「隻狼よ、迷えば敗れるぞ…」
概要
CV.金尾哲夫
戦国末期の日本をモデルにした架空の国、葦名の国の国主。
わずか一代で葦名を国盗りの戦で手に入れ、葦名家を興した隻眼の老人。『剣聖』の名で呼ばれ恐れられ、そして他国にも名を轟かす歴戦の剣士。
隻腕になった主人公を唯一「隻狼」と呼ぶ人物でもある。「迷えば敗れる」という彼の発言は、あらゆる意味で作品を象徴している。
人物
豪放磊落な性格かつ酒豪、特にどぶろくを好んでおりエマや仏師など、それを知っている者は多い。
一言で言えば、稀代の傑物。
国盗り以前から強さに貪欲で、若い頃からあらゆる死闘を重ねて高みを目指し続けており、いわゆる戦闘狂である。また、その強さを葦名の武人達に生かすため、自身の剣術を『葦名流』と名付けて伝承し始めており、単なる戦闘狂ではなく、武道家としても優れた一面がある。
武将としては、かつて賊の頭目だった刑部を打ち倒し、賊党ごと召抱えるなど、度量が広く、数多くの人から慕われている。薬師のエマをはじめ、彼の配下は圧倒的劣勢な戦況でも、命をかけて彼に忠誠を尽くす様子を見せるなど、部下から深く信頼されている。また、身内に対する情愛も深く、直接の血縁ではない弦一郎を孫として育て、彼を後継者としており、弦一郎の計画に反対してはいるが、彼の葦名を思う覚悟自体は認めている。さしたる付き合いのなかった狼に対しても、酒を飲みがてら自身の過去を語ったり、不思議と憎めない奴と発言するなど、本質的には愛情深い人間。
その一方で、怪しげな研究を行い、腹に一物を持った仙峯寺の僧侶を相手に長年にかけて渡り合ったり、彼らの手足であるらっぱ衆の動きを把握するなど、情報戦にも長けており、必要とあれば信頼する部下であっても斬る事のできる非情さも併せ持つ。また、葦名の土地の文化や歴史を深く理解しており、物語における重要な情報を握っているなど、武力一辺倒の人間ではない。
葦名の国が斜陽にある中でも、内府軍は彼が死の淵に立ったと知ってようやく侵攻を始めるなど、そのカリスマ性は葦名と言う国の要であり、戦国の世の英雄を具現化したキャラクターと言える。
来歴
古くから独自の信仰を待ちながらも、長年服従を続けた葦名衆の生まれ。ある時に世の乱れに乗じ、一心は葦名衆を率いて国盗り戦をしかけ、最も信を置く七人の侍たちに槍を授けて主戦力とした。多くの犠牲を出したものの自ら敵将の田村主膳と相対し、ついに討ち取った。この時に刑部の槍が折れており、戦後に「見事な折れぶりよ」と褒め称え、田村の槍を下賜している。
その後は葦名衆全員で酒盛りの場をもうけ、酒の席には梟、お蝶、刑部、道玄なども参加していた。
その後、母が死去した弦一郎を孫として引き取り、教育係に刑部を選任している。
その後に弦一郎の剣の師である巴と一戦交えた際は、その姿に見惚れながらも勝利。仏師が修羅に飲まれた際はその左腕を斬って鎮めたり……と、活躍は絶えなかった。
ある時から病を患っており、本編開始時ではエマから「命を保っているのが不思議」と言われるまでに悪化、衰弱しており葦名本城の離れで静養している。
しかし時折看病にくるエマの目を盗み、葦名に入り込んだ仙峯寺や内府方の忍びを天狗に扮して斬りに行ったり、葦名城内の道場にふらりと立ち寄っては侍達をのしてゆくなど強さの熱は冷めやらず、その凄まじい精神力を以って刀を振り続けている。
主治医であるエマもそれを察しているようで、叱責しつつも自らの目的のために一心から剣術を教わっている。
*以下、ゲーム内容のネタバレを含む*
物語での関わり
ある種、この作品におけるもう一人の主人公とも言える立場にある存在。
直接的に彼の物語が語られることは少ないものの、物語は彼の国盗りから始まり、最終的には彼の死を以て幕引きとなる。ある意味では、SEKIROは彼の立志伝とも言える。
また、葦名で起こる様々な事柄に関わり、物語において重要な情報を知り、狼にそれらの情報を教える。
特に不死斬りに関しては赤と黒の二振りあることまで知っており、国盗り戦では黒の不死斬りらしき刀を振るい、仙峯寺に赤の不死斬りが納められていることまで知っており、『SEKIRO』という物語の根幹を成すキーパーソンである。
元々、古い土地である葦名の水を祀る一族の出として生まれ、葦名に伝わる数々の不思議な力について知悉しているが、それ故にどれも人間の手に負えるものではなく、理を歪める危険を孕んでいることを深く理解している。
その一つが人間を不死に変える能力を持つ竜胤の御子であり、一心が病床にある間、孫の弦一郎が葦名家を統率し、敵を退けるために異端の力を利用しようと計画して、今代の竜胤の御子である九郎に協力を強要するも、九郎が竜胤の力を危険視し、使うべきではないと考えていたように、一心自身も竜胤を危険視し、九郎を救出しようとしている御子の忍、狼(隻狼)を秘密裏に葦名城内へ手引きして弦一郎を妨害させる。
また、竜胤とは別の不穏分子である修羅についても知っており、かつて修羅に落ちかけた者を斬った事があり、その者と同様の雰囲気を持つ狼もまた危険視するなど、思慮深く、冷徹な姿勢を持って事件の顛末に当たっている。
その一方で、より直接的に九郎を助けて弦一郎の動きを妨害することはせず、最終的には弦一郎の遺志を汲んで狼と相対することになる。また、弦一郎は後々にどこからか黒の不死斬りを得ているが、黒の不死斬りについて記された資料が一心の居室の近くにあり、一心が弦一郎に黒の不死斬りのありかを密かに教えた可能性がある。これらのことから、一心が弦一郎の愛国心への理解と、竜胤の力への危機感との間で揺れ動いている素振りが垣間見える。狼に「迷えば敗れる」という薫陶を授けた一心だが、自身もまた迷いを抱えていた。
戦闘
SEKIROにおいて、全てのエンディングルートのラスボスとしてプレイヤーに立ちはだかる。
その際。ルートによって二種類の形態が存在しており、病により死の間際にある葦名一心と、全盛の力を取り戻した『剣聖』としての葦名一心の二種類が存在する。
葦名一心
再び、修羅を…斬る事になろうとはなぁっ!
修羅の道を路を行く狼の前に見せる姿。
老境となった一心はさらに病に冒され、既に最盛だった頃の力を発揮することは出来ないものの、葦名流をなすうち剣の心技を極め、技は研ぎ澄まされている。
かつて修羅を斬った一心に、修羅と化した狼の呀が通るかはプレイヤー次第である。
武器
- 打刀
一心が愛用する打刀。密かに外敵を斬る際はこれを帯刀する。
色褪せへたった黒鮫赤革捻巻柄に木瓜型葦彫小透し鍔、刀身は板目肌のような地鉄模様が刃全体に広がった独特な造りになっており、赤黒蛭巻鞘には大名結びの亀甲下げ緒が付いている。
一心が静養している離れの櫓にある刀掛けに掛けてあるのは朱漆金蛭巻大小で、この刀ではない。
技
- 葦名流
宗家は葦名一心。戦に勝つことを至上とした彼の戦いの全てを『葦名流』として纏め、伝えた流派。
正眼構えを基本とし、源の水の流れの如く力強く実直な太刀筋が特徴の剣術で、一対一以外にも多勢との戦いにも備えがある。
命の鍔際に立つことで剣技を磨いた一心だが、その勢いは止まることを知らず、伝書は生涯未完となっている。
しかし真髄は他のあらゆる技を飲み込み絶えず変化してゆく『葦名無心流』にあり、相対した相手の様々な武器や技をこの流派として扱うことができる。
- 通常攻撃
一心が片手で繰り出す袈裟斬り→左薙ぎ→斬り上げの3回攻撃。
振りが異様に速いのに対し繰り出すテンポは遅めで、見た目以上に攻撃タイミングが読みづらい。
- 踏み込み斬り
中距離から一気に間合いを詰めて放つ一撃。
技の始めや回復を狩ろうとしてくる。
- 去なし
こちらの攻撃をかわして回転斬りや掴みで反撃する。
考えなしに一心に斬りかかるとかわされるので注意。
- 下段
納刀してから足元を斬り払う下段攻撃。
下段は2種類存在し、下段が来るかどうかの見極め方はいくつかあるが基本的に一心が納刀した際は警戒すると良い。
- 突き
突きも2種類あり、掌底とセットになった技、もう1つの技は突き自体の出は速いが攻撃前に不自然に移動する。
- 掴み
相手に四方投げを放ち地面へ叩き付ける葦名流の柔術。
攻撃を去なされた瞬間など密着状態だと即座に納刀し掴んでくる。投げた後は葦名十文字で追い討ちをかけてくる。
- 一文字
正眼構えからの素早い面打。
斬り抜けの直後に正眼の構えの一心に近付くと放ってくる。構えはステップでキャンセルすることが多い。
- 専心一文字/一文字・二連
大上段に構えてからの強烈無比な面打。
専心一文字後の追い一文字はディレイを掛けることができる。
威力もさることながら2発受ければ体幹ダメージもかなりのものだが、一文字を弾けば追い一文字は放ってこない。
威力を重視しているためか流派技と違い体幹回復効果は無い。
- 奥技・葦名十文字
納刀の構えから高速の居合を繰り出す。
かつて修羅の腕を落としたとされる葦名流の奥義。十文字が使える相手の中では弾きのタイミングが最も遅い、構えている一心に近付くと斬り上げ→下段の迎撃技になる。
- 秘伝・一心
納刀の構えから見えぬほどの速さの連撃を繰り出す。
唸りと共に刀を振り、周囲から炎を噴出させ納刀しながら接近し、神速の連撃で敵を斬り刻んだ後、居合いの追撃を放つ大技。
最後の居合いを弾いて初めて隙ができる。
- 放ち斬り(炎上)
地面を踏んで巻き上げた炎を刀で飛ばす。
炎は地を這って真っ直ぐ遠くまで飛んで行く、炎上状態になりやすい。
- 一文字(炎上)
一文字を放ちながら地を踏み、吹き上がった炎を刀に乗せて前方に斬り放つ。
一文字を弾いてしまうと後の斬撃をかわしにくくなる。
- 下段放ち斬り(炎上)
一心の背後を取ると、背後に対して炎を伴う下段斬りを放つ。
剣聖 葦名一心
憐れな孫の・・・最後の願いじゃ。
儂はこの葦名を、黄泉帰らせねばならぬ。
物語の最後に、竜胤の御子と共にこの世から不死を消す為に戦う狼の前に現れる姿。
不死斬りのもう一振り「開門」を手にした弦一郎の願いにより、葦名の黄泉帰りを果たす為、剣聖 葦名一心として狼の前に立ちはだかる。開門の力によって全盛期の姿で蘇っており、更に不死と化している。
武器
- 黒の不死斬り
狼が手にする赤の不死斬りと対をなす『開門』の銘が付いた大太刀
金鮫白糸平巻の柄に、蓮の花型の鍔が付いた、日本刀としては非常に珍しい両刃造り。鞘は黒の蛭巻。
死なぬ者さえ殺す力の他に、条件を満たせば死んだ者を黄泉帰らせる力がある。
- 片鎌十文字槍
国盗り戦で田村主膳が持っていた槍。
一心を一度忍殺すると地面から取り出し、以降は槍と不死斬りの二刀流となる。
- 短筒
一心が懐に隠し持っている銃。
一心を一度忍殺すると使い始める。戦国時代の一般的な銃と異なり連射が可能。
技
- 通常攻撃(二刀流)
素早い刀とゆっくりな槍のいずれかで始まり、連続攻撃中に振る武器を自由に変化させる。いずれもタイミングが読みにくいので弾きがしづらい。
弾くとすぐに攻撃が止まり、他のあらゆる技に繋がる。
- 銃撃
中距離や遠方からの短銃身の鉄砲による銃撃。
走りながらや跳び退きながらの槍攻撃の後に4発、槍を弾いた際にも4発、ジャンプ槍叩き付けを弾くと高威力の1発を撃ってくるなどバリエーション豊富。
- 乱舞攻撃
出し始めると弾いても止まらない連続攻撃。出しきりだと刀攻撃2発、槍攻撃4発、突きの引き込みを入れて攻撃の計8回の攻撃。槍攻撃2発目で中断でき、抜刀斬り払いに移行することもある。
- 下段
下段を槍で凪ぎ払う。
槍を弾いた時や銃撃後に繰り出すが、頻度が少ないので突きと間違えないように。
- 突き→引き込み
正面に突きを放つ。
連続攻撃後または弾いた際などに突いてくる。突いた槍を引き込むこともでき、引き込み中の槍に当たると引き寄せられ、刀での近接攻撃に持ち込まれる。
突きを見切れば、引き込みは出せない。
確定で突いてくる流れは複数あるので覚えておくと見切りの準備(心づもり)はしやすくなる。
- 一文字・二連
上段からの渾身の面打。
打つ際に1回斬ってから放ちディレイはかけられない。
片手で放つ事になるが威力は十分。流派技と違い体幹回復効果は無い。
威力もさることながら2発受ければ体幹ダメージもかなりのもの。弾いても竜閃は出せない。
- 秘伝・竜閃
刃を抜き放ち真空波を伴う斬り下ろしを放ち、その後に遅れて地を這う衝撃波が飛ぶ桜竜を想起させる大技。
弾きでないと防御を貫通する。縦斬りの為かわしやすくはあるが衝撃波にも注意。
- 抜刀斬り払い(秘伝・竜閃)
刃を抜き放ち真空波を伴った斬撃で周囲を高速で斬り払う。
全方位かつ広範囲攻撃の上、下段のように見えるがジャンプではかわせず弾きでないと防御を貫通する。
- 二連斬り(秘伝・竜閃)
刀に力を溜め、2発の斬撃を飛ばす大技。
納刀せずに2発の刃を飛ばすこの技は、もはや極限の領域に達している。
- 纏い斬り(打雷)
跳び上がり武器に雷を落として着地と共に雷撃を放つ大技。特定の手順で雷を返す事ができ、当たれば大きなチャンスとなる
見事、血戦を征した先に待ち受ける結末は、プレイヤーの判断に委ねられる…
心中の葦名一心
発売から一年が経つ2020年10月29日。SEKIROのVer.1.05無料アップデートが実施され、過去のボスと記憶の中で再戦・連戦できる要素が新たに増え、連戦・不死断ちのすすき野原にて様々な技を習得した心中の葦名一心が登場する。
解放すれば連戦でなくても再戦できるようになる。
- 通常攻撃
通常の一心よりも大技の頻度が減少。
- 下段攻撃
斬り合いに差し込むように使用してくる。
通常の一心と同じ感覚で戦っていると引っ掛かるだろう。
- 一文字・二連
弾いても竜閃に派生しなくなった。
- 奥技・葦名十文字
距離が遠いと、更に距離を詰めてから放つようになった。そのため直線的にダッシュして距離を離していても追いつかれてしまうが、一心の周囲を円を描くようにダッシュすれば避けることができる。
- 抜刀斬り払い(秘伝・不死斬り)
竜閃と差し替わる形で使用する大技。
黒の不死斬りを納刀し念を込めた後、一気に抜き放ち周囲を斬り払う。一心周囲を第一波が、一拍置いて第二波がさらに外縁を薙ぎ払う。
怨霊耐性のあるもので防御しなければたとえ弾いても貫通ダメージを受ける。また、下手に第一波を弾いて凌ごうとすると極大のノックバックで第二波の範囲内に弾き出され、先述の削りダメージと合わせて難易度と身体力によっては即死が確定する。
初見では面食らうこと必至だが、対処法としては霧がらすの無敵で凌ぐ、鳳凰の紫紺傘で弾く、爆竹で発動自体を阻止するといったものがある。
第2段階でもごく稀に使用する。
- 剣槍三連撃(下段+突き/秘伝・竜閃)
不死斬りを掲げて猛進し刀で下段を放ち、さらに槍を振り上げながら跳び上がり、とどめに突きまたは縦方向の溜め薙ぎ竜閃を放つ。
初撃の下段をジャンプでかわしても槍の振り上げで叩き落とされる。それを空中弾きした後も、最後の派生をしっかり見極めなければ痛手を負うことになるだろう。
バックジャンプで下段が届かない位置まで離れれば比較的安全に対処できるが、やはり三撃目には気を付けなければならない。
ただでさえ難敵中の難敵であるラスボスの強化版だけあって苦戦は必至である。しかし、他の強化ボスとは異なり技を追加しただけで既存のセオリーが十分通用するため、「強化ボスの中では一番戦いやすい」などの声も上がっている。
黄泉帰りは、その者の全盛の形を取る
即ち、死闘を重ね、貪欲に強さを求め
あらゆる技を飲み込もうとした一心だ
一心は最期まで死闘を求め、それは叶った
~戦いの残滓・剣聖葦名一心~
余談
・重要な書物である「黒の巻き物」が自身の部屋近くにあったりもするが、本人から核心たる言葉は一つも得られない。
・腹部に背中に達するほどの横一文字の大きな切腹痕がある。全盛期からある傷だが詳細は不明。