概要
母親資本（ははおやしほん、ロシア語：Материнский капитал）は、ロシア連邦の政策。2人以上の子供を出産した親に対し、当時の平均年収の約2倍に相当する25万ルーブル（約110万円）を支給するという制度で、支給された資金を養育費・住宅の購入・年金の補充などに使用できる。
歴史
1991年12月にソ連が崩壊した後のロシアでは急激に人口が減少し続けており、2002年10月に実施された国勢調査では出生率が大幅に低下している状況が認識された。2006年5月にプーチン大統領は連邦議会での演説で「人口減少は国家危急の問題であり、国家の存続が脅かされている。それは愛と女性と家族に関わる問題だ。」と力説し、人口の増加を国家プロジェクトに指定した。
2007年1月から制度が実施され、2人目の子供を出産した母親を対象に25万ルーブル（当時のレートで約110万円）を教育費・住宅の取得と修繕費・母親が退職した後の年金加算などの形で国が支払う方針を発表し、児童手当の増額・母親が産休中の賃金保証なども含められた。2024年2月に制度が6年後まで延長されたが、これには6000億ルーブルが必要になるとの見解が示された。
システム
利用する権利
条件
以下の者は制度を受ける権利を有する。
- 2007年1月1日以降に2人目の子供を出産（または養子）にした女性
- 2007年1月1日以降に3人目またはそれ以上の子供を出産（または養子）し、それ以前に国家支援追加措置の権利を行使していない女性
- 2007年1月1日以降に養子縁組に関する裁判所の決定が有効になって2人以上の子供の養父となり、それ以前に国家支援追加措置の権利を行使していない男性のいずれかに当てはまるロシア連邦市民
その他の条件
以下の場合ではその女性の権利は停止され、子供の父親（養父）がその権利を得る。更にその人物の権利も同様の理由で停止された場合などは、子供自身がその権利を得る事になる。
- 1と2（前述の「条件」での項目内）に該当する女性が死亡する。
- 親権を剥奪される。
- 子どもに対して計画的な犯罪を実行する。
- 養子縁組が却下される。
手続き
手順
制度を利用するには以下の手順を実行する必要がある。
- 制度を利用する権利を保有している事に関する証明書の発行を受けた後に利用を申請する。
- 前項に記した条件に該当し、制度を受ける権利を有する者は、年金基金の地方支部に対して母親資本証明書の発行を申請する。
- 申請を受け付けた年金基金地方支部は、申請から1か月以内に証明書を交付する・申請を却下するのいずれかを決定し、決定から5日以内にその結果を申請者に通知する。
- 証明書を受け取った者は母親資本の利用を申請し、それを利用できるのは2人目またはそれ以上の子供が3歳になってからで、利用を申請できるのも子供が2歳6か月になってからである。そうするにはその年の下半期分は5月1日・上半期分は10月1日までにしなければならない。
証明書発行規則
証明書発行規則によれば、申請には身分と居住地を証明する文書・ロシア国民である事を確認する文書・子どもの出生（養子縁組）を証明する文書が必要である。父親・子供自身が国家支援追加措置を受ける場合には、そのような事由（母親の死亡など）を証明する文書も必要となる。
用途
- 居住条件の改善・子供の教育・母親の労働年金納付という3つの用途に限定される。
- ロシア国内にある住宅を購入（建設）する為に利用でき、資金の利用は国家支援追加措置の権利を取得する以前に交わされた契約についても認められ、購入した住宅は親・子供・その他の同居者の共有財産となる。
- 国内の教育施設で子供に教育を受けさせる為に利用でき、国立及び地方教育施設の有料教育サービス・正式に認可された私立の教育施設の教育サービス・教育に関するその他の支出に対する支払いが含まれ、制度を利用して教育を受ける子供の年齢は25歳を超えてはならない。
- 労働年金の積み立て部分の保険料を納付するのに利用できるが、これは国家支援追加措置を受ける権利を有する女性に限定される。
