概要
波号潜水艦とは大日本帝国海軍(以下日本海軍)が運用していた潜水艦の大分類における、基準排水量500トン未満の二等潜水艦・三等潜水艦のこと。
日本海軍は排水量別にランク分けし、排水量が大きい順に上からイロハでクラス分けした。
他、排水量1,000トン以上の潜水艦を伊号潜水艦、排水量500トン以上1,000トン未満の潜水艦は呂号潜水艦とされた。
アメリカ海軍や戦後の後継組織・海上自衛隊の潜水艦と違い、艦固有の名称は付与されず、ドイツ海軍の潜水艦同様番号で呼ばれている。
分類
波号潜水艦の代表的なものは、潜輸小型と潜高小型であるが、経緯別に分類してみる。
ただし、波号読みではないホランド型・ホランド改型・第七十一号艦も紹介するが、排水量から見て波号クラスの潜水艦なので、一緒に掲載する。
輸入組 「ホランド型」「ホランド改型」「C1型」「C2型」「C3型」「S型」
時は明治後期の日露戦争の頃、ロシアが潜水艦を所有しているという情報が入り、日本海軍は潜水艦を発注することになった。この事が日本海軍初の潜水艦所有するきっかけとなった。
日本海軍初の潜水艦として発注されたのは、当時各国で採用されていたアメリカ エレクトリック・ボート社のホランド級潜水艦で、日本ではホランド型潜水艦として導入された(ただし、導入当時は潜水艦ではなく潜水挺としていた)。 続いてホランド級潜水艦の製造権を取得すると、ホランド改型潜水艦を建造。 これが日本初の潜水艦建造となった。
ホランド系列の後に輸入されたのは、イギリス ヴィッカース社製のC1型潜水艦で、ホランド級潜水艦を参考に発展した潜水艦で、ホランド型に比べ性能も良くなっていた。 その後、船殻のみを日本で作ったC2型潜水艦とさらに強化したC3型潜水艦へと発展した。
また、フランス シュネデール社製のS型潜水艦も輸入。 この型は、複殻式船殻を採用しており、以降の日本海軍の伊号潜水艦にも複殻式船殻が採用された。
C3型潜水艦の波号第八潜水艦建造後、波号潜水艦はしばらく建造されなかった。
日本初設計潜水艦 「川崎型」
波号潜水艦を輸入していた頃、C1型潜水艦、C2型潜水艦の比較研究のために 日本が初めて設計した潜水艦が川崎型潜水艦であった。
結果は、速力・航続力などで劣っていることが分かり、しばらくは、海外から輸入した潜水艦研究することとなった。
実験潜水艦 「仮称第七十一号艦」
1938年竣工の仮称第七十一号艦は、離島防御用の潜水艦として試作された。
海上公試では、当初搭載する予定だった主機が輸入できなかったため、性能が低い国産品で代用したため、予定していた速力を出せなかった。
しかし、従来の諸外国の潜水艦の速力を基準としてみると、圧倒的に速く、決して悪い性能ではなかった。
実験が何度も行われ、日本に水中高速航走に関する貴重な経験資料となり、設計は後に作られる潜高型・潜高小型の設計に生かされることとなった。
戦時急造組 「潜輸小型」「潜高小型」
波号潜水艦が再び竣工したのは、波号第八潜水艦の竣工した1917年から25年以上たった第二次世界大戦終盤の1944年のことであった。
先に竣工したのは潜輸小型であった。武装は機銃のみで、近海での輸送任務・哨戒任務・蛟龍母艦に使用された。
遅れて1945年潜高小型が竣工。上記の実験潜水艦でも述べた通り、仮称第七十一号艦の設計を生かして作られた、量産が効く小型な水中高速性能を重視した潜水艦であった。