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「只人に関われることではないのだよ。

すべて、忘れなさい」


CV:松本白鸚

はじめに編集

本項目は、アニメ映画『すずめの戸締まり』の核心に深く関わる内容を掲載しています。

作品を鑑賞された方、もしくはネタバレに自己責任を持てる方による閲覧を推奨します。


概要編集

宗像草太の祖父で、彼に「閉じ師」の使命を授けた師匠でもある。

老いてもなお鋭い印象をまとった優美な顔立ちをしているほか、右腕を失った体躯からは閉じ師として歩んだ人生の凄まじさをうかがい知ることができる。また、現在は東京都内にある病院に入院しており、自由の効かなくなった身体を医療用ベッドに静かに横たえる生活を送っている。

そんな彼は、東京の上空に現れた巨大な災いが封じられるさまを見届けた翌朝、ボロボロの姿で自身のもとを訪れてきた岩戸鈴芽と出会う。羊朗は要石になってしまった草太を助けたいという鈴芽に対し、要石と閉じ師のそれぞれに託された使命の重さを説いて諭(さと)そうとするものの、それでも諦めようとしない彼女の想いの強さを目にしたことにより、感心とともに彼女の進むべき道を指し示すことになる。


人物編集

右腕

容姿編集

深いしわが刻まれてもなお美しく秀でた面立ちが目を引く、真っ白に染まった長い髪の老人。彼の整った顔の形や穏やかで静かな声音は孫の草太と瓜二つであるものの、現在の彼には草太のようなたくましい生命力はほとんど残されておらず、深手を負って死にかけている野生動物のような印象を見る者に抱かせている。(小説版、237〜238ページ)

また、蒼白になった彼の大きな体躯はごっそりと痩(や)せきっており、病院着から見える彼の首筋や鎖骨も深くくぼんでいるほか、右腕については過去の閉じ師の仕事によるものなのか、右肩から先がすっぱりと失われている。(小説版、243ページ)


性格編集

落ち着き払った威厳と覚悟をその身に宿しており、身体が弱りきった現在においても閉じ師としての鋭く切実な使命感は健在である。

鈴芽を前に話をするなかでも、要石となった草太を助けに行こうとする彼女を「あなたは、草太の想いを無にしたいのかい?」とゆっくりと言い含めたり、「只人に関われることではないのだよ」と自らの命と引き換えに百万人の都民の命を救う閉じ師の使命の重さを彼女に説いたりするなど、語られる言葉の一つひとつに彼が積み重ねてきた人生の重みを見てとることができる。


また、羊朗の声を演じた松本白鸚は、監督の新海誠から「羊朗には品格がないといけない」という要望をいちばん最初にもらっており、その難しさを心に留めながら声の収録にあたっている。(『すずめの戸締まり』映画公式パンフレット、13ページ)


生活環境編集

東京都御茶ノ水駅にほど近い大きな大学病院で入院生活を送っており、二人用の病室の窓側のベッドに静かに横たわっている。(小説版、236〜237ページ)

羊朗の左手の人差し指にはパルスオキシメーターがはめられており、そこからつねにバイタルサインを採られている。また、彼の老衰した身体は自由に動かすことができず、無理が過ぎるとごほごほと激しく咳き込んでしまい、痙攣(けいれん)とともに苦しむことになる。(小説版、237ページ、239ページ、242〜243ページ)


その他編集

  • 草太が東京の要石に関する情報を探すために自室で開いた過去の閉じ師たちの日誌のなかには、かつての羊朗の師匠が書き記したものも登場している。大正時代に書かれたその日誌には、黒塗りの文面のなかに「九月朔日 土 晴 早朝当直ヨリ使者」「午前八時 日不見ノ神顕ル」などの文字が断片的に読み取れる(小説版、182ページ)。また、その日誌のページが書かれた日(1923年9月1日)に東京を襲った大震災の際には、当時の閉じ師たちが東京の後ろ戸を閉めたことが草太の口から語られている。

主要キャラクターとの関係編集

宗像草太編集

「閉じ師」として全国を旅している自身の孫。

羊朗は草太のことを「草太」と呼んでおり、対する草太は「じいちゃん」と呼んでいる。

草太の育ての親となった羊朗は、彼の面倒を見るかたわら閉じ師の技と使命を彼に授けている。羊朗は草太の閉じ師としての資質を「不出来な弟子」などと満足していなかったものの、最終的に彼自身が要石となって百万人の都民の命を救った際には、「人の身には望み得ぬほどの誉れ」を手にしたとして、彼の示した覚悟にまぶしそうに目を細めている。(小説版、239〜240ページ)


岩戸鈴芽編集

九州の静かな港町に暮らしている女子高生。

羊朗は鈴芽のことを「あなた」と呼んでおり、対する鈴芽は「おじいさん」と呼んでいる。

東京の上空に現れた数百年に一度の巨大な災いが封じられた翌朝、自身の病室をボロボロの姿の鈴芽が訪ねてきたのが出会ったきっかけとなっている。羊朗は災いの終息や彼女の身なりなどから状況を推察し、開口一番「草太は、しくじったんだな?」と彼女に声をかけるとともに、草太の戸締まりの旅に巻き込まれたらしい彼女に彼の安否を問うている。

そののち、常世で災いを鎮めている草太を助けにいきたいという鈴芽の想いに際した羊朗は、数多の人命を守るために自らの命を投げ打つ閉じ師の使命の重さを彼女に示すとともに、「すべて、忘れなさい」と元の日常に帰るように諭している。


しかしながら、それでも言うことを聞こうとしない鈴芽を制するなかで、羊朗は彼女の「生きるか死ぬかは時の運」という達観した死生観と、「死ぬことよりも草太さんのいない世界を生きるほうが怖い」とはっきりと告げられた彼女の想いの強さに触れ、その無鉄砲で純真な心意気に感心して大きな笑い声を上げている。そして、羊朗は常世に入ることができる後ろ戸は生涯にたったひとつだけ存在することを鈴芽に明かすとともに、過去の記憶をたどってその扉のことを思い出した彼女に「その扉が、あなたが入ることができる唯一の後ろ戸。それを探すことだ」と進むべき道を示している。


サダイジン編集

人間の言葉を話す謎の黒い猫。

羊朗はサダイジンの姿を目にした際に「お久しゅうございますな」と居住まいを正しているほか、要石としてのサダイジンが災いを抑えきれずに抜けてしまったことを察したあたりから、明確な記述はないものの両者のあいだには過去に何らかの関わりがあったことがうかがえる。また、要石としてふたたび災いを鎮めるために、常世に向かう鈴芽の手を借りようとするサダイジンの思惑を察した羊朗は「あの子についていかれますかな。よろしくお頼み申す」という彼女への力添えを頼んでいる。


なお、作品の監督である新海誠は、2022年12月30日にTwitterスペースで行われた配信において、「羊朗は2011年の3月に起こった震災の際に、サダイジンを東京の地下にある後ろ戸に刺した」と公表している。


関連タグ編集

すずめの戸締まり

宗像草太 - 羊郎の孫。自身の代わりに「閉じ師」の使命を継がせている。

岩戸鈴芽 - 草太とともに戸締まりの旅をする女子高生。旅のなかで羊郎のもとを訪れる。

サダイジン - 人間の言葉を話す謎の黒い猫。


隻腕 閉じ師 後ろ戸 ミミズ(すずめの戸締まり)


外部リンク編集


参考文献編集

  • 新海誠『小説 すずめの戸締まり』 角川文庫 2022年8月24日発行 ISBN 978-4-04-112679-0
  • パンフレット 映画『すずめの戸締まり』 東宝 2022年11月11日発行

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