かけまくもかしこき日不見(ひみず)の神よ
遠(とお)つ御祖(みおや)の産土(うぶすな)よ
久しく拝領つかまつったこの山河(やまかわ)
かしこみかしこみ 謹んで────
お返し申す!
概要
人々のいなくなってしまった場所に開く災いの扉「後ろ戸」を閉めることを使命とする特別な存在。後ろ戸の向こうから来る災いを阻止するために、その扉に祝詞(のりと)を唱えながら鍵をかけ、災いを封じ込めている。
物語の冒頭で登場する宗像草太は、代々閉じ師の仕事を生業とする一族の末裔(まつえい)であり、彼自身も日本各地に現れる後ろ戸を閉めるために全国を旅して回っている。また、物語のなかでは草太をはじめとする宗像一族しか登場していないものの、作中に登場する閉じ師に関する古文書や古地図のなかには「石上(いそのかみ)一族」や「三田井(みたい)一族」というようなほかの一族の存在を確認することができる。
閉じ師の鍵
草太は自身の首元に古びた不思議な鍵をかけており、後ろ戸を閉める際にこの鍵を用いている。鍵は枯れ草色をした金属製で、本体には凝った装飾が施されている。(小説版、42ページ、60ページ)
開いてしまった後ろ戸の前でこの鍵を握り、かつてその土地にあった人々の営みや賑わいを想うと、手のなかの鍵が次第に熱を帯びて青い光を立ち昇らせ、後ろ戸の表面にその土地の人々の想いを集めてできた光の鍵穴を浮かび上がらせる。そして、その鍵穴に閉じ師の鍵を差して鍵をかけることにより、人々の心の重さで後ろ戸を閉じ、災いを封じ込めることができる。(小説版、87ページ、89ページ)
祝詞
草太は後ろ戸を閉める際に、古い節回しのような祝詞を一心に唱えている。この祝詞には、暴れまわって土地を揺るがす畏(おそ)るべき存在である「日不見(ひみず)の神」と、その土地の本来の持ち主である土着の神「産土(うぶすな)」のそれぞれに対して、人間が長いあいだ借りていた土地を返すことで災いを鎮めるような願いが込められている。(小説版、60ページ、178ページ)
また、草太は災いを封じるにあたって「声を聴き、聴いてもらう」という確固とした想いを抱いており(小説版、340ページ)、土地にある人々の想いに寄り添うとともに、畏怖(いふ)の対象となる人知を超えた存在へと想いを伝えようとする姿を見ることができる。
関連イラスト
関連動画
映画『すずめの戸締まり』WEB CM -お返し申す編-(2022年11月)
関連タグ
後ろ戸 ミミズ(すずめの戸締まり) 要石(すずめの戸締まり)
宗像草太 - 全国を旅して回る「閉じ師」の青年。九州にある扉を探すなかで鈴芽と出会う。
宗像羊朗 - 草太の祖父。彼に閉じ師の使命を授けた師匠でもある。
岩戸鈴芽 - 九州の静かな町に暮らしている女子高生。草太を助けるために彼とともに「戸締まりの旅」に出ることになる。
参考文献
- 新海誠『小説 すずめの戸締まり』 角川文庫 2022年8月24日発行 ISBN 978-4-04-112679-0