概要
投稿型web小説サイト『小説家になろう』にて、2012年4月から連載開始。
2014年2月、エンターブレイン・ホビー編集部より書籍化。
2014年7月、web連載完結。
地球ではない異世界を舞台に、老騎士バルドの引退後の旅と戦いの様子を描いた冒険活劇小説。
池波正太郎のような淡々とした筆致で、叙情たっぷりに異世界の旅情と騎士達の誇りを描く。
また、旅の途中で登場する様々な食べ物の描写が胃袋を直撃する飯テロ小説としても有名。
連載は三か月に一度のペースで新章が開幕し(1月1日、4月1日、7月1日、10月1日開始)、章の連載中は3日おきに更新が行われるスタイル。一章十話構成。
2016年9月6日にはwebヤンマガにおいて漫画版が掲載される事になった。タイトルは『辺境の老騎士バルド・ローエン』。
2019年には作者本人の手によりカクヨムでも掲載開始。本編は既に完結済みだが、外伝に関しても投稿中。
あらすじ
〈大障壁〉を超えて人の世界に紛れ込む魔獣を遥か昔から討ち続けてきた、辺境パクラの領主・テルシア家。
四十年に渡って戦い続けたテルシア家筆頭騎士バルド・ローエンは、とある事情で職位と財産を返上し、気ままな一人旅に出た。
家族はいない。領地もない。旅の道連れは同じく老いて引退した一頭の馬だけ。
興の向くままに世界を見て回り、美味しいものを食べ、そして道の途中でひっそり死ぬための、目的地のない旅のつもりだった。
しかし、バルドは想像もしていなかった。
一本の奇妙な剣との出会いをきっかけに、自分の旅がやがて大陸中の国々を巻き込み、世界中で語り継がれる冒険譚となることを。
登場人物
バルド・ローエン
主人公。物語開始(序章)時点で五十八歳。
辺境パクラを守護するテルシア家の元筆頭騎士にして、四十年に渡り魔獣や賊と戦い続け、〈人民の騎士〉と呼ばれた大豪傑。
近隣の悪徳領主コエンデラ家の陰謀で窮地に陥った主家の危機を凌ぐため、職を辞し、流れの騎士として大陸中をめぐる旅に出た。
並の成年男性を上回る大柄で筋肉質な体躯を誇るが、老齢により身体の節々にガタがきている。
年齢相応の頑固者だが、経験豊富で情に厚く、まっすぐな気骨を持つ。
美味しいものに目がない食いしん坊じじい。
ちなみに彼のみ台詞にかぎ括弧がつかないという特徴がある。
スタボロス
かつて仕えていた姫・アイドラからバルドに贈られた愛馬。三十一歳。
現役はとうに引退し、そのまま置いておくと食肉用に潰される運命だったため、バルドの死出の旅の道連れに選ばれた。
体力はすっかり落ちているが、バルドの命令を理解するほど賢く、時に抜群のコンビネーションを見せる。
ヴェン・ウリル
〈赤鴉〉と恐れられる凄腕の流れの騎士。
コエンデラ家に殺し屋として雇われ、バルドの前に現れた。
尋常ならざる技量の剣技を修めた達人。単純な強さで言えば今のバルドを遥かに凌ぐ。
ビロードの肌に獣のようなしなやかさを秘めた美丈夫。非常に口数が少ないが、仲間想いの熱い男。愛馬はサトラ。
ジュルチャガ
〈腐肉あさり〉という異名を持つ盗賊の青年。
自身を大盗賊と呼んではばからない、人懐っこく愛嬌のあるちゃっかり者。
攻撃能力こそないが、常人離れした身の軽さと口の上手さ、どこにでもするりと潜り込む潜伏力と情報収集力で縦横無尽に活躍する。
わけあってコエンデラ家に従っていたが、なぜかバルドを気に入り、旅についてくることに。
ゴドン・ザルコス
ポドモス大領主領メイジア領の現領主。
旅の途上のバルドと出会い、半ば押しかけるように旅に同行する。
非常に面倒見がよく、涙もろいお人よし。領主本来の事務仕事はもっぱら妹夫婦に任せ、自身は領土を奔走し、困った人々を助けて回っている。
いつも大声で快活に笑う、横幅と厚みがあるパワー型の騎士。巨大で重量のある武器を自在に操るため、〈壁剣の騎士〉と呼ばれている。
ドリアテッサ・ファファーレン
中原の大国・ゴリオラ皇国の大貴族ファファーレン侯爵の娘にして、自身も子爵の爵位を持つ女騎士。登場時の年齢は十九歳。
ある目的のため魔獣を狩ろうと辺境を訪れたが、仲間に裏切られ、息も絶え絶えのところをバルド一行に救われた。
凛とした美貌の持ち主。生まれ持った剣才とたゆまぬ修練により、女離れした実力を持つ。愛馬はクリルヅーカ。
アイドラ・テルシア
現テルシア家当主ガリエラ・テルシアの叔母に当たる女性。四十四歳。
少女の頃から十四歳年上のバルドにひどく懐き、バルドもまた親身になって仕えていた。
さる事情でどこにも嫁入りせず、一人息子のジュールランと共にテルシア家で暮らしている。
直接の出番はほとんどないが、本作のヒロイン。
ジュールラン
テルシア家の騎士にして、アイドラの一人息子。
幼い頃からバルドに師事し、心技体ともに逞しく育った非常に聡明な青年。バルドをじいと呼び慕う。
ある意味でバルド以上に過酷な運命の奔流に投げ込まれることになる。
ジョグ・ウォード
漆黒の鎧に身を包むコエンデラ家の騎士。異名は〈暴風〉(パンザール)。
昔から幾度となくバルドに打ち負かされているため、打倒バルドに並々ならぬ執念を燃やす。凄まじい膂力で巨大な黒剣を振り回す戦闘スタイル。
粗野で乱暴だが、精強で気骨ある男。酒と牛の肉が好物。愛馬はダスト。
カムラー
パルザム王国の貴族トード家に仕える料理人。トード家に滞在するバルドに料理を振る舞う。
給料の殆どを料理研究に費やす料理バカ。料理の腕は確かで、食べる相手のことを気遣うなど細かい気配りも出来るが、慇懃無礼な態度や料理の味のために格式や伝統を蔑ろにすることなどからかつて仕えた家の主人をことごとく怒らせてきた。
バルドはカムラーが嫌いだが、カムラーの料理は大好き。
食事描写
主人公バルドの目的のひとつが各地の旨いものを食べ歩くことなだけあって、この小説には食事シーンが非常に多い。地球には存在しない架空の食材を使った料理が大半を占める。
以下、作中で登場する料理・食材を列挙する。
コルルロースのシチュー | 序章第1話前編 | 珍しい山鳥コルルロースを使用した料理 |
コルルロースの皮のカリカリ焼き | 序章第1話前編 | |
コルルロースのもつ煮込み | 序章第1話前編 | |
岩塩をふった焼き川魚 | 序章第2話後編 | 魚は釣りたて |
干し肉と山芋入り山菜鍋 | 序章第3話前編 | |
厚切りジャボの炙り焼きと赤ワイン | 序章第4話後編 | |
挟み焼き | 序章第7話前編 | 小麦粉を溶かして薄く延ばした丸い生地を焼き、魚介類と味噌を挟み込んだ屋台料理 |
馬の尻肉 | 第1章第1話 | |
サッポのだし汁とエガルソシアの鍋 | 第1章第3話前編 | ふんわりと白濁したこってりスープ |
黒海老の鬼鎧焼き | 第1章第4話前編 | |
月魚(ユエイタン) | 第1章第6話 | |
山芋プディングとノゥレの鍋 | 第1章第7話前編 | モデルはどじょう豆腐 |
コルコルドゥルと卵かけ炊きプラン | 第1章第8話中編 | |
ユフの実 | 第2章第5話後編 | |
滝壷の魚 | 第2章第6話後編 | |
揚げポド芋とコルコルドゥルの骨付き肉 | 第2章第7話後編 | |
牛肉のステーキ | 第3章第1話前編 | |
ミルクティー、牛のチーズ、色付き砂糖 | 第3章第2話 | 塊になった砂糖は極めて珍しい |
脂たっぷりのあばら肉 | 第3章第9話 | 冷えたエールとセットで |
牛の背骨の脇の燻製肉 | 第4章第1話前編 | カムラー製 |
コルコルドゥルの卵焼き | 第4章第1話前編 | カムラー製。刻みマガリダケ入り |
焼きプラン | 第4章第1話前編 | カムラー製 |
氷菓 | 第4章第1話前編 | カムラー製 |
ポド芋の油ゆで | 第4章第1話 | カムラー製 |
プランの牛乳粥 | 第4章第4話前編 | カムラー製 |
クレープのフランベ | 第4章第4話後編 | カムラー製。7種の果実とエイボの蒸留酒のソースかけ |
牛タンの串焼き | 第4章第4話後編 | |
詰め物をしたパン | 第4章第5話後編 | カムラー製。 |
木の実と果物のケーキ | 第4章第9話前編 | カムラー製 |
デーケズのブイユ焼き | 第4章第9話中編 | カムラー製。デーケズは大味な白身魚 |
牛の脳みその油湯で | 第5章第1話前編 | カムラー製 |
若い雄牛の蒸し焼き | 第5章第9話後編 | カムラー製。背骨の脇の肉を塊のまま蒸し焼きにして薄く切り分ける |
シュレイニの蒸し焼き | 第6章第1話後編 | カムラー製。シュレイニは山鳥。子牛のエキスを煮詰めたソースをかける |
バンツ魚とシルシュの葉 | 第6章第3話 | 塩を振った焼き魚 |
牛の尻尾の薄切りと牛の尻尾のスープ | 第6章第9話後編 | カムラー直伝 |