中で特にマリーに甘い。カールより一足先に結婚した。

茶髪碧眼の青年。


  • リュリュ・マッケネン

レーゲンブルト騎士団の騎士。

アカデミーを受験して失敗し、騎士になった経歴を持つ。故郷にオヅマと同年代の弟がいる為に率先して世話を焼き、勉強も教えている。

ヴァルナルに次いでルミア老師の教えを受けた騎士の一人で、優れた資質は持ち合わせていたが頭が良すぎた為に師の相性の悪さで稀能を取得できなかった。

トーマスに一方的に好かれており、本人は嫌っている。

赤ん坊ような名前なので隠しており、同僚達は「マッケネン」が名前だと思い込んでいる。

穏やかで篤実な性格。顔に傷がある。


  • ゴアン

レーゲンブルト騎士団の騎士。元傭兵出身。

騎士団一の大男。豪放磊落な性格ながら剣舞が得意。

戦争時代、略奪に加担し自ら出頭した為、処刑を免れた過去がある。

ヴァルナルの温情と苛烈さを知る人物。ソニヤに惚れこんでいる。


  • ヘルカ

厨房下女。ソニヤの母。

作中では腰を悪くしてしまい、ミーナが助っ人に入った。その後は入れ替わりに娘達に厨房を任せ、引退後は様々な仕事を手伝っている。

信心深く、小さな祠を管理している。夫とは職場結婚。


  • パウル

庭師。ソニヤの父。

オリヴェルを案じ、オヅマ兄妹との逢瀬を黙っていた。

オッケの育て親で、彼の死には特に悲しんだ。娘達の帰省後は孫のイーヴァリに技術を教えている。

ヴァルナルの結婚式では式事の上で欠かせない答申者の大役を担った。妻とは職場結婚。


  • ソニヤ

料理人。パウルとヘルカの娘。

帝都で転々と働いていたが、夫の死後に母親の引退と入れ替わりに家族と共に帰省し娘タイミと厨房で働く。直感が優れているのかミーナが男爵夫人になると確信していた。

世話焼きな性格。


  • オッケ

下男の一人。知能が低い事と当時の凶作が原因で、七歳(推定)で山に捨てられて孤児となった。

若き頃のパウルに引き取られ、そのままレーゲンブルト領主館の下男となった過去を持つ。

放火現場から逃亡したネストリの姿を偶然目撃し、そのことを本人に言ったために、最終的にネストリによって婉曲な形で死亡した。

良くも悪くも素直な性格であった為、その特性をネストリに利用され、誘拐事件の犯人の一味にされてしまった。

酒が好きで、酔うと暴力的になる上に貯蔵庫から酒を盗む悪癖がある。


  • アントンソン夫人

女中頭。オリヴェルの侍女も務めていたが、癇癪持ちの彼を嫌っていた。

ミーナを快く思わず、彼女が侍女になると部下達と共に仕事を押し付けて、彼女が倒れるまで嫌がらせを行っていた。それを知ったヴァルナルから強い叱責を受けた。

後にミーナが女主人となった事で立場が逆転する事となる。


  • エッラ

女中の一人。地元ではそれなりの商家出身。

ミーナを何かと敵視し、一部の女中達と嫌がらせをしていた。ヴァルナルを意識して玉の輿を狙っていたが彼の訛りを聞いて幻滅した。後にミーナの結婚に触発され、寿退職した。

性格が悪い上に捻くれた根性の持ち主で、騎士達や同僚からも嫌われている。


  • ティボ

新人下男。オヅマと同じラディケ村出身。

粉屋の三男坊。オヅマを「親分」と呼び慕っている。取り入る事が得意でネストリに気に入られている。後に騎士団の厩番も兼任する。兄弟が多い。

雀斑にしし鼻が特徴の少年。


  • エディト・クランツ

ヴァルナルの最初の妻。オリヴェルの生母。伯爵家出身。

グレヴィリウス公爵家の命を受けて政略結婚した。しかし翌年、男を作った挙句子供を捨てて駆け落ちした。離婚の際、訴訟代理人に頼み希望通りの慰謝料を得た。

ヴァルナルとは不仲で、遠征により多忙であったので分かり合えないまま別れたらしい。

夫人時代は平民に嫁いだ自分を憐れみ、レーゲンブルト領を田舎と貶していたので騎士達から不評であった。


  • メリナ・バルトン

エディトの侍女。ケレナの姉。

平民出身ながら器量の良さで伯爵家の女中から男爵家の侍女に抜擢された。

エディトの離婚後は後釜狙いでオリヴェルの世話係として残った。親子への純粋な好意もあったが、儘ならない現実に心が病んでいきヴァルナルの寝室に侵入して拒まれた末に出奔。邸を出るとき、オリヴェルに酷い言葉を浴びせて彼の心に深い傷を残す。現在は療養生活を送り、妹の仕送りを頼りに伯母夫婦の厄介になってる。

育児に悪影響を及ぼす程、感情起伏の激しい性格。その上、常日頃から傲慢に振舞ってい為に使用人達から嫌われていた。寝室での事件は今でも笑いの種となっている。

妹とは似ていない美女であったが、今は心労で老婆のようになっている。



グレヴィリウス公爵家及び傘下編集

  • エリアス・クレメント・エンデン・グレヴィリウス

公爵家当主。騎士団団長。

先代当主と正妻の妹との間に誕生した。母の死後は正妻や一族から疎まれ、孤独で虚無的な人生を送っていたが、花嫁修業中だったリーディエと恋に落ちる。

彼女を守る為に後継者争いに参戦し、許嫁を切り捨て恋愛結婚を成就させた。しかしアドリアンの誕生と引き換えに最愛の妻を失ってしまい、恨みで実子から距離を置き妻の情報や関係者と隔絶。その態度とハヴェル擁護派により屋敷全体が冷遇し、知った上で放置している。

妻亡き後、面影のある遠縁の令嬢ペトラを側室に娶り娘クリスティアを儲けたが認知せず追放した。

大公家との諍いを起こした息子の罰としてクランツ男爵家へ送り見習い騎士の生活を送らせる。そこでオヅマの稀能『千の目・瞬の爪』発現の報告を受け、息子の近侍に置くべくヴァルナルにミーナとの再婚を命じた。オヅマを一目見てランヴァルトの実子と見抜き、公爵の矜持から近い未来に起こる大公家との対立に備える。

同年、ペトラの死後に認知したクリスティアを引き取るも、変わらぬ子供達への理不尽な仕打ちに激怒したオヅマに正論をぶつけられ、ついにアドリアンに父親として見限られた。臣下達に支えられ、リーディエの死を静かに受け入れるようになる。

一族の教育で態度は抑制されているが性根は繊細な上に、リーディエへの盲目的な愛故に未熟な人間性を持つ。妻の遺言で部下達を大事にしているものの、過去にアドリアンの態度に物申したブラジェナには罰を下していた事も。

息子に向ける親心を認めようとせず、家族が関わると狂気じみた苛立ちを見せる。

作者曰く「ヤンデレ」であり、息子や娘への所業を悪びれてはいないので反省しない人間は成長しないとの事。

黒檀色の髪と鳶色の瞳の色を持つ男性。若き頃は大公と並ぶ美男と持て囃され、今でも令嬢や貴婦人から人気がある。


  • リーディエ・グレヴィリウス

今は亡きエリアスの妻。ノシュテット子爵家出身。エリアスの二つ年上。

花嫁修業の為に公爵家の侍女として働いていたとき、冷遇されていたエリアスを献身的に支えた。やがて後継者争いに巻き込まれるが、勝利した彼と恋愛結婚する。

第一子を疲労で流産後、親族の勧めでハヴェルを養子に迎え我が子同然に慈しみ育てた。ところが再び身籠った為、ハヴェルを侯爵家に戻すが邸を自由に出入りする権限を与えた。

待望の嫡子アドリアンを産んだ後、この世を去った。

父親が皇費を横領した罪で斬首されており、冤罪の可能性が浮上した今でもアドリアンに誹謗が向けられている。

慈愛深く才気煥発な人物で慈善活動を積極的に行い医療奉仕団『祈りの手』設立の他、当時平民であったヴァルナルに騎士の才能を見出した。傘下貴族や皇妃、平民には彼女を慕う者が多くいた反面、強すぎた存在故に亡き後でも関係者達の呪縛となっている。

生前は義妹ヨセフィーナから執拗な嫌がらせを受け、ハヴィル一派により過去の善行を悪事に利用されている。

鴇色の髪に青い瞳を持つ。


  • ルーカス・ベントソン

護衛騎士の一人で公爵家直属騎士団の団長代理(実質的な団長)。

ヴァルナルの騎士時代からの友人。ベントソン九人兄妹の長男。

エリアスの懐刀的な存在であり、親子共に信頼されている忠臣。公爵家の真の策士で皇族からも一目置かれている。ハヴェル一派と敵対し、アドリアンの為に基盤を整えようと奮闘する。オルグレン家の陰謀が判明するとヴァルナルと協力し、監査官横領事件を利用して嫌がらせを実行。エリアスに私生児のクリスティアを正式に認知するよう働きかけ、近侍キャレことカーリンを侍女に置くように手配した。

天性の色男でバツ3。最初の妻との間に息子のサビエルを儲けている。

公爵家ではフォローに回る事が多く一時はヴァルナルの恋愛相談を受けていた事も。身内の前でも本心は見せないので、妹と元妻達から「油断ならない金髪キザ野郎」と言わしめる人物。

金髪碧眼の男性。


  • サラ=クリスティア・アベニウス

エリアスとペトラとの間に産まれた娘。アドリアンの異母妹。

産まれる前に母親の所業で認知されないまま本邸を追放された。領内の寂れた邸で酒乱の母親と二人で暮らしており、監視役サルシムによる着服と親の散財で困窮した生活を送っている。公爵の娘であるのにもかかわらず昼は針子のエッダの元で「ティア」と名乗り、見習いとして働いていた。

ジェイの伝手で客として訪れたオヅマと出会った後、母親が死亡。オヅマの助力で埋葬を見届け、公爵家から指示がくるまでジェイを護衛に待機していたがハヴェル一派に利用される事を危惧したオヅマの独断でレーゲンブルトに身柄を預けられた。滞在中に父親から正式に認知され、「サラ=クリスティア・エンデン・グレヴィリウス」の名を与えられた。

教育係を任されたミーナと共に再びレーゲンブルトに滞在する。

日常的に母親から虐待を受けていた影響で人に頼る術を持たず、諦観癖がついている。オヅマ曰く「アドリアンと似ている」。

鴇色の髪に鳶色の瞳を持つ美少女で、顔立ちはリーディエに瓜二つ。


  • ヨアキム・ルンビック

老家令。子爵。

冷遇されるアドリアンの現状を不憫に思い、不甲斐なさを自覚している。

礼法教師をぶちのめしたオヅマの礼儀作法の教師を勤めるようになり、彼の傲慢な気質に危惧を抱きつつも個人的に気に入っている。元皇宮一級女官の姉がいる。

余談だが作者のお気に入りのイケジジ。息子を先の戦争で失くしており、オヅマを孫のように見ているらしい。


  • ヤミ・トゥリトゥデス

公爵家直属騎士団の弓部隊隊員。弓騎士。

弓部隊の中での実力者。ルーカスがアドリアンの基盤に必要な人材と見込んだ一人。

存在感が薄い上に謎が多く、キャレの性別を見抜いて警告した事も。

公爵家諜報組織『鹿の影』の一員でもあり、エリアスの命で大公家を調査する。

正体は皇太子アレクサンテリが公爵家に送った諜報員で、その前は皇女イェドチェリカに仕えていた。

普段は無表情で感情を崩さないが、本性は加虐趣味の性格異常者であり、拷問を最も好んでいる。ジェイとはある任務で出会ってから一方的に執着し「フィリー」と呼んでいる。

銀の短髪に蒼氷色の瞳を持つ端麗な美青年。


  • マウヌ・ヘンスラー

公爵家直属騎士団の弓部隊隊長。弓騎士。

ハヴェル一派。アドリアンと近侍の稽古で侮蔑した対応をした為、オヅマから弓試合を仕掛けられた。弱点を突かれ敗北するがハヴィルの援護によって恥を晒さずに済んだ。以降は彼に一層、傾倒していく。

子供相手でも稚い態度をとる割にはプレッシャーに弱い。

弓の技術に矜持を持ち、武術競技大会でアルベルトに敗北してから根に持っている。技量と人格が欠けているので、隊を掌握していない。

牧羊民の血を引いており、体型は小柄。茶褐色の瞳で長い柿色の髪を一括りにしている。


  • ハヴェル・グルンデン

グルンデン侯爵家次男。エリアスの甥。アドリアンの九つ年上。

子宝に恵まれない公爵家の養子と入ったが、アドリアンが産まれた為に縁組は解除され実家に戻された。

義母リーディエの願いで、今でも自由に邸に出会いりができる。それを知る使用人達が同情し、屋敷全体がアドリアンを冷遇するようになった。エリアスと対等に話せる数少ない存在。

親切で優しい物腰の紳士であるが油断ならない人物。故に幼い婚約者ルイースから警戒されている。

亡き義母を今でも慕い続け、その子であるアドリアンには狡猾な悪意を向けている。実母とは不仲。

樺茶色の長髪にアンバーの瞳を持つ。子供時代は金髪。知的な容姿で眼鏡をかけている。


  • ヨセフィーナ・オーサ・エンデン・グルンデン

グルンデン侯爵家婦人。エリアスの異母妹。ハヴェルの母親。

かつては後継者争いで同腹の弟を失っている。嫁ぐ前はルーカスに好意を抱いて付きまとい、彼の当時の彼女に嫌がらせをしていた。義姉リーディエも執拗に苛め抜き、亡き後でも子供のアドリアンに陰湿な嫌がらせを行っている。

アドリアンを暗殺すべく虎視眈々と機会をうかがっており、ペトラやダニエルを利用した。

見た目は上品な貴婦人として振舞っているが自尊心は皇后並とされ、選民思想から平民出身の貴族を認めていない。本性を知る者からは「サコロッシュの女狐」と呼ばれ忌み嫌われている。

厚化粧で若作りをしている。

くすんだ金髪と赤茶色の瞳を持つ。体型はふくよか。


  • マティアス・ブルッキネン

伯爵家嗣子。アドリアンの近侍の一人。

近侍の中でも率先して行動しており、忠義心に厚い人物。自称「近侍筆頭」。

性質が異なるオヅマと口喧嘩が多く、「起こりん坊マティ」と呼ばれている。

オルグレン男爵家の陰謀の発覚後は本物のキャレを仕込もうと意気込んでいたが失踪してしまい、主犯のセオドア公子を非難した。

規律に厳しく口やかましいが、言動の起因は母親のお節介によるもの。素は真面目で慎重な性格。純情。

金髪にターコイズブルーの瞳を持つ。


  • エーリク・イェガ

男爵家三男。アドリアンの近侍の一人。

近侍の中では存在感はあるが地味で寡黙を貫いている。

家族内では妹のルーイスの我儘を危惧し、両親達に散々注意したが聞き入れては貰えず、夜会ではアドリアンの顔に泥を塗ってしまった。

夜会での醜態の一件と実家に冷遇されるキャレを案じ続け、彼の正体が双子の姉カーリンと判明すると無自覚な好意を抱くようになる。

無口で強情な性格。馬に関すると饒舌になる。オヅマが平民出身でも公爵家に意向に従っており、見下す素振りはない。少しずつアドリアンへの忠誠心を持つようになる。

アドリアンがランヴァルト大公と街で出会ったとき、居合わせていた為に近侍の中で唯一秘密の交流を知っている。

胡桃色の髪と瞳を持つ大柄な少年。実年齢より十歳上に見られる程、老け顔。


  • チャリステリオ・テルン

子爵家嗣子。アドリアンの近侍の一人。

近侍の中では芸術家気質で、ピアノが得意。絵を描く事を好むが戦争で父を亡くしてから母親と祖父に強制的に辞めさせられた。

母親がグルンデン夫人に傾倒している事と本人の性格の問題でオルグレン家の陰謀やランヴァルト大公との茶寮も秘匿されている。

性格は甘ったれなお調子者。食欲旺盛。一言余計な上に泣き虫なので「泣き虫テリィ」と渾名をつけられる。思考は典型的な貴族で、平民出身のオヅマや家庭教師のケレナを見下している節がある。

優れた鑑賞眼を持ち、レーゲンブルトに滞在したときはオリヴェルと意気投合する。

柑子色の髪に草色の瞳を持つ。体型は大柄でふくよか。


  • キャレ・オルグレン

男爵家三男。五兄妹の末子。アドリアンの近侍の一人。

近侍の中ではアドリアンと唯一の同年代で、彼から弟のように思われている。また、対立しがちなオヅマとマティの緩衝材的な役割を果たす。

夜会ではルイース令嬢の大暴走で激突し、アドリアンの顔に泥を塗ってしまう。後に体調不良に悩まされながら随行した園遊会で、偶然ヴィオラ公女をシモン公子の魔の手から救い、逆恨みした彼の命で近侍達から暴行を受けた。

正体はカーリン。酔った父親がメイドに手を出して産まれた双子の姉。先代執事の引退後、親子共に冷遇され使用人同然の生活を送っていた。また、病で変貌した弟と弟しか愛さない母親からも粗野に扱われていた。

異母兄セオドアの命で弟キャレがアドリアンの近侍に選ばれるが母と本人の拒否により保身から自ら赴いた。園遊会後に初潮が始まった事で正体が気づかれ、関係者達の追及でセオドアの陰謀が発覚。アドリアンに拒絶されても引き続き近侍を希望したがヴァルナルの提案でレーゲンブルトに身柄を預けられた。滞在中はマリーとクリスティアと交流し、クリスティアが認知された事で彼女の侍女となる。

主体性のない卑屈な性格で出自と経緯から警戒心が強く、人一倍観察力が高い。

己の現状に強い劣等感を抱いており、同情される事を嫌う。優しいアドリアンに好意を抱いていたが異母兄の陰謀と性別を偽った裏切りにより悲恋となる。

一族特有のルビーレッド色の髪を持ち親兄弟が嫉妬心を向ける程、際立っている。


  • サビエル・ラルドン

アドリアンの侍従。ルーカスの最初の妻が産んだ私生児。

強力なコネを持ちながら父親に内密に地道な努力で現在の職に就いた。近侍達を弟のように思っており、オヅマの行動には陰で頭を抱えている。

キャレの異変に女児だと気づき、家令と団長に報告した。アドリアンがランヴァルト大公と交流を持つようになると、主人の境遇を案じ父親に内密にする。

母親譲りの潔癖な性格。礼儀正しい好青年。叔母ハンネと同年代。母親が作家で多彩な文章の表現力を受け継いでいる。

淡墨色の髪に、父親譲りの一族特有の青い瞳を持つ。


  • ロビン・ビョルネ

公爵家に仕える若き医師。

クランツ男爵家に派遣され、オルヴェルの主治医となった。

神事や祭事に関心を持つ。学校を卒業して間もないので、最新の医療知識を持っている。

賢者の塔に入った双子の兄トーマスに強い嫉妬心を抱いており、彼の前だと感情が昂りやすい。

明るい性格の持ち主。物腰丁寧。トーマスとは双子で眉毛の黒子の位置が逆。


  • アハト・タルモ・ブルッキネン

伯爵家当主。マティアスの父。

学問に夢中で、当主の仕事は妻に任せている。温和な人柄で飄々とした性格。

癖のある乳白色の髪と息子と同じターコイズブルーの瞳を持つ。


  • ブラジェナ・ブルッキネン

伯爵夫人。マティアスの母。

夫の代わりに一族を取り仕切っている女傑。リーディエの元侍女で彼女に盲目的な忠誠心と思慕を抱いている。

過去、エリアスのアドリアンへの対応に異議を申し立てた為に罰を受けている。

黒角馬窃盗未遂事件ではラッセの捏造報告を真に受けてしまい、後にオヅマに謝罪した。

ヨセフィーナやアルビンを強く敵視しているが、ハヴェルを善人と疑わないのでオヅマからは複雑な人物と見なされている。

マティアスと容姿も性格もよく似た真面目な性格の持ち主。

金髪に薄茶色の瞳を持つ。眼鏡が特徴。


  • ラッセ・オードソン

ブルッキネン家に仕える騎士。シュテルムドルソン騎士団団長。

公爵家麾下の騎士団ではなく、あくまで伯爵家の私兵に過ぎず騎士としての能力は低い。

黒角馬窃盗未遂事件が起きたとき、オヅマの態度に腹をたててブラジェナに捏造報告をした。


  • セバスティアン・オルグレン

男爵家当主。キャレとセオドアの父。

体裁を気にする割に仕事を息子に放任し、手柄を奪う愚者。平民出身のヴァルナルを敵視し、会えば嫌味をぶつけるが特徴的な髪故に滑稽な対象として影で笑われている。

酔った勢いでメイドに手を付けて産まれた双子を認知せず、庇っていた先代執事が引退すると擁護する使用人達を次々に排除し孤立無援の状態に追いやった。その後、セオドアの一存でキャレを庶子と認める代わりに公爵家の近侍に向かわせたがセオドアの陰謀で入れ替わった事を知らずにいた。

ルーカスの策略で監査官横領事件の濡れ衣を着せられ、双子親子失踪の不祥事をもみ消す代わりにカーリンをクリスティアの侍女に差し出した。

自分の髪に強い拘りを持ち、息子と揃って双子の髪に嫉妬心を向けている。

一族特有のルビーレッドの髪色で大きな巻髪を意図的に作っている。鷲鼻。


  • カーリン

キャレ・オルグレンの双子の姉。

正体は弟のキャレ。親子共に冷遇され、使用人同然の生活を送っていたが異母兄セオドアに公爵家の近侍になるように命じられた。

アドリアンの捏造された悪評を鵜呑みにして母親と共に拒否し、保身を選んだ姉が身代わりとなった。後に正体がバレて陰謀を防ぐ為にルーカス達の命令で入れ替わるべく姉が帰省して説得を受けたが再び拒絶。後日、保身から姉の金を盗んで母親と一緒に逃亡した。

病に掛かるまでは利発で気配りができる人物であったが、回復後は暴力的で幼稚な性格に変貌。ただし悪知恵は健在。成り上がりを夢見る母親から病的なまでに溺愛されている。

一族特有のルビーレッド色の髪を持ち親兄弟が嫉妬心を向ける程、際立っている。カーリンのフリをしているので髪の毛を伸ばしている。


  • セオドア・オルグレン

男爵家嗣子。キャレの異母兄。五人兄弟の長子。

父親に代わり、若くして当主代理を務めている。苦労人の側面もあるが、庶子でありながら誰よりも目立つ赤髪を持って生まれた双子を躾と称した虐待を行っていた。ただし父親と違い、双子の見分けはできる。

ハヴェル派で亡き母がヨセフィーナの取り巻きの一人。アドリアンが誕生するまでハヴェルの近侍候補だった。その為、己の立場を弁えずアドリアンを見下している。

無能な父親の排除とアドリアンに醜聞を作るべく策を実行し、カーリンにわざと選択肢を与えて近侍に向かわせた。発覚後はルーカスの策略で監査官横領事件の濡れ衣を着せられ、相応の報復を受けた。

一族特有のルビーレッドの髪を持つ。


  • グレーゲル・アートス・テルン

子爵家当主。チャリステリオの祖父。

先代公爵の代から公爵家領内で主に土木・営繕などを管轄する工部の担当していた。

亡き公妃リーディエを尊敬しており、アドリアンを冷遇する貴族達の中では例外で気さくに接している。孫のテリィを凡愚と見做している。

白と柑子色の髪に草色の瞳を持つ。体格は大柄。


  • ブルーノ・イェガ

男爵家当主。三男一女の父親。騎士。

レーゲンブルト騎士団に次ぐ有力な騎士団を有している。

エーリクをアドリアンの近侍に送った事が原因でハヴェル一派によりルイースの婚約を強制されてしまう。結果的に跡目争いでは中立的な立場をとっている。

俗的な考えは持ち合わせてはおらず、公爵家傘下の貴族の中では常識的な人物。しかし待ち望んだ末娘を溺愛するあまりに我儘放題に育てた末に夜会で醜態を晒してしまう。後に邸にも非難の手紙が続き、社交界で爪弾きとなった妻は精神を病んでしまった。


  • ルイース・イェガ

男爵家令嬢。四兄妹の末子で、エーリクの妹。

エーリク以外の家族に溺愛される世間知らずの我儘娘。ハヴェルと強制的に婚約が結ばれてしまい、不信感から婚約破棄すべく考えている。

夜会で出会ったアドリアンに一目惚れして暴走し、キャレと対立し公衆の場で醜態を晒す。その後はエリアスの命令で養生という名の「更生生活」を送る事となる。その後は母親が病んでも反省せず、変わらずアドリアンへの想いを募らせている。

年齢以上に弁がたち、色々な意味で強い。


  • アルビン・シャノル

ハヴェルの乳母兄弟で彼の執事兼補佐役。准男爵。

腹黒い野心家で、幼少からハヴェルを次期公爵とするべく暗躍している。

アドリアンの誘拐事件の一旦を担っており、かつての同僚であるネストリを利用して強制的に共犯にした。並行してリーディエが行った慈善活動を利用し、奉仕隊でアドリアンの情報を歪めている。届け出もせず家門紋章を既に作って身に着けており、一部の貴族から苦々しく思われている。

マシュマロのような顔の男。ルーカス団長代理からは影で「女狐の使い」と蔑称を込めて「貂」と呼ばれている。


  • フーゴ

従僕。ハヴェル一派。

公爵家の使用人でありながら裏で奉仕隊として活動し、アドリアンの捏造した悪評を振りまいている。立場を弁えずオヅマに二度も無礼な行為を働いた為に一度は灸を据えられたが、逆恨み、邸内で湾曲した噂を流し悪質な嫌がらせを実行した。

ずんぐりむっくりな体型の男。


  • ヤーデ・ニクラ

准男爵令嬢。

病弱な親の代わりに家をまとめており、しっかりしている人物。

書面上、ミーナと養子縁組した。クランツ男爵家の結婚式では立会人として参席し、ミーナの花嫁姿をうっとりと眺めていた。ケレナとは水と油のような関係。

ミーナの結婚を切っ掛けにカールと縁ができ、その後結婚した。

鼈甲眼鏡が特徴で、化粧っけがない女性。


  • ハンネ・ベントソン

ベントンソン九人兄妹の末子。

母親が浮気して駆け落ち後、兄妹達に引き取られ要領が良いちゃっかり娘に育つ。

ヤーデ令嬢からクランツ男爵夫人ミーナの評判を聞きつけて対面を願い、カーリンの付添人としてレーゲンブルトへ赴く。

ハニーブロンドに一族特有の青い瞳。幼い頃には雀斑があった。ルーカスの息子で、甥のサビエルと同年代。


  • ペトラ・アベニウス

元側室。クリスティアの実母。

リーディアの遠縁で彼女亡き後、エリアスの第二夫人となった。

元は役人の娘に過ぎず、亡き公妃と面影があったが為にヨセフィーナのアドリアン暗殺計画に利用された。公妃を真似た仕草と媚薬で第二夫人となり、幼いアドリアンを殺そうとしたが失敗。妊娠していたので死刑を免れ、公爵邸から追放された。以降は領内の邸で産まれた娘と暮らし、酒浸りとなって心身を病みながら公爵家の迎えを待ち望んでいる。オヅマが偶然にも邸を訪問した後日、死亡した。死後にクリスティアは認知されたが、出生届に母親の名前は記載されなかった。

品性はなく無知。酒の影響で情緒不安定で、現状への不満を娘に責任転換して日常的に虐待していた。しかし愛情は有していた模様。

第二夫人時代は風見鶏な態度で平民出身のヴァルナルを見下していた。

茶色い髪に青い瞳を持つ女性。昔の髪の色は鴇色。


  • エレオノーレ・ベルタ・エンデン・グレヴィリウス

元大公妃。エリアスとヨセフィーナの異母姉。

皇帝の后となるべく育てられた。当時の皇太孫であったジークヴァルトを家が支持せず、彼の愛妾に嫌がらせを行った事で皇后候補から除外された。

皇帝となった彼の命で大公家に嫁いだものの、大公妃の地位では矜持を保つ事はできず、夫とは不仲なまま性病に罹り自害した。

結婚前から複数の男性と関係を持ち、公爵家は恥部を秘匿する代わりに賠償金としてダイヤモンド鉱山と差し出す事となり、双方の家に確執を残す。

公爵家はミーナとオヅマの関係性で捏造と疑い、再調査を開始。真相は身籠ったミーナを追放し、それを知った大公によって冤罪を着せられ、使用人諸共苛烈極まる制裁を下された。

ミーナを裏で保護し商人に預けた従僕は大公に気付かれる前に早急に処分した為、大公家は誰も彼女の行方はわからなくなった。

非常に自尊心が高い上に傲慢な気質を持っていたとされ、使用人を木立の影程度しか認識しなかったらしい。


皇族編集

  • ジークヴァルト・リムエル・ボーヌ・シェルバリ・グンディフラォリア

パルスナ帝国の皇帝。

20歳で帝位についたのちに、ダーゼ侯爵(のちに公爵)の後見と、叔父ランヴァルトの後継者候補粛清によって、権力の地盤を確固たるものにした。

グレヴィリウス公爵家とは因縁があり、父シクステンは皇帝の命を受けた先代公爵よって討たれ、婚約者候補のエレオノーレからは妾を害された。即位前から支援もされなかったので、娶らずランヴァルトへの降嫁を命じた。しかし黒杖を賜ったヴァルナルの機転でエリアスの代からは仲は修復された。

皇族の偏愛質を受け継ぎ十年前に死んだセミア妃を今でも愛し続け、最愛の妻との間に産まれた皇太子シェルヴェステルの死も引き摺っている。それ以外の子供達に関心はなく、娘イェドチェリカを特に嫌う。

穏やかな治世を行っており、民から信頼されている。


  • アレクサンテリ・エサイアス・カミル・シェルバリ・グンディフラォリア

パルスナ帝国の皇太子。アドリアンと同年。

異母兄の死後、皇太子となったが皇帝から皇后共に疎まれている為に皇太子宮への移住を許されていない。

後ろ盾がない身の上で、グレヴィリウス公爵家に後援させるべくイェドチェリカから贈れたヤミを公爵家に送り、情報を得ている。

ストレス解消の為に定期的にイェドチェリカに刺客を送っている。

愉快犯かつ飄々とした態度で本心は読みにくい人物。非常に聡明。甘党。

色濃い鬱金髪に瞳の色は紺青で、初代皇帝と同じ色の特徴を持つ。


  • イェドチェリカ・シェルバリ・グランディフォリア

第五皇女。次代の神女姫。

西南の小国から嫁いだ王女を母に持つ。その特徴のある容姿と『夜貴ノ瞳』を宿して誕生し、次代の神女姫となるべく育てられている。

普段はヤーヴェ湖に浮かぶ孤島・シュルハーナの神殿で過ごしている。自称「張り子」。

柔和で涼やかだが、思考回路は異父弟を畏怖させる程に冷徹。特殊な予知能力を有する。

ある人に執着しており、彼の好物であるピーカンナッツのパイとライムの蜜漬けを好む。皇帝の父からは、ある理由で嫌われている。アドリアンから慕われているが、本心では無関心。

現在では珍しい漆黒の髪と瞳を持つ美少女。


  • エヴァサリア・シェルバリ・グランディフォリア

今代の神女姫。前皇帝シェルスターゲの娘。

今は老年で寝込んいるが、かつては多くの貴族令息を魅了し、争いの火種になる事を恐れた父親の命で16歳で巫女姫の任を受け神殿で暮らしていた。

実は父と先代皇太子シクステンと肉体関係を持ち、どちらの子がわからないランヴァルトを出産した。表では女官マイアの子とされたが、皇宮の裏では今でも暗い真実が噂として語り継がれている。アレクサンテリ曰く「まともではない」らしい。オヅマの祖母にあたる人物。

若かりし頃は亜麻色の髪を持つ美少女だった。


モンテルソン大公家及び傘下編集

  • ランヴァルト・アルトゥール・シェルバリ・モンテルソン

現皇帝の五つ年下の叔父。大公当主。黒杖を賜った騎士の一人。

隣国と長く続いた戦役をわずか半年で終結させた功労者で、当代の英雄として尊敬を集めている。また、数学者並みの頭脳を併せ持ち、数々の功績を残した天才でもある。

稀能『千の眼・瞬の爪』を持ち、本来は別々の技であったものを独自で合わせ技として身に着けている。この技で後継者争いで甥を即位させる為に多くの皇族を粛清した。

正妻とは不仲で裏切られた末に死別。側室のビルギットとの間にシモンを儲けるが、妻子を「阿呆共」と呼び忌み嫌っている。レーナ(雄)と言う白蛇を飼っている。

実はオヅマの父親。幼いミーナを皇宮女官の教育を受けさせていた。グレヴィリウス公爵側の推測では美しく成長したミーナを愛し、身籠った彼女を追い出した正妻に冤罪を着せて、使用人諸共苛烈極まる制裁を与えた模様。ミーナの事は未だ引き摺っており、想い続けている。

王都で外出中にアドリアン一行と出会った事が縁で交流ができ、文通を交わすようになる。偶然オヅマの存在を知り、ベネディクトの証言でミーナと庶子の生存を確信する。

表では先代皇帝シェルスターゲと女官マイアの子とされるが、今代の神女姫エヴァサリアが父と兄からの偏愛で産まれた禁忌の子。故に皇宮では影で「貴畜」「豺狼の子」と蔑称で呼ばれている。

オヅマの「夢(一周目)」では兄妹をアンブロシュ家の養子にし、実子であるオヅマを自分以外は信用しないように洗脳。残虐な訓練を与え、稀能を取得した彼の成長に狂喜していた。

密かに玉座を狙い、皇帝に即位した後に皇子オヅマに黒杖を与えた。

上品な人物だが強固にして強烈な自尊心を秘めており、本性を知る部下からは恐れられている。血統よりも能力を重要視し、身分関係なく実力者を引き立てている。コーヒーが好物。

豪奢な頭巾を被り、禿頭で赤黒い傷痕がある。紫紺の瞳を持つ。若かりし頃は亜麻色の髪の美青年だった。現時点で帝国最強の男


  • シモン・レイナウト・シェルバリ・モンテルソン

大公家第一子。ランヴァルトの一人息子。

英雄の息子でありながら性悪で、父親から「馬鹿」「割れた皿」と貶されている。嫡嗣と認められていないが父親本人に告げられるまで知らずに振舞っていた。

園遊会で令嬢達に人気のあるアドリアンに猛烈な敵愾心を向け、一方的に侮辱して彼から暴力を受けた。両成敗となったが、アドリアンは罰としてクランツ男爵家のお預かりとなった一方で、自身は母親が用意した替え玉で謹慎を逃れていた。その後、天然痘を発病して一年の療養生活を送り顔に後遺症を残す。

翌年の園遊会ではヴィオラ公女に陰湿な嫌がらせを仕掛け、庇ったキャレを集団で暴行し主のアドリアンに謝罪を要求した。しかしヴィオラ公女の機転で大公と皇太子に告げ口され失敗。

罰としてリヴァとの訓練を命じられるが、ファルを犠牲にして事なきを得た。

性格は傲慢で幼稚。母親離れができず、父親とヴィンツェンツェが大の苦手。アカデミーの成績は悪いが悪知恵は働く。異母弟オヅマと異なり容姿以外に親の能力は引き継がれなかった。

オヅマの「夢(一周目)」では未登場。

オヅマの異母兄。瞳の色以外は若き頃の父親と瓜二つ。


  • イェドヴェリシア・パウラ・シェルバリ・モンテルソン

イェドチェリカの双子の妹。第六皇女。

皇族では不吉とされる双子として産まれ、足に先天性の障害を持つ。相次ぐ事故が重なり、皇宮の不吉な象徴として大公家に下げ渡された。

政争とは無縁だが、讃えられる姉とは正反対に冷遇される人生を送っている。

自尊心は姉以上だが比較される事を極度に嫌う。卑屈で地味な性格をしている。

オヅマの「夢」では侍女マリーや女騎士ハルカが仕えていたと考えられる。

灰色の髪に青鈍色の瞳を持つ。細身で不健康。


  • ヴィンツェンツェ

側用人。鍼灸の技術を持つ。

主の策謀的な存在でもあり、大公妃の冤罪事件に関わっているとされる。

斜視で濁った青灰色の瞳を持つ。不気味な迫力の老人。

オヅマの「夢(一周目)」では道化であったか……? 正体不明の怪物


  • リヴァ=デルゼ

ルミアの娘。

諸事情で行方不明となっていたが、戦士として強くなるべく自力で母親の元に辿り着き、稀能『澄眼』を取得後に『穢の民』との間にハルカを儲けた。

相手の男性に一旦育てさせた後で殺害し、稀能習得の為にルミアに預けた。

ランヴァルトに心酔しており、『千の目・瞬の爪』を取得したい想いも含め、大公家に身を置いている。素養のある騎士達に冷酷な訓練を行っている。

オヅマの「夢(一周目)」ではランヴァルトの命で『千の眼・瞬の爪』を取得させる為に彼に人殺しを強行させ、房術指南も担当した。数年後に滋養強壮の薬が原因で老婆と化し、大公家から騎士に任命されず『千の目』すら取得できずに無惨に落ちぶれていった。

母性が欠けた傲慢で非情な人物。殺人を快楽的に感じている節もあり、今のオヅマにある種のトラウマを与えている。その性格故に同僚からは嫌われている。

女性にしては大柄でセピア色の瞳を持つ。若白髪が生えている。


  • ベネディクト・アンブロシュ

臣下の一人。准男爵。

稀能『絶影捷』の域にはいかないが高い実力を持つ騎士。主君に心酔している。

黒角馬研究で大公家から派遣された学者達のまとめ役を担当。ギョルムが起こした問題ではラナハン卿を見限って独自で尋問を行い、ヴァルナルを援護。お礼に剣試合を行い満足の形で敗北。オヅマとも戦い、勝利した。後に大公の気紛れで見習い騎士に迎えられたファルを養子に迎えた。

大公の命でコズン王国まで巡歴した後、報告の際にクランツ男爵家夫人と息子の詳細を証言する。

オヅマの「夢(一周目)」ではオヅマの正体がわかった上で養子として受け入れ、マリーも引き取り兄妹を育てあげた。リヴァの試練を受け始めてから精神を病んだ彼を案じるようになるが、すでに声は届かなくなっていた。

登場している大公家の人間の中で実直で騎士の見本のような人物。

栗茶色の髪に薄緑色の瞳を持つ。


  • ビルギット・アクセリナ・モンテルソン

ランヴァルトの側室。伯爵家出身。シモンの実母。

正妻亡き後は大公家の実質的な女主人を自負しているが夫からは親子共々大公城に立ち入る事を禁じられ、「阿呆共」と忌み嫌われている始末。

息子を大公家の嫡子としたかったが、現時点においては認められていない。

性格に難があり、ヒステリックな上に依存体質。複数の男性と関係を持っているものの、少女時代から一途にランヴァルトを想い続けている。


  • ファル=ヴァ=ルフ・アンブロシュ

シモンの近侍の一人。元は謹慎を受けたシモンの代わりとなるべく拾われた乞食。

ランヴァルト大公の気紛れで生かされ、西方のシューホーヤの血を引いた混血児と判明すると騎士見習いとなりアンブロシュ家の養子に入った。

園遊会の一件の罰でリヴァとの訓練を命じられたシモンに代わり、自主的に参加する。

義父と同様に大公を敬愛している。記憶力が良い。

オヅマの「夢(一周目)」では大公家に仕える騎士。冷酷で好戦的な性格の持ち主で、女遊びを好み、ハルカと肉体関係も持っていた。

シューホーヤ人の特徴でもある黒い肌に、丁寧に編み込んだ暗金髪を持つ。


ダーゼ公爵家編集

  • ヴィリヤミ・アンセルム・リルクヴィスト・ダーゼ

宰相。公爵当主。

皇太孫であった当時のジークヴァルトを後見し、彼を即位させる。その後、帝都に蔓延っていた闇ギルドの大半を壊滅させた。

中立派で実直な気質。見事な白髭の持ち主で民衆から「白髭宰相」と呼ばれている。


  • ヴィオラ・ヴィーリア・ティルザ・リルクヴィスト・ダーゼ

公爵令嬢。ヴィリヤミの一人娘。皇太妃候補の一人。

園遊会でシモンの陰湿な悪戯を仕掛けられ、庇って傷ついたキャレを助けるべく皇子とランヴァルト大公を呼んだ。

オヅマとはヒルヴァニス渓谷で出会った事がある。

社交界では公女として相応しい礼節な態度をとっているが、素は高飛車で高潔な人物。

『トゥルクリンデンの宝玉』と称される程の美貌を持ち、藤色が混じった銀髪と青翠の瞳が特徴の美少女。


その他勢力・貴族編集

  • ダニエル・プリグルス

元伯爵。グレヴィリウス傘下貴族アルテアン侯爵の三女と婚約していた。

会議中に先代公妃を侮辱した発言をした為にエリアスの逆鱗に触れ、婚約者の家共々公爵家から切り離された。

一族から追放されて身を堕とし、会議の原因となったアドリアンを逆恨むようになる。復讐心をヨセフィーナとハヴェル一派に利用され、操られるようにエラルドジェイを雇いレーゲンブルト領で誘拐事件を起こした。道中でオルヴェルやマリーを巻き込み、『瞬の爪』を発現したオヅマに首を切られて死亡した。

高慢な性格で有能とは言えない人物。最後まで利用された側だと気づかなかった。


  • ギョルム

帝都から派遣された、黒角馬研究班の計画進行管理を担当する副使。吏士。

叔父のソフォル子爵が皇帝のお気に入りの侍従であり、それを鼻にかけて好き放題するだけの無能。『目覚まし』という麻薬成分を吸っている。

ミーナを見初めて執拗に追い回し、既成事実を作るべく襲うが止めに入ったオリヴェルに暴行して激昂したミーナの反撃に遭う。その後は地下牢に収監された。

元々は叔父が出来の悪い甥の為に名誉挽回の機会を与えたのだが、見限られた末に杖笞罪に処された後、川に呑み込まれて死亡した。

身勝手で自己中心的な性格。ぬっぺり頭の男。


  • ラナハン

帝都から派遣された、黒角馬研究班の計画進行管理を担当する正使。上級吏士。

典型的な事なかれ主義者で仕事は部下に任せきりのお飾り。

ギョルムの上司であるが地位の都合で何もできず、ギョルムが捕まっても己の監督責任が追及される事を恐れて保身を選ぼうとした。しかしベネディクトとヴァルナルの叱責で結局は帝都に書翰を送る事となる。


  • トーマス・ビョルネ

帝都から派遣された黒角馬研究班の一人。アカデミーを十歳で入学した俊英で『賢者の塔』に在籍している。数学分野が専門。

教師免状を持っているので帝国から迎えられたクランツ男爵家の家庭教師の一人に抜擢された。

数学に関心のあるオヅマにアカデミーの入学を勧めた事も。『目覚まし』をたまに吸っており、ギョルムに渡して彼の破滅を間接的に作った。

研究員の生活が長かったせいか口調は砕けている。自由奔放でありながらプライドが高く、自分が認めた人間しか覚えない。故に同僚さえ名前を覚えず、勝手にあだ名をつける。

マッケネンを気に入り、彼が嫌がるほど一方的に付きまとっていた。

ロビンとは双子で眉毛の黒子の位置が逆。


  • ジーモン・アウリディス

クランツ男爵家の家庭教師の一人。没落した伯爵家出身。

歴史、哲学、礼法専門。皇室に侍従を輩出した実家の影響で有職故実の知識も深い。

かつては帝都アカデミーの歴史学教授であったが、神話体系に関しての激しい論争に敗れてアカデミーを去ったらしい。

教科書通りの暗記でなく現代のおけることから歴史の考察を重視しており、特に「名も知れぬ神女姫」に強い関心を持っている。

甘党でアップルティーやお菓子が好物。気難しい変人。


  • エリュザリオン・カテル

貴族でありながら王都でブティックを経営するデザイナー。通称はエリュザ、エリュー。

中産階級向けの服を生産している。ランヴァルト大公とは懇意。

柑子色の髪と丸眼鏡を持つ女装した男性。


その他編集

  • コスタス

ミーナの夫。小作人。働かない暴力亭主。

「夢」を見たオヅマの選択によって、酔った帰りに事故で無くなった。

ミーナとの結婚の経緯は花嫁探しに帝都に渡ったとき、奴隷に身を堕としたミーナを見初め、脅して夫婦となった。

義理の息子となったオヅマを何度も殺そうとし、実娘マリーでさえ窯に放り投げようとして、庇ったオヅマの肩に火傷を残す。

どうしようもない卑劣漢だが、酒仲間曰く「情けない男」という自覚はあった模様。

オヅマの「夢(一周目)」では子供を守ろうとしたミーナに撲殺された。

作者によると暴力家庭で育ち、優しかった母の死により荒れた生活を送るようになったらしい。元からミーナとの結婚は母親の介護役を得るための手段に過ぎなかった。

栗色の髪に緑の瞳を持つ。


  • エラルドジェイ

『古代の民』の末裔。帝都を拠点にしている闇ギルドの構成員。元鉱山奴隷。

エラルドジェイは一族のならわしでつける『秘名』で、通称はジェイ。但し仕事柄、様々な名前を持っている。

ダニエルの依頼を受け、レーゲンブルト領へ向かいアドリアンをおびき寄せる為にオルヴェルとマリーを誘拐。助けに現れたオヅマと対峙し、何故か秘名であるはずのエラルドジェイという名を知る彼と運命的な出会いを果たす。

帝都に帰還後、ニーロを仲間に謀殺され、カトリ以外の関係者を殺して制裁し、姿を晦ました。その後、カトリに騙されて負傷し、逃亡中にルミアの元で修行中であったオヅマと再会。修練後はオヅマに「夢」を明かされ、彼の秘密を知る唯一の存在となった。

胡桃をゴリゴリ手で回すのが癖。『瞬の爪』を避ける程の高い身体能力を持つ。愛用の武器は暗具の鎌爪。ルミアが認める程の複数の稀能を体得できる類稀な潜在能力の持ち主。

オヅマの「夢(一周目)」では山賊から逃亡中にオヅマとマリーに助けられた。それ以来腐れ縁となり、最後はオヅマに起因することで死亡した模様。オヅマの吹く笛を好んでいた。ラオに黒角馬に情報を与えた張本人で、後にオヅマの未来を大きく変えた。

人を食ったような喋り方をするが義理人情に厚い性格。

見方によっては善い人に見えるが、作者からは「悪い人間」と断言されている。

腰まで伸びた濃紺の髪と瞳を持つ。西方の民族衣装を纏っている。


  • カトリ

帝都のしがない肉屋の娘。実家から出て奉公に出ている。

両親が闇ギルドの構成員と知らないまま、居候のジェイに一途な好意を抱いている。

しかし両親が病んだ弟の治療薬の為に彼の義親ニーロを殺した挙句金を奪った為にジェイに親と弟を殺されてしまう。

それからは復讐心に憑りつかれ、残された金を使って人情あるゴロツキを雇って仇を打とうとした。一度は傷をつけたものの彼らから本心を見抜かれてしまい、結局殺す事もできず去った。ジェイの『秘名』を知る人物。

薄茶色の瞳を持つ。


  • ケレナ・ミドヴォア

クランツ男爵家の家庭教師の一人。語学が専門。

西部連合で子供時代を過ごし、帰国後は結婚した。しかし一年で夫に先立たれ、語学経験を活かし家庭教師となった経歴の持ち主。

実はオリヴェルの元お世話係メリナの妹で、病んでしまった姉の為に復讐心で男爵家の仕事を受けていた。しかし調べる内に真相を知って止めたが、姉への同情心からヴァルナルに愛されるミーナに度々牽制するようになる。不本意ながらギョルムにミーナが襲われる一因を作ってしまい、ヴァルナルとミーナが再婚する切っ掛けとなった。

ネストリと惹かれ合い、求婚を受けたが伯母夫婦と姉を抱える現状から断った。現在は内縁関係に落ち着いている。

真面目な性格の変わり者。くせ毛の髪がコンプレックス。旧姓はバルトン。


  • テュコ・エドバリ

ヴァルナルの実弟。豪商。兄とは一つ年下。

お互いの立場を思いやり、情報交換は積極的にするが兄弟との商売上の取引はしていない。

兄の元妻と侍女を快く思っておらず、七年前に甥に会いに訪れたときは追い出された事がある。

人相を見るのが得意で観察力も高く、ミーナと素性とオヅマの血統を兄に警告し、後に公爵家に情報を伝えた。後日、母と共に兄の結婚式には参席していた。

亡きギリヤ王国民の子孫が数多く住む地で育ち、独特な方言で話す。

赤銅色の髪で兄似た顔立ちを持つ。体型はぽっちゃり。


  • ルミア=デルゼ

ズェーデン村に暮らす女老師。公爵家傘下の騎士を預かり、稀能取得に必要な呼吸の方法を教えている。ヴァルナルに『澄眼』を伝授させた師。

公爵家の依頼でオヅマを預かり、彼の『千の眼・瞬の爪』の発現に疑心したものの修行を受けさせる。

若かりし頃は傭兵として活躍し、同業者と儲けた娘リヴァ=デルゼをイトコ夫婦に預けたのが原因で失ってしまう。娘の自力の捜索で再会したものの、親子関係は破綻し願われるままに修行させた。後に孫のハルカを預かり、関係に悩んでいる。

年齢以上に大柄な体格で、かつての名残で日焼けした肌、セピア色の瞳を持つ。


  • ハルカ=デルゼ

ルミアの孫娘でリヴァの娘。父は『穢(あい)の民』であった。

母親の命令で稀能『澄眼』を取得する為にルミアの修行を受けている。幼い身でありながら高い身体能力を持つ。村の人達から虐めを受けている。

父親の特性を継いでいるようで、無表情かつ不愛想。感情がないわけではなく、オヅマを気に入り少しずつ表情を見せていくようになる。オヅマの吹く笛の音色が好き。

オヅマの「夢」ではオヅマを主君として仕えていた女騎士。リヴァの過激な訓練から助けられるようにオヅマの弟子となり、彼から最も信頼され最後まで非情な命令でもこなしていた。

マリーとの仲も良好で、笑顔を浮かべる事もあったらしい。また自分に関心がなくオヅマに注意されるまで求められるがままに複数の男性と関係を持っていた。

鶸茶の髪に一重が特徴。母や祖母と同じセピア色の瞳を持つ。


  • サク・レミァン

『祈りの手』に所属する医師。

アカデミーは入っておらず、師の元で学び免許状を取得した経歴を持つ。様々な寄付の元でシュテルムドルソンで慈善活動しており、領民達からの信頼は厚い。

ゴハというオヅマが危惧する謎の薬草を扱っている。

明るい栗色の神に同色の瞳を持つ。


  • エルッケ

『祈りの手』に所属する医師。サクと共に活動している。

オヅマの「夢」ではオヅマを「皇子様」と呼び、狂気染みた尊崇を向けていた。

緑色の細い目が特徴の青年。


  • ラオ・アールン=カー・ダイ

ホボポ雑貨店の店主。ジェイとは旧知の仲。

ジェイにもたされた情報で黒角馬を乱獲しようとしたが、レーゲンブルト騎士団に先を越されてしまい、一世一代の大勝負に失敗する。後にオヅマが詫びのつもりで取引した。

癇癪持ちだが切り替え早く、ある意味で肝が据わっている。珍しい物を好む。

オヅマの「夢」ではジェイから黒角馬の情報を渡された事で乱獲し、巨万の富を得て商人として大成功する。しかし黒角馬の純血種は絶滅危惧種となった挙句、晩年は商売に失敗し、借金を重ねて夜逃げした。

カブのような顔立ちで、残りの大事な髪を三つ編みで結っている男性。西方の民族衣装を纏っている。


  • サーサーラーアン

行商人。キエル語が下手で片言で話す。

山賊から逃亡中のジェイを救ってからは旧知の仲となる。

仕入れた布が売れず、頼みの綱のホボポ雑貨店を訪れたときにジェイと再会した。オヅマが「夢」でみた布だと気づき、布は全て彼に売却した。


  • レオシュ

公爵家領内に住む孤児。貧民街の子供達のリーダー。

他国出身の両親の死後、孤児院に引き取られ配達の仕事をしている。

オヅマに喧嘩を売り、決闘して負けてからは友達となる。騎士になる事を夢見ており、オヅマが才を見込んで勧誘したが矜持から断った。後に『ズロッコの青月団』を結成。

酒乱の母親から虐待を受けているティアを案じていた。悪ぶっているが、極めて真面目な性格。

灰色の瞳を持つ少年。


  • クリマコルス・サルシム

アールリンデンの行政文官。アベニウス母娘の保護監視員。

公爵家からの生活費を長らく着服して私腹を肥やし、虚偽の報告を行っている。ペトラの死を切っ掛けにオヅマが直に家令ルンビックに連絡したとは知らず死亡報告書を改竄して提出した事で悪事が露呈。団長代理のルーカスの策に利用され、ヤミの拷問でこれまでの悪行をオルグレン男爵家主導と嘘の自白した。その後、罪人として処理される。

役人としては優秀だが傲慢で、アベニウス母娘や役所に訪れたオヅマに無礼な態度を取っていた。


  • ゾルターン

ランヴァルトが出資している茶寮「七色蜥蜴の巣」の店主。

丸猫のようにでっぷりした体型。


謎の存在編集

  • 謎の少女

突如、水甕の中に現れた謎の美少女。

オヅマと知り合いらしいが、彼は知らない。様々な彩りを浮かべる虹のような瞳を持つ。


世界観編集

パルスナ帝国編集

オヅマ達主人公が住んでいる世界最大国。バルスナ大陸の大半を統べる。

帝都はキエル=ヤーヴェ。


レーゲンブルト編集

グレヴィリウス公爵家傘下クランツ男爵家の領地。

元は北部地域のサフェナと呼ばれ、先代公爵が当時の皇太子であったシクステンを討った功績で賜った土地。

決して肥沃な土地ではなく、特産品もない。ヘルミ山に黒角馬が生息。


民族について編集

  • 噓なき民

かつて帝国の西に住み、離散した部族。

言霊信仰で口に出した言葉は力を持つと考えている。その名の通り嘘をつかず、答えられない場合は沈黙を貫く。特徴は肌色が褐色。


  • 古代の民

謎が多い部族。

長老又は両親から『秘名』を与えられ、それは将来の伴侶しか教えてはならない。

特徴は濃紺色の髪と瞳。


  • 穢の民

かつて帝国で差別的な仕事を担っていた奴隷部族。

奴隷制度が廃止された後、平民となったが差別は残っている。

特徴はくすんだ黄緑色の髪に一重。肌色は黄色。


稀能編集

修練を積んで取得する超人の高等技術。

極限の集中力で発揮する。素養が深く関係する。


  • 鐵(くろがね)の腕

腕を鉄のように頑丈にする。


  • 澄眼

相手の動作が遅延して見える。

極めると生物の体調の良し悪しの判別ができる。


  • 千の目

全方位を索敵できる。範囲は自分を中心とした周囲数里にも及ぶ。生物の命の律動、脈、鼓動を感じる事もできる。

反動で視力が一時的に喪失し、中には一度の使用で失明した者もいる。


  • 絶影捷

詳細は不明。


  • 瞬の爪

『絶影捷』の派生技。

気配を悟らせず、確実に殺傷できるように創られた。


  • 千の目・瞬の爪

ランヴァルトが二つの稀能を一つの稀能に組み合わせた。

対象者を補足し、瞬殺する。


関連タグ編集

小説家になろう カクヨム 騎士 ファンタジー シリアス


外部リンク編集

小説編集

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