椿三十郎
つばきさんじゅうろう
次席家老が汚職をしている。告発しようと城代家老の睦田に持ちかけたが、あっさりかわされてしまった。代わりに大目付の菊井の元へ行ったところ、菊井は理解を示し、共に立とうと提案したという。
歓喜に沸く若侍たちだったが、たまたま同じ神社で野宿をしていた浪人が、横から口を挟む。いわく、睦田はタヌキで、菊井こそが汚職の黒幕のように思える、他人事だからこそ客観的な見方ができる、と。
そして浪人の見解を裏付けるように、菊井の手勢が神社を襲撃しようとしていた。勝ち目はない。そんなとき、浪人はぶっきらぼうな態度を取りながらも、若侍たちを隠れさせ、持ち前の剣術で手勢を退散させる。
浪人は屋敷に戻る若侍に同行する。だが、睦田や女たちはすでに菊井たち悪党一味に捕らえられていた。そればかりか、翌日には策略により、孤立無援の状態になってしまう。
行きがかり上、若侍たちとともに悪党一味と戦うことになった浪人。名前を問われると、彼は庭先の椿の花を見て、椿三十郎と名乗るのだった。
同じ黒澤明・監督、三船敏郎・主演で製作された『用心棒』の続編的作品。ただし三船の役はそれぞれ別の偽名を名乗っているため、同一人物とは明言されていない。エピソードも独立している。
シナリオは山本周五郎の時代小説『日日平安』を原作としているが、『用心棒』の続編にする上で大幅な脚色がされている。
『用心棒』がアウトローな作風なのに対し、今作の方はややコミカルでヒューマニズムの要素が入っている。
『用心棒』同様、リアリティを追求しつつも派手な殺陣が大きな見所。特にラストシーンでの居合と血しぶきは後の映画表現に決定的な影響を与えた。
モノクロの本編に対し、椿だけ赤くパートカラーにするという案があったが、実現しなかった。これは翌年の『天国と地獄』で実現した。
リメイク権を獲得していた角川春樹が着手し、2007年に公開。
原典の脚本をそのまま使用したことが売りの一つで、ストーリーや台詞を踏襲している。ラストの居合だけが大きく違った展開を見せる。