「人と幻妖 異形の交わりが道を拓く——」
概要
『週刊少年ジャンプ』2023年24号から連載されている漫画作品。
作者は川江康太。
『週刊少年ジャンプ』2022年15号に掲載されていた「鵺ん家」(鵺の陰陽師の読み切り版)がベースになっているが、この他にも「サモンズR(ジャンプ2022年9月号)」や「瑕疵陰陽大戦(ジャンプGIGA2020autumn)」などの読切の要素も一部で見られるため、複合化されているのだと思われる。
あらすじ
篝弥市の北高に入学した気弱な少年・夜島学郎は、幻妖と呼ばれるこの世ならざる存在が見えていた。
ある日、いきなり幻妖に襲われたところを謎の美女・鵺に助けられる。普通の人間のように見える彼女の正体はなんと幻妖で、この学校に封印されているのだと言う。
そんな鵺から「この学校に集まる幻妖を倒してほしい」と頼まれるも、目の前で父親が幻妖に殺された過去がトラウマとなっている学郎はそれを断った。
教室に戻れば、何故かクラスメイトの膳野がいじめっ子の願瀬に下着一枚でボコボコにされていた。どこか様子がおかしい願瀬の矛先が学郎に向かれた瞬間、人型の幻妖が教室に現れる。
突然の出来事に混乱し、逃げ惑ういじめっ子達。その一人に幻妖の魔の手が伸びる。学郎は止めようとするも、体が震えて動かない。
しかし、殺されようとしたいじめっ子を助けたのは、なんと先程まで倒れていた膳野であった。
彼は「俺が囮になるから逃げろ」と告げ、一人単身で人型の幻妖に立ち向かう。その背中に、勇気に、死に際の父から残された最期の言葉を思い出した学郎は、今度こそ誰かを助けるために踏み出す。
膳野を庇い、負傷する学郎。すっかり血まみれとなる二人に、容赦なく追撃する幻妖の凶刃。
それを阻止したのは、同じ幻妖の美女・鵺だった。彼らの勇気を見ていた彼女は、微笑みを浮かべて学郎に問う。
安全か、力か。
少年は迷わず答える。
「俺に力を下さい」
「俺が あいつを倒します!」
こうして力を手に入れた学郎は、教室ごと人型の幻妖を一刀両断する。
そしてこの日を境に、夜島学郎の学園生活は一変していく。
少年は踏み出した。
鵺と共に。
作風
本作の主人公学郎と彼が通う学校に現れる幻妖との戦いを描いた『退幻学園バトルファンタジー』
……との触れ込みだったのだが連載が始まるやいなや、主人公やいじめっ子のために自ら囮を引き受けるという熱い性格を持ったパンツ一丁の友達、事情は分からないけど「なんかおもれーじゃん」で一致団結して教師を壁に押し込むクラスメイト達など、どこか様子がおかしい展開で読者を(困惑させつつ)惹き付けた。
しかしギャグ路線の漫画という訳でもなく、学校の中では先輩や転校生とのラブコメ展開があったり、肝心のバトルもジャンプの先輩方を彷彿するセンスを感じさせたりなど、毎週のように変わる作風は破天荒ながらも、翻弄する読者を飽きさせない独自の味へと昇華している。
現在は、気付けば『呪術廻戦』を始めとしたジャンプの主要な連載陣に混じってTwitterトレンド入りを果たしたり、2週連続のセンターカラー、そして2024/5/27発売26号では1周年記念で表紙&巻頭カラーを獲得したりしている。
「非常にコミカルに描かれる青春パート」と「唐突に表れる幻妖とのバトル」による物語の緩急はすさまじく、「作品そのものがまさに鵺のようにいくつもの顔を持っている」と評する読者も。
なお読み切り版である「鵺ん家」の頃から、上述の異質さの片鱗が垣間見えるので、機会があれば一読してもらいたい。
登場人物
鵺の陰陽師の登場キャラクター一覧を参照。
主要な用語
- 篝弥市
学郎達が暮らす町。所々に黒い柱が立っていたり、五重塔のような建造物が在ったりと、幻妖絡みで少々特殊。
というのも、実は陰陽師によって日本に幻妖はほとんどいなくなったのだが、この篝弥市にだけは未だ多くの幻妖が出現している模様。
故に陰陽師も、この街に機関を集約させている。
- 北高
学郎達が在籍し、鵺が封印されている学校。生徒数の割に教室が多く、空き教室となっている部屋が多いようである。また、一般的なコンクリート造りの校舎と障子などが並ぶ木造の校舎が二つ存在したり、学郎達の代は入学が夏にずれ込んだりする等、謎も多い。
学郎が鵺に会った日、幻妖を集める仮面が壊れてしまっており、それまでは陰陽師たちに幻妖が少ない安全地帯だと認識されていた模様。
・北高三天女
北高に在籍するある女性生徒の総称。人が振り向く程の美人だが、色恋のうわさが全く無い為、他の生徒たちが畏敬の念を込めて名付けた。周防七咲もその一人で、最近鵺=沙鵺子の登場で四天女になった。
- 陰陽師
幻妖と戦う治安維持部隊。上述の通りほとんど篝弥市でしか幻妖は出現しない為、篝弥市限定の組織となっている。学校の教員や生徒の中にも関係者がいる様子。
現代の陰陽師は幻妖退治のみならず破壊された建物の修復や被害者の完全治療、更には記憶処理まで行う高度な術を持ち、街を影ながら守っている。
・霊衣
陰陽師が最初に覚える術であり、普段の服装を換装する形で着用する戦闘服。陰陽師それぞれで見た目が違い、霊衣を着た陰陽師は人に見えない状態になる。
1話の学郎はこれを纏ったにもかかわらず一般人の膳野に視認されているが、これは作者の巻末コメントによるとまだ力が馴染んでいなかったためとのこと。
・霊殻
霊衣を更に発展させると「霊殻」と呼ばれる鎧を上から身に纏う。
単純にパワーアップともいえるが、陰陽師によっては霊殻の形状は人型に限らない為、ある意味変身という趣が強い。
・盡器(じんぎ)
陰陽師や一部の幻妖が使う固有武器。解放された盡器は、それぞれが異なる特性を持つ。
最初は全てが錆だらけで、錆を落とす事によって本来の力が解放される。研磨剤になるのが幻妖であり、幻妖を沢山倒した後、持ち主の精神に強い負荷がかかる事で解放される。
因みに鵺が学郎の盡器覚醒の為に提示した幻妖の必要討伐数は弱いやつ換算で300体。
・二大旧家
陰陽師の中でも古くからあり、独自の情報網や高い影響力を持つ。
- ・式神
常夜と呼ばれる異界に捕らわれ棲まう怪物たちの総称。
陰陽師はそれらの使役を相当な上級術としている。
詳しくは当該項目を参照。
怒りや悲しみといった人の負の感情に反応して集まる性質を持つ怪異。幻妖は普通人には見えないが、集まる事により一般人から見えるようになり、人も殺せるようになる。1000年以上に渡る陰陽師の活躍により篝弥市以外にはほぼ出現しないものの、街の中ではまだまだ多くの幻妖が存在するらしい。
完全な人型、人間的な衣服を着ている個体や、醜悪で巨大な芋虫のような個体等様々な姿で確認されている。
関連動画
公式PV
WJ新連載PV
コラボMV
ボイコミ
『鵺ん家』
『鵺の陰陽師』#1
『鵺の陰陽師』#2
『鵺の陰陽師』#3
『鵺の陰陽師』#4
関連項目
同期の新連載
※21号と22号はGWのため合併号。ちなみにキルアオとは担当編集者が同じである。