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痛くなければ覚えませぬ

いたくなければおぼえませぬ

南條範夫の小説『駿府城御前試合』及びそれを原作とする山口貴由の漫画『シグルイ』の登場人物「藤木源之助」の台詞の一つ。
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内容編集

門弟達「藤木師範代の鍔迫り…」

   「あれは辛い」

   「参ったを言わせてくれぬ…」

組み伏せられた門弟「ま…が…」

牛股「それまで!」

牛股「藤木、もう少しこう何というか、手心というか…」

藤木「牛股師範…、痛くなければ覚えませぬ


解説編集

物語冒頭の駿府城御前試合から遡ること7年前、虎眼流が、掛川宿の強豪剣術道場として、東海道筋に名を馳せていた頃のこと。

虎眼流道場の師範代・藤木源之助が、門弟の一人に稽古をつけているシーンである。


藤木はその並外れた腕力で、鍔迫り合いの状態から相手を力任せに押し倒し、さらに仰向けに倒れた喉元に容赦なく木刀を押し付けて喉を絞め上げる得意技「鍔迫り(つばぜり)」を繰り出していた。

組み伏せられた門弟は呼吸もままならず、「参った」すら言わせてもらえない。藤木からすれば、苦しければ死に者狂いの力を発揮して木刀を押し返してみせろ、といったところであろう。

しかし、この弟子にそこまでの力量はなく、このままでは絞め落とされることは明らかであった。


見かねた師範の牛股権左衛門は「それまで!」と止めに入り、藤木に対して微笑みながら何とも言いづらそうに「もう少しこう何というか、手心というか…」とたしなめる。

藤木の厳しい指導は真剣に取り組んでいるがこそであることは、牛股も分かってはいるのである。しかし、まるで未熟な弟子に対しては、その力量に応じて多少の手加減くらいはしてやってもよかろう、と。


それに対する藤木の応答が「痛くなければ覚えませぬ」である。

痛み苦しみを伴う厳しい稽古でなければ、剣の腕は伸びない、と言うのである。


自らも人並み外れた厳しい修行を乗り越えて師範の座にありながらも、同門に対しては優しさも見せる牛股と、ひたすらに剣の道にストイックな藤木。2人の考えが好対照なシーンである。


ネット用語として編集

この「もう少しこう何というか、手心というか…」「痛くなければ覚えませぬ」のやり取りは、ネット用語としても使われる。

  • 例えばネット上の議論において、相手を厳しく論破・誤りを指摘した知人に対して、「あなたが間違いなく正しいけど、相手さんは詳しくないんだから手加減してやりなよ」的な意味合いで「もう少しこう何というか、手心というか…」と止めに入ったりする。(ただし、元が漫画なだけに、知り合いでもない人にいきなり使ったりすると「漫画のセリフで横槍を入れられ煽られた」と取られかねない点は注意。)
  • また格ゲーFPSTCGなどの対戦型ゲームにおいて、熟練者が初級者に対して(初心者狩りではない)相手を伸ばすための指導戦を行う場合、どのくらいの本気度で戦ってやるべきか?……というのも、プレイヤー毎に考えの分かれるところであろう。相手に応じて少しは攻撃の手を緩めてあげなよ、と考える場合は「もう少しこう何というか、手心というか…」、実戦的なムーブを経験しておかなければ結局野良で対戦ができるまでに育たないだろ、と考える場合は「痛くなければ覚えませぬ」、ということになる。

なお、同じく『シグルイ』発祥の類義語に「加減しろ莫迦!」がある。


関連項目編集

シグルイ 藤木源之助 牛股権左衛門 手加減

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