概要
『逆転検事2』第3話『受け継がれし逆転』に登場。年齢38歳。
本作から18年前に発生した「IS-7号事件」の被害者。上記の年齢は享年でもある。天海一誠が自分の屋敷で開催したお菓子コンテストの参加者の一人で、美しい氷菓子の彫刻でコンテストの決勝戦にまで進んだのだが、そんな中で天海が作ったチョコレート菓子の一部である宝箱型の菓子の中から、撲殺死体となって発見され、容疑者として天海が逮捕される事となった。
この事件によって天海は有罪判決を受け、18年間も冤罪に苦しめられる事となる。
当時の担当弁護士である御剣信から、遺体が発見されていない可能性を指摘されていたものの、担当検事である狩魔豪によってその可能性は揉み消され、真相は有耶無耶にされてしまう。
しかしその18年後、当時の天海の屋敷を改装して緒屋敷司が開いた美術館の中央噴水から、突然遺体が上がってきて御剣怜侍達によって発見される(しかし、何故か遺体の状態は18年前と殆ど変わらない様だったが…)。
※この先、ネタバレがあります!
氷の如し男の功罪
彼の本当の正体は、フランスでポール・ホリックという名前で活動していた彫刻家である。
彫刻家としては世界的に有名な人物だったようだが、同時に非常に金にどん欲な人物としての悪評もあり、実際にお菓子コンテストに出場したのも、優勝商品である「究極のレシピ」を売って金に換える為である(一応は作品制作の為に、より多くの金が必要という事だったらしい)。
風見とは、息子同士が同じ小学校に通っている友達同士だった縁で面識があり、当時はまだデザインセンスが無かった風見と、自身は菓子職人ではないので技術が無い氷堂は裏で手を組み、コンテストでは風見が菓子の味付けを、氷堂がデザインを担当して互いの菓子を作っていた。
しかし決勝の直前になって氷堂は、レシピを自分一人で独占する為に風見を裏切り、彼の菓子の造形を拒否して彼が優勝するのを妨害しようとする。そしてさらに風見が味覚障害を患っていた事を知ると、それをネタに風見を脅迫して金を得る事まで画策する。
当然ながら風見とは激しい口論になり、彼に暴行まで加えた結果、風見から反撃を受けて殺害されたというのがIS-7号事件の真相である。
つまり纏めると、IS-7号事件の発端はクズ2人の下らない諍いだったのである。
この事件での犯人も被害者もクズで2人がお互いに足の引っ張り合いや争いをしていたという部分から、2の王都楼真悟と藤見野イサオの事件を思いだしたプレイヤーも居た模様。
さらに風見の優勝を妨害する為に、味覚障害の父親に代わって菓子の味見を担当していた彼の息子を、自分の息子を恐喝して無理矢理誘拐・拘束させており、その結果彼等は危うく凍死しかけたばかりか、何とか命は助かったものの、2人とも過去の記憶が曖昧な状態になってしまった(その後氷堂は殺され、犯人の風見は息子を捨てて国外逃亡した事から、彼等は天涯孤独になった)。
一応は殺人事件の被害者という立場の人物であり、芸術家としても素晴らしい才能の持ち主だったようだが、己の金銭欲の為なら平然と他人を利用して裏切り、挙句の果てには自分の子供に誘拐を強要するなど、コイツもコイツで1人の人間や人の親としては、どこまでも下劣で見下げ果てたクズである。
そもそも、彼が裏切りさえしなければ、作中での風見もクズ度合を暴走させることもなく、事件は起きなかった訳で、被害者であるのにもかかわらず、ある意味逆転裁判シリーズにおける諸悪の根源の1人とも言えるという逆転裁判でもレアな人物(仮にも被害者でここまで言われるキャラも珍しい)。
具体的には、まず氷堂に裏切られた風見は極度の人間不信に陥り、氷堂の命令で拉致されて凍死寸前となった風見の息子も、親友の氷堂の息子に裏切られたと考えた事を発端に、様々な紆余曲折を経て逆転検事2の一連の事件を引き起こす事となる。
そしてその後、彼は氷堂の息子を自分の計画の為に死に追いやっているので、結果的に自分の息子が殺される遠因も作った事になる。
そして氷堂の裏切りをきっかけに風見が起こしたIS-7号事件は、担当検事の狩魔豪と担当弁護士の御剣信との因縁を生み出し、後に多くの人物の運命を狂わせる「DL-6号事件」へと発展する事となる。このように、元を正せば全ては氷堂の裏切りから起こった悲劇なのである。
なお、記録上では氷堂の遺体は解剖に回されたが、実際は風見が周囲の目を盗んで氷堂の作った氷菓子の中に遺体を隠した上に、天海の助手の緒屋敷が「氷堂=ポール」の作品のファンで、そうとは知らずにその氷菓子像をコッソリ持ち出して冷凍庫に入れてしまった為に、実際に御剣信の推理通り遺体は発見されていなかった(ある人物の思惑で、当初は狩魔すらその事実を知らされてはいなかった)。その為に裁判では狩魔によって仕立てられた、偽物の解剖記録が提出されている。
そして18年後、氷菓子の中の氷堂の遺体に気付いて、それを利用して真犯人をあぶり出そうとした緒屋敷によって、中央噴水に遺体が入った菓子像が沈められて、水で解凍された氷堂の遺体が噴水から浮かび上がり、御剣怜侍らに発見されたという経緯である(遺体が18年経っても殆ど状態が変わっていなかったのは、図らずもずっと氷の中で冷凍保存されていたからである)。