概要
日本の落語演目の一つ、『死神』の元になったと言われている物語。
あらすじ
昔々、ある貧しい農家の家に息子が生まれた。
さっそく夫婦は息子の名付け親になってくれる人を探していると、最初に神様が現れるも「自分たちがずっと貧乏なのは神様のせいだ」と考え却下し、次に悪魔が現れると「悪魔は気まぐれで人を騙すから駄目だ」と考え却下する。するとその次に死神が現れ、夫婦は「死神は誰にでも平等に死を与えるから大丈夫だ」と考えたため名付け親になってもらった。喜んで引き受けた死神は、息子が将来金に困ることはなくなると信託を与えた。
やがて息子が成長し若者になると、彼の前に死神が現れ「名付け子としてお前に私たちの姿が見えるようにしてやろう。そして病人の頭上に私がいたらこの薬草を飲ませるとその者の命は助かる。ただし、もし私が足元にいたならばその命は頂くぞ」という忠言と共に薬草の束を渡して消えてしまった。息子はこの力と薬草によって一番の名医となり、たちまち金持ちになった。
そんな時、流行り病に伏した国王の治療を依頼する通達が届き、王宮に向かうと死神は王の足元に立っていた。正直に手遅れだと告げそうになった息子だったが、褒美の大金に目がくらんで枕を逆さまにする事で死神を騙し治療に成功した。死神は忌々しげに「二度目はないぞ」と言って去っていくが、後日今度は国王の姫君が同じ病に伏した。呼ばれた息子が見てみるとやはり足元に死神がいたが、治したら姫君との婚礼を約束する打算を受けたためにまたもや同じ事をして治してしまった。
死神もさすがに腹を立て、婚礼当日に息子を地獄の洞穴へと連れて行く。そこには人の命を表すたくさんのろうそくが並べ立てられていた。死神は今にも消えそうな弱々しい炎が灯ったろうそくを指さし「あれがお前の寿命だ、お前が命を無駄に長らえさせた分の寿命が縮まったのだ」と言い放った。息子は大きなろうそくに火を接ぎかえてくれと懇願し、死神はそれを了承して代わりを手渡すも、息子は緊張と恐怖から手が震えて上手くいかず、遂には不注意からろうそくの火を消してしまい、死神が嘲笑する中その場に斃れ死んでしまった。