サダイジン
さだいじん
「ひとのてで もとにもどして」
CV:山根あん
岩戸鈴芽が「戸締まりの旅」の途中で出会う、人間の言葉を話す謎の黒い猫。
その正体は、かりそめの顕現(けんげん)として黒猫の姿を借りた「東の要石」であり、もともとは東京都のどこかに存在する巨大な後ろ戸のもとで人知れず災いを鎮める存在であった。
災いを封じながら悠久の時を過ごしていたサダイジンは、あるとき「西の要石」であるダイジンが要石の役目を放棄して逃げ出してしまったことをきっかけとして、たった一本だけで暴れ狂う災いを押さえつけなければならないという危機に直面してしまう。4日間にわたる苦闘の末、要石としてのサダイジンは耐えきれずに抜けてしまい、これまで封じていた災いのすべてを現世(うつしよ)に逃してしまうものの、間一髪のところで新たな要石が災いを食い止めてくれたことによって最悪の事態は回避された。しかしながら、それも一時的なものに過ぎないと判断したサダイジンは、常世(とこよ)に入ることを望む鈴芽の前に現れるとともに、彼女に要石としての自身の責務を果たす助けをしてほしいと頼み込むことになる。
容姿
ぎらぎらと光る緑色の瞳を持つ、大型犬ほどの大きさの黒い猫。目を縁取る毛の模様はダイジンと対照的になっており、ダイジンが左目を黒い毛で縁取っているのに対して、サダイジンは右目を白い毛で縁取っている。
また、身体の大きさについても、初めて鈴芽の前に現れた際には乗用車と同程度の巨体であったものの(小説版、287〜288ページ)、そののち車の後部座席にすっぽり収まるサイズまで縮んだりするなど(小説版、288ページ、294ページ、304ページ)、身に秘める能力によって自在に変えられる様子をうかがわせている。
性格
幼子(おさなご)のような声色とは裏腹に、くっきりとした知性と明確な意志を宿しており、その口ぶりには要石として過ごした時の長さがにじみ出ている。(小説版、286ページ、295ページ)
あわせて、自身が押さえきれずに解放してしまった災いをふたたび鎮めるために鈴芽に協力を求めたりするような、人間に味方をして平和を守ろうとする想いも見て取ることができる。
九州に祀(まつ)られていたダイジンと対をなす「東の要石」であるサダイジンは、東京都千代田区の皇居の地下深くにある古びた後ろ戸のもとで人知れず祀られており、後ろ戸を通って現世に現れ出ようとする災いを永きにわたって鎮めていた(小説版、180ページ)。しかし、九州の地で災いの一端を押さえていたダイジンが抜けてしまったことにより、勢力を強めた災いは現世に出ようと暴れ回るようになり、残された東の要石であるサダイジンはたった一本だけで災いをつなぎ止めていた。しかし、サダイジンは暴れ回る災いの力に耐え切ることはできず、ダイジンが抜けた4日後にとうとう災いの力の前に屈して抜けてしまい、数百年に一度の巨大な災いを東京の上空に逃してしまうことになる。
その巨大な災いは、新たな要石になった宗像草太がその身を犠牲にして封じ込めたものの、サダイジンは要石1本だけでは災いを押さえきれなくなるのも時間の問題であると認識し、旧知の「閉じ師」である宗像羊朗のもとを訪れる。そこで常世に入ることを望む少女・鈴芽の存在を知ったサダイジンは、彼女が羊朗の病室を去ったのちに黒猫の姿で羊朗の前に現れ、久々の対面を果たした彼から鈴芽への力添えを頼まれている。
サダイジンは自身の故郷に向かって旅をする鈴芽を追いかけ、道中の道の駅で彼女の前に現れる。その際に鈴芽の叔母である環に取り憑いて彼女の本心をあらわにしたために、鈴芽を悲しませたことを怒ったダイジンから飛びかかられてしまうものの、それを軽くいなしながら平然とした体(てい)で彼女たちの旅に加わっている。そして、その旅のなかで鈴芽の乗る車を運転する芹澤朋也が「その黒猫には鈴芽に何かしてほしいことがあるのではないか」という素朴な疑問を口にしたことから、サダイジンは「そのとおり」と口を開き、要石である自身をふたたび災いに刺して鎮めてほしいという頼みを明かしている。
鈴芽との旅の末に、彼女とともに常世に降り立ったサダイジンは、現世に出ようと暴れ回る災いを力づくで食い止めるために、これまで隠していた「猛き大大神(おおおおかみ)」としての真の姿をあらわにしている。
雄叫びとともに一瞬で巨大化したサダイジンは、家ほどの大きさがある巨体と、長い髭(ひげ)と尾をたなびかせた白い毛並みの獣へと変貌を遂げている(小説版、322ページ)。猛き大大神の名にふさわしい威厳と勇猛にあふれた姿になったサダイジンは、一陣の風のような速さと鋭い爪牙(そうが)をもって、荒れ狂う災いに真正面から挑みかかっている。
なお、草太の声を演じた松村北斗は、2022年11月24日にららぽーと福岡で行われた舞台挨拶において、真の姿になったサダイジンのことを「サダイジンラストフォルム」と呼んでいる。
岩戸鈴芽
九州の静かな港町に暮らしている女子高生。
自身が暴れる災いを押さえきれずに抜けてしまったその翌日、旧知の「閉じ師」である羊朗のもとを訪れた際に姿を目にしたのが出会ったきっかけとなっている。鈴芽と羊朗のやり取りを見守るなかで、彼女が常世に入ろうとしていることを知ったサダイジンは、自身の故郷にある特別な後ろ戸を探しに行く彼女のあとをこっそりと追いかける。
サダイジンは道中の道の駅にて鈴芽の前に姿を現し、しれっとした装いで彼女の旅に加わると、その道中で自身が彼女の旅に加わった理由を明かしている。その後も、目的地に向かうためにめげずに進み続ける鈴芽のそばにぴったりと付き添ったり、常世に降り立った彼女を守るために災いを力づくで食い止めたりするなど、神としての力添えを見せる様子をたびたび見ることができる。
ダイジン
人間の言葉を話す謎の白い猫。
サダイジンが鈴芽の前に姿を現した際に、彼女の叔母である環の本心をあらわにして鈴芽を傷つけたことを怒ったダイジンから飛びかかられたのが関わるきっかけとなっている。ダイジンに真正面から飛びつかれたサダイジンは一瞬たじろぐも、すぐにダイジンを制して首根っこを捕まえ、そのまま車の後部座席に一緒に乗り込んでいる。両者のあいだにはそれ以降険悪な雰囲気はなく、互いにくっつくようにして丸くなるというような、親猫と子猫を思わせる和やかな交わりを見せている。(小説版、289ページ)
岩戸環
鈴芽と一緒に暮らしている彼女の叔母。
サダイジンが道の駅で鈴芽の前に姿を現そうとした際に、彼女と一緒に乗り合わせていた環の姿を目にしたのが関わるきっかけとなっている。サダイジンは鈴芽と言い争いをする環にこっそりと取り憑き、彼女が秘めていた鈴芽への負の感情を暴くことによって、複雑な思惑のまま停滞していた彼女たちの関係を前に進めるきっかけを与えており(小説版、305ページ)、そののちダイジンと一緒に後部座席で丸くなった際には「ひと仕事終えた」というような満足げな姿をあらわにしている。(小説版、289〜290ページ)
また、環がサダイジンの正体を鈴芽から聞かされて「神サマっ!? なんやとそれ?」と大笑いした際には、環から馬鹿にされたのだと感じて眉をひそめている。
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