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概要

用心棒』、『椿三十郎』と時代劇映画を手掛けてきた黒澤明が次回作には現代劇をと構想していたところにたまたまよんだエド・マクベインの『キングの身代金』に着想を得て同作を原作に映画化。

黒澤は制作の動機を「徹底的に細部にこだわった推理映画を作りたい」と「当時の誘拐に対する刑の軽さへの憤り」と語っている。

映画は興行的に成功を収めた一方、公開当時誘拐事件が多発。国会でも問題視され、1964年の刑法一部改正のきっかけになったとされる。

あらすじ

横浜の製靴会社「ナショナル・シューズ」の常務権藤金吾のもとに「子供を攫った」という男からの電話が入る。そこに息子のが現れいたずらかと思っていると、住み込み運転手青木の息子進一がいないことに気付く。

誘拐犯は子供を間違えてしまったが、そのまま権藤に身代金3000万円を要求する。

デパートの配送員に扮して刑事たちも到着。権藤の妻や青木は身代金の支払いを懇願するが、権藤にはそれができない事情があった。

なんと権藤は自宅を抵当に入れてまで自社株を買い占め、株主総会で経営の実権を手に入れようと画策していた。

翌日までに5000万円を送らなければ権藤は全てを失う。権藤は要求を無視しようとするが秘書に見透かされ、裏切られたことから身代金を払うことを決意する。

権藤は身代金を入れたカバンを持ち特急「こだま」に乗るが、そこに子供の姿はない。すると犯人から「酒匂川の鉄橋が過ぎたところでカバンを窓から落とせ」と指示される。特急電車の窓は開かないはずだと刑事も驚くが、洗面所の窓が犯人が指定したカバンの厚み7cmだけ開くことを知る。

権藤は指示に従い進一も解放されるが、身代金は奪われ犯人も逃走する。

戸倉警部率いる捜査陣は進一の証言や目撃情報、電話の録音などを頼りに捜査を進め、進一が捕らえられていた犯人のアジトを見つけるが、そこでは共犯と思しき男女がヘロイン中毒で死亡していた。主犯の口封じと見た戸倉はニセ情報を流して主犯をあぶりだす。

スタッフ

製作:田中友幸菊島隆三

脚本:小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明

原作:エド・マクベイン「キングの身代金」より

音楽:佐藤勝

整音:下永尚

監督助手:森谷司郎

現像:キヌタ・ラボラトリー

製作担当者:根津博

監督:黒澤明

キャスト

権藤金吾:三船敏郎

戸倉警部:仲代達矢

権藤怜子:香川京子

河西:三橋達也

青木:佐田豊

田口部長刑事:石山健二郎

荒井刑事:木村功

中尾刑事:加藤武

竹内銀次郎:山﨑努

宣伝担当重役・神谷:田崎潤

デザイン担当重役・石丸:中村伸郎

営業担当専務・馬場:伊藤雄之助

青木の息子・進一:島津雅彦

権藤の息子・純:江木俊夫

捜査本部長:志村喬

捜査一課課長:藤田進

村田刑事:土屋嘉男

山本刑事:名古屋章

島田刑事:宇南山宏

高橋刑事:牧野義介

小池刑事:鈴木智

中村刑事:田口精一

上野刑事:山本清

原刑事:児玉謙二

刑事:伊藤実鈴木治夫

鑑識課員:加藤和夫

新聞記者:千秋実三井弘次北村和夫近藤準

債権者:山茶花究浜村純西村晃

靴工場の工員:東野英治郎

病院の火夫:藤原釜足

刑務所長:清水将夫

裁判所執行吏:織田政雄松下猛夫

内科医長:清水元

横浜駅の乗務員:沢村いき雄

魚市場の事務員:清村耕次 (声は熊倉一雄による吹き替え)

病院の外来患者:大村千吉

看守長:田島義文

麻薬患者:菅井きん小野田功

殺される麻薬街の女:富田恵子

(以下ノンクレジット)

特急第2こだまのビュッフェの客:渋谷英男

特急第2こだまのビュッフェのコック:松井鍵三

共犯者:中西英介葵正子(公開時のパンフレットに記載)

ニュースキャスター:田英夫

権藤家女中:八代美紀小沢経子清水由記(公開時のパンフレットに記載)

刑事:草間璋夫熊谷卓三生方壮児堤康久

国鉄乗務員:橘正晃天見竜太郎

新聞記者:大滝秀治梅野泰靖武内亨日野道夫

酒場に現れる女:岩崎トヨコ

麻薬患者:鈴木和夫宮田芳子田村保

麻薬街の男:常田富士男

エピソード

原作の舞台は高級住宅街だが、映画では犯人が主人公を憎悪していたという設定から、スラム街を見下ろす丘の上の高級住宅というイメージで横浜市が選ばれた。

浅間台から黄金町を一望できるという触れ込みだったが、実際には黄金町は三春台や野毛山にさえぎられて見えず、犯人のアパートがあったあたりは浅間町に属する。

特急「こだま」のシーンは実際に151系1編成をチャーターし、東海道本線を走らせて撮影した。

固定窓の151系で洗面所の窓だけは換気用に7センチだけ開くという構造が重要なトリックになっており、脚本執筆中に図面とにらめっこしながら何度も国鉄に問い合わせたため、最後には「あなたたちは何者ですか?」と怪しまれたという。

酒匂川の鉄橋のシーンで、民家の2階が邪魔だとして撮影日だけ民家の2階を撤去したことはよく知られている。

当然ながら国鉄の定期列車の合間を縫って臨時列車を走らせての撮影で、しかも1日だけ民家をどかしての撮影だったということもあって仲代達矢は「このシーンでNGを出すと2000万円かかる」と田町電車区に停車中の車内で入念なリハーサルを行ったという。

ところが田口部長刑事役の石山健二郎が緊張のあまりカメラテストの「スタート」を本番の「スタート」と勘違いし、列車が鉄橋にかかる前に芝居を終わらせてしまった。黒澤は再撮影も覚悟したが編集でなんとかつなぐことができた。当該シーンで石山が振り向いているのは石山のミスに怒った助監督の森谷司郎が石山の尻を蹴ったのに反応したものである。

映画は真夏という設定だが撮影は真冬に行われ、息が白くならないように口に氷を含んで演技をした。

終盤に主犯が特定される場面で、モノクロの画面に桃色の煙が立ち上る場面は『椿三十郎』で構想されたが実現しなかった演出のリベンジである。『踊る大捜査線THEMOVIE』では、青島俊作が誘拐犯の居場所を突き止める際に画面がモノクロになり、桃色の煙が立ち上ったのを見て「天国と地獄だ」と呟き現場へ急行するというオマージュがある。

犯人を逮捕するシーンでは当初エルヴィス・プレスリーの『It's Now or Never』を流す予定だったが、著作権がらみの使用量が高額だったためボーカルなしの『オー・ソレ・ミオ』に変更された。

走っている電車などの乗り物から現金を落とすという手法は後に実際の現金受け渡し目的の犯罪でも多用されている。

ドラマ版

2007年に土曜ワイド劇場枠内で『黒澤明ドラマスペシャル・第一夜』として放送。

原作では苗字しか設定されていなかった主要人物にフルネームが設定されたほか、名無しの端役だった犯人の共犯者の掘り下げや、現実にはかえって不自然として好まれない方法である「デパートの従業員に扮した刑事たちが権藤邸に乗り込む」という描写が削除されている、現代の鉄道車両(撮影に使用されたのは681系)ではカバンを投げられるほど開口部の広い窓が存在しないことから乗務員扉の窓を開ける描写に変更されている、犯人の居場所を特定するきっかけになった煙は廃棄物処理法の関係で漁師の焚火に変更されているなど放送当時に即した描写に変更されている。

一方で脇役刑事の人物描写があまり行われないなど警察サイドの描写は削られている。

スタッフ

製作:テレビ朝日・東北新社クリエイツ

脚色・監督:鶴橋康夫

脚本:菊島隆三・久板栄二郎・小国英雄・黒澤明(※オリジナル脚本)

チーフプロデューサー:五十嵐文郎

プロデュース:黒田徹也・小越浩造・小橋智子

企画協力:黒澤プロダクション

音楽:仲西匡

キャスト

権藤金吾(フロンティアシューズ専務):佐藤浩市

権藤伶子(金吾の妻):鈴木京香

竹内銀次郎:妻夫木聡

刑事:杉本哲太

女刑事:

河西庸(権藤の秘書):小澤征悦

青木要(権藤の運転手):平田満

捜査本部長:津川雅彦(特別出演)

漁師(焚き火を行う男):泉谷しげる

刑務官:本田博太郎

神谷光(フロンティアシューズ常務):六平直政

石丸高士(フロンティアシューズ常務):田口浩正

迫田明:篠井英介

迫田周子:吹石一恵

売人・マリ子(竹内の恋人):井村空美

権藤純(権藤の息子):神谷涼太(子役)

青木進一(青木の息子):松田昂大(子役)

馬場栄(フロンティアシューズ副社長):橋爪功

田口警部:伊武雅刀

戸倉碧警視:阿部寛

そのほかドラマ

本作と同様に『キングの身代金』を下敷きとした刑事ドラマが複数存在する。

関連タグ

黒澤明

151系

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天国と地獄(映画)
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天国と地獄(映画)
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