私の家は、武功を立てたご先祖様が、国王様より与えられた広い土地の領主だ。
ご先祖様が立てた功績で頂いた土地。しかし、全ての領主がよき治世を以って、領地を、領民を潤わせたりはしなかった。特に私の祖父と父は酷かった。自分達の贅沢の為に、領民から搾り取り、豊かだった領地は見る見るやせ細っていった。
当然領民からは不満が溢れだした。けれど祖父と父は、不満を、当然の言い分を申し立てた領民を処断し、恐怖で領地を支配した。
私の家は、血も涙もない業突く張りの鬼畜生と呼ばれていた。
だから、この結果は当然の末路だ。
概要
小説投稿サイト『小説家になろう』で守野伊音氏により連載されているウェブ小説作品。
カドカワBOOKSより書籍化、B's-LOG COMICよりコミカライズされている。
圧政を敷いていた領主の一人娘と、従者であり間者でもあった少年との悲恋の、その後を描いた恋物語。
登場人物らの感情が生々しく鮮明に表現されており、お互いがお互いを想った上でのすれ違いがつぶさに描かれている他、フィクション作品では単純な悪と正義として描かれがちである貴族や領民の様々な立場から見た姿が描写されている。
あらすじ
孤児院で生活する少女シャーリーは、自身の前世である、自らの贅沢の為に悪逆の限りを尽くし最期には処刑された、前領主一家の一人娘の記憶を持っていた。
二度目の生を贖罪のために生きようとしていた矢先、かつての想い人であり自身を処刑した現領主の元で、メイドとして働くことになる。
登場人物
- シャーリー・ヒンス
本作の主人公。孤児院出身の女性。
陰気で病的なまでに痩せぎすながら、しかし整った容姿と優れた教養を持つため、養子あるいは婚約者にしたいという申し出が後を絶たないものの、本人は修道女になることを望んでおり、全て断っていた。
前世である前領主の一人娘の記憶を持っている。
前領主は圧政を敷き領民をひどく弾圧していたことから革命が起き、一族郎党殺されている。
一人娘である彼女は生きて捕えられたものの、死ぬことこそが自身の務めだと考え、進んで嘘の自白を行い処刑される。
領民や恋人でありながら正体は間者であったカイドのことを恨んではおらず、むしろ無知であった自身のことを責め続け、第二の生は贖罪のために生きようと考えている。
元は天真爛漫で優しい性格であり、『宝花』に例えられるほど可憐な容姿の持ち主であった。
それ故に前領主の所業を許すことはできなくても、彼女個人を想い慕っている人物は多い。
- カイド・ファルア
本作のもう一人の主人公。ライウス領の現領主。
領民のために精力的に働いており、前領主の圧政により没落寸前のライウス領を盛り上げ、かつての隆盛を取り戻さんとしていることから領民の支持も厚く、市井では「ライウスの英雄」と呼ばれているが、一方で他の貴族らからは王家の血を引く前領主の家族を一人残さず殺し、さらには彼らと関係を持っていた者らさえも粛清したことから「狼領主」「王家殺し」と渾名されている。
少年の頃はヘルトと名乗っており、前領主の館で執事として働きつつ革命に必要な情報を集める間者として動いていたが、その一人娘と恋に落ちる。
革命後には彼女の命を救おうと尽力していたが叶わず処刑されたことに強い罪悪感を抱いており、自分の残りの人生の全てを領民の幸せとライウス領の発展に捧げることを決意している。
- イザドル・ナヴァロ
ライウス領の隣領ギミー領の嫡男。カイドの親友。
浮いた話の多い稀代のプレイボーイだが独身。
自分のことを二の次にして領民に尽くすカイドのことを心配しており、逆に彼を英雄に仕立て上げ、全ての責務を押し付けている領民らに憎悪を抱いている。
関連タグ
ティアムーン帝国物語:処刑された帝国の皇女である主人公がやり直しをする作品。