「……くそったれ」
「一体どれだけ自分の弟子を手に掛け続けなくちゃいけないんだ」
概要
代葉と同じ藤乃家の陰陽師で、彼女の師範でもある男。
藤乃家の人間だけでなく、派遣指導員として多くの弟子を持つため顔が広い。周防七咲の先生でもあり「双師匠」と呼ばれている。
その正体は陰陽寮最高戦力の討伐隊で元隊長を務めた実力者。藤乃家では当主に続くNo.2の実力者。
すなわち現状最強の陰陽師。
同時に、藤乃家の使命を果たせなかった者を粛清する執行者を担う。たとえ標的が、自身が育てた弟子だったとしても。
人物
普段はどこにでもいるような草臥れた壮年といった感じで、疲れた顔をしている。
外見は短く刈り上げた髪に筋骨隆々とした肉体を持つ巨漢、物腰が柔らかく誰に対しても丁寧に接する性格の持ち主で、七咲が師匠として慕うのも納得できる男性。
学郎と似た黒い痣が、頭部の左側から左目の下にかけて存在する。
こんな人間が藤乃家の執行者という事に疑問を覚えるが、彼は私情と役目を分けて行える仕事人。
決して情や罪悪感が無い訳ではないが、それとは別に藤乃家の命ならば人を殺す事は躊躇わない。たとえ相手が、自分の教え子だとしても。
……しかし、鵺との戦闘に臨むに当たっての対応等から、遂行不可能な任務には失敗の責任追及が自分だけで済むように掩護を拒んだりしている。
また、教育者としての並外れた情熱があるのか、抹殺対象であるはずの学郎がたった数日で驚異的な成長を見せると「相当な育て代がある」と密かに興奮するやあっさりと彼の師匠ポジションになり鍛え始めている(ただし、指導内容や姿勢は凄まじくスパルタで、指導相手に妥協や甘えを一切許さない)。
さあ仕事だ
情も罪悪感も全て後回し
行こう
能力
最高戦力と呼ばれるに相応しく、後に様々な討伐隊隊長の戦闘能力が披露されるのに比較して基礎戦闘力以外は開示される機会に恵まれないにも係わらず彼等に見劣りしない実力を見せる程。
代葉や狂骨にも破れない強度を誇る鵺の結界を破壊し、分体とはいえ最強レベルの鵺を相手にたった一人で真正面から相手取れる。
モチベーションはパフォーマンスに直結しないという本人の言の通り、どんな精神状態にもかかわらず実力を発揮できる。
盡器
詳細不明。
外観は手首から紐でぶら下げた小刀。
これを巧みに操り、広範囲に斬撃を雨のように激しく振るって鵺の盡器による高速の攻撃と正面から渡り合い、その威力は遠くで観戦していた学郎たちにまで風圧として届かせた。
盡器の威力は、後の修行時にてただの一撃で学郎の盡器を容易く破壊しながらも「まだまだ威力は上げられる」と最大威力の桁違いさを窺わせる。
霊殻纏装
盡器を極限まで鍛えた者が到達する霊衣の最終形態。
才人のみにしか獲得し得ないとされるが、双斧も霊殻になる事が可能。鵺戦の際は後述の式神に令力の大半を注いでいたのでなれなかったが、学郎との修行で披露した。
外観は顔の左を覆う刺々しいデザインの仮面と甲冑。
強度は学郎の渾身の柱刀骸街(ゼノブレード)を至近距離で受けても直撃箇所が僅かに欠けるのみ。
爛匣11番 第1第2第3拘束霊鎖解放 式号「倉尖隧(くらのさきみち)」
現状陰陽寮で三人しか使役できない最上級「爛匣」の式神の内の一体で、その姿は禍々しい獣のような巨大な何か。召喚時の衝撃波だけで鵺の盡器を破壊するほどの顕圧と、ただそこに在るだけで地面を溶かす自然災害じみた生態を持つ。
式神の影響範囲を示す弋暈も広く、学郎達がいる旧校舎どころか敷地全てを呑み込めるほど。
32番肋
詳細不明。「倉尖隧」の弋暈の影から学郎達を守るために張った鵺の結界を容易く破壊している。
作中の動向
代葉が学郎との決闘に敗北して鵺との契約が白紙になったのを観測していた藤乃家当主から、代葉回収(死体でも可)の任務に指名される。
代葉の任務失敗に驚き、また教え子への非情な対応に愚痴を言いつつも行動し、代葉を介した観測データの情報や自ら七咲等に聴き込みを行って綿密に情報収集し、学校へと単身で襲撃を仕掛けた。
鵺(分体)と正面から盡器の手練だけで渡り合い、切り札の式神を顕現させてあと一歩まで追い込むが、鵺が展開した想定以上の力によって圧倒されて敗北。元から任務には失敗するが後続の為に情報を引き出すつもりも含んでの戦闘だったが、これも失敗する。
その後は式神顕現の後遺症で一月は戦えない状態となり、鵺達の仲間……という名の捕虜として加わり、以降は鵺の隔離空間で生活。
それから暫く出番は無かったが、美執村での一件で大幅な強化を余儀なくされた学郎の修行相手として再登場。鵺の空間によって十全に力が引き出せる状態となり、激しい指導に見せかけあわよくば学郎を殺害、脅かして鵺の動きを探るつもりだった。……が、戦闘不能にするつもりで放った一撃を凌ぐ学郎の思わぬ成長ぶりに己の指導者気質な部分を強く刺激され、ウキウキで指導開始。
後にレベル4の襲撃時にて、やはり空間外では力が使えないので非戦闘員として待機し、エネルギー不足で倒れていた鵺を四衲や土岡さんと共に介抱した。