解説
航空機の中で提供される食事を「機内食」という。航空機が長距離を飛行するようになり、機内での食事が必要になったことから生まれた。
地上で予め調理し、機内では電子レンジなどで再加熱して提供される。現代の固定翼機の機内での本格的な調理(食材を1から加工)はセキュリティ(包丁・・・)や飛行時間(最大でも16時間程度)、機内の気圧(加圧して0.8気圧、標高2,000m相当で沸点も80℃と低い)から適切ではないため。船や列車のような厨房を備えたものは、第二次世界大戦以前の飛行船にあった程度である。
そのため、現在のような「レンチン飯」形式となったが、これには機内の多数の乗客(最大で500人程度)の配食が短時間で済むという副次的効果が生まれた。
現在は同様のケータリングシステムが、高速鉄道の食堂車の代わりとして採用されていることが多い。
日本では主要都市間で一番遠い札幌~那覇でも4時間弱しかかからない上今日では空弁もあるので(これらは機内食には含まれない)、国内線では上級クラス以外ではほとんど見られなくなっているが、海外では国内線でも長距離のフライトの場合は提供されることがある。
国際線ではIATAの取り決めで一定時間以上のフライトでは要望に応じて機内食を提供することが取り決めとなっている。エコノミークラスでも漏れなく提供されるが、LCCでは機内食が別料金にされていたり、短距離路線では省略することがほとんど。
エコノミークラスではメイン画像のようなワントレーのスタイルで出されることが多いが、ビジネスクラス以上になるとお皿で提供され、内容も豪華になっていく。また、長距離路線では複数回提供され内容が充実する一方、短距離路線では出ても1回だけで、軽食程度になる。ファーストクラスともなると好きな時間にカップラーメンやカレーライスといった軽食を頼める。
様々な乗客が利用することからメニューも色々あり、子供向けから宗教や思想に合わせたもの、食品アレルギーに対応したものなど様々(ただし、中東の航空会社などでは初めから全メニューがその地域の宗教に対応したものになっているので、メニューにないこともある)。これら特別メニューは事前予約が必要だが、注文そのものはどんな人でも構わない(たとえば普通の人がベジタリアンメニューを頼んでもよい)。予約不要の通常の機内食は基本的に複数のメニューを選べるが、先着順のためお目当てのメニューが残っていないこともある。
味付けは地上より濃い目になっている。これは飛行機の中は地上より気圧がやや低く乾燥している環境のため、味覚を感知する能力が落ちてしまうから。また、ソースが垂れないようにとろみをつける、料理が乾燥しないようにメニューにフルーツを入れるなどの工夫があるほか、食中毒のリスクがあるため生魚は絶対に提供されない。炙るなどの工夫をしている。
航空会社ごとに様々なメニューがあり、いつも同じものが提供されているわけではないので、調理は基本的に人の手で行っている。これらの工場は基本的に空港の近くにあり、空港では人間や貨物同様に保安検査を受けた後、専用のトラックでカートごと直接飛行機に積み込めるようになっている。
地上で食べることはできないわけではなく、前述の機内食製造会社が冷凍食品として通販で売っていたり、製造会社が運営する空港のレストランで提供されたりすることがある(どこの航空会社かは明かされないが、コラボ企画と銘打って航空会社の名前を出すこともある)。
関連項目
ロイヤルホスト:日本のファミレス。祖業が機内食製造で、現在も関連会社で機内食製造を継続している。