概要
狐女房とは、狐が人間に化けて、人間の男と結婚する説話全般を指す言葉。
日本霊異記の「狐を妻として子を生ましめる縁(はなし)」や「葛の葉」などが有名。
また中国においても「聊斎志異」を初めとした伝奇小説集に類話が複数収録されており、この手の話は東アジア全体でよく見られる。
「狐女房」とよばれる説話
狐を妻として子を生ましめる縁 (日本霊異記)
男が美女に出会い、結ばれて子をなすが、美女は狐の化けた姿で、犬に正体を悟られて去ってしまう。
しかし男は狐に「私たちは子まで成した仲ではないか。おまえを忘れることなどできない。せめて毎夜家に帰ってきて一緒に休んでくれないか」と呼びかける。(この台詞の「帰ってきて一緒に休もう」が原文では「来つ寝む」であることから「きつねむ」→「キツネ」→「狐」となったという説もある)
狐はそれを承諾し、夜毎夫の元を訪れた。しかしあるときを境に狐は夫の元を去り、二度と帰っては来なかった。
葛の葉 / 信田妻 / 信太妻
摂津国に住む安倍保名(あべのやすな)は信太の森を訪れた際、狩人に追われていた狐を助けるが、深い傷を負ってしまう。傷を負ってたどり着いた谷川で、保名は「葛の葉」という名の美しい少女と出会う。葛の葉は保名を自分の家に招き、かいがいしく看病する。やがて2人は恋仲となって結婚し、童子丸という子供が生まれた。
しかし童子丸が7歳のとき、葛の葉の正体が保名に助けられた狐であることが知れてしまい、葛の葉は信太の森へと帰ってゆく。保名は、童子丸とともに葛の葉に会いに行き、戻ってきてほしいと訴える。しかし葛の葉は「一緒にいたいけれど、もう人間の世界には戻れない」といい、白い玉と黄金の箱を保名に渡した。
2人の息子の童子丸は非常に賢く、さまざまな学問を修め、13歳の頃にはすっかり立派な学者となっていた。あるとき童子丸は、母が授けた宝の力で天皇の病気を治す。そしてその功績により「晴明」という名を与えられ、陰陽頭に取り立てられた。(→安倍晴明)
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