概要
メキシコの伝承に伝わる、とある湖の主に魅入られて湖底に引き込まれ、身体が蛇と化した女性で、次の様な話が伝わっている。
その昔、メキシコのオアハカ州に、男1人と女一人を持つ夫婦が暮らしていた。
ある日その息子と娘が近くの湖に水を汲みに出かけると、水中に美しい真珠の首飾りが浮かんでいるのを見付けた。
娘はそれを欲しさに湖の中に入ってゆき、喜んでその首飾りを手にした途端、突然湖の水が開いたかと思うと、あっという間に水底へ飲み込まれてしまった。
弟は心配しながら姉が水面に現れるのを待ったが、何時まで経っても姉は浮かんでこず、弟は家に帰ると事の次第を両親に話した。
父親はそれを聞くとすぐさま湖に向かって駆け出し、岸から大声で娘の名を呼ぶが、何の返事もなく、諦めきらない父親は食い入るように水中を覗き込んだ。すると、透き通った水底に娘がいるのが分かったものの、娘を底から救い出す術を知らなかった父親は落胆して家に帰り、妻に事情を話した。両親は悲観に暮れていたが、それから3日たったある夜、父親は誰かのこんな声を聞いた。
「おまえの娘はわしのところの嫁にもらったから諦めておくれ。9日目に湖に行けば娘に会えるが、もうおまえの娘ではないことだけは承知しといてくれよ………」
両親はその言葉に従い、9日目に湖に向かうと、水上に娘が現れ深々と挨拶した。しかしその娘の下半身はなんと蛇となっていた。両親は驚き嘆き、悲しみに暮れて家に帰った。
その夜、父親はまた例の声を聴き、今度は3日後に娘が贈り物をしてくれるという。そこで出かけて行くと、娘は美しい花を父親に手渡した。この花を瓶の中に入れておいたところ、翌日瓶の中の水はたくさんの金に変わっていたという。