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雪の魔女の洞窟

ゆきのまじょのどうくつ

ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第9弾。著者はイアン・リビングストン。
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「雪の魔女の洞窟」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第9弾「CAVERNS OF THE SNOW WITCH」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。

作品解説

 アランシアの北方・氷指山脈。
 吹雪の雪原地帯を、商人「ビッグ・ジム・サン」の率いる隊商の荷馬車隊が進んでいた。が、前哨砦から警告と救助要請の角笛の音が響き、護衛として参加した戦士=君は、ビッグ・ジムの依頼で偵察に出る。
 二時間後に現場に辿り着いた君は、惨事の現場を見る事に。六人の男たちが惨殺され、小屋は全て破壊されていたのだ。その様子からして、犯人は巨大な怪物に違いないと判断する君。
 ビッグ・ジムの元に戻り、報告すると、彼は荷馬車に円陣を組ませる。そして彼は、君に怪物退治を依頼する。金貨50枚の報酬でそれを引き受け、君は夜明け直後に目を覚まし、出発する。今日中には帰れるかもしれないと言い残し。
 やがて、君は雪の中を苦労しつつ進み、この惨事の犯人たる怪物の姿を発見する。が、それは現地に住む猟師を襲い、重傷を負わせていた。
 戦いの末、君は怪物をしとめるが、猟師は虫の息だった。
 彼は君に、偶然に「雪の魔女」が潜むという「水晶の洞窟」の、入り口を発見したと告げる……。

 シリーズ9作目。
 当初は、ゲームブック雑誌「ウォーロック」に掲載された、パラグラフ200の短編だったが、単行本化する際に後半部を書き加え、パラグラフ総数400の作品となった。
 本作は、「雪原・寒冷地」が舞台だが、それは序盤のみで、「雪の魔女」の洞窟に潜入してからは地下迷宮ものになり、中盤で雪の魔女の洞窟から脱出した後は、オープンフィールドの「キャンペーンプレイ」の内容になる。
 もともと「ウォーロック」誌に掲載された内容は、
:ビッグ・ジムの依頼を受け、雪の中を進み、怪物「雪男(イエティ)」の討伐。
:イエティを倒したのち、その爪で瀕死の猟師から、雪の魔女の住む「水晶の洞窟」の入り口を知る。
:そのまま、洞窟に赴き、内部を進んで雪の魔女を倒して、有している莫大な金貨や財宝を手に入れる。
 総パラグラフが200のこの作品を、それまでのシリーズ同様、パラグラフ400の単行本化するにあたり。
 イアン・リビングストンは「もとの内容を倍にする」「後半部を継ぎ足す」のどちらにするかを考え、後者を選んだ。

 本作は、その後半部分の「キャンペーンプレイ」……今までに発売された作品との「関連性」を作中で描写している事が、最大の特徴である。
 後半、水晶の洞窟から脱出した主人公=君は、捕らわれていたエルフとドワーフの二人とともに、ストーンブリッジへと向かう事になる。
 その途中で、コク川に辿り着き、ファングや「死のワナの地下迷宮」について言及し、ストーンブリッジへと到着すると、「運命の森」の事件……ジリブラン王のハンマーが盗まれた事件を目の当たりにし、その後にとある事情で、「火吹山の魔法使い」の舞台となった火吹山とその頂上に赴かねばならなくなる。
 つまり、後半部分を用いて、「それまでのシリーズの舞台は、同一の世界観に存在している」という事を、読者=プレイヤーに知らせ感じさせる仕掛けを施しているのだ。
 これは、テーブルトークRPGにおける、キャンペーンシナリオの手法である。無関係と思われていた過去のシリーズの作品群に、じつは関連があると匂わせ、同じ世界での出来事だと横のつながりを示す事で、より一層の魅力的な作品世界へとプレイヤーを誘っているのだ。
 のちにこれが、アランシア、そしてタイタンという、作品世界そのものの創造へとつながっていく事になる。

 イアン・リビングストンの諸作品は、ゲーム性よりもストーリー性が強く感じられる作風が特徴だが、その萌芽は「死のワナの地下迷宮」のあたりから見られ、本作でそれが一応の実を結んだと言っても良いと思われる。
 後に巻数を重ね、この手法による魅力を更に深めていく事となる。

主な登場人物

主人公=君

 商人ビッグ・ジム・サンの隊商の馬車隊護衛任務を受けていた冒険者。
 途中で金貨50枚と引き換えに、怪物雪男(イエティ)退治を引き受けるが、退治した後に雪の魔女の洞窟へ挑戦するという、冒険心に溢れた人物。
 後半では、ある意味余計な事をしたために要らぬトラブルを引き寄せた、ともいえる。

ビッグ・ジム・サン

 隊商を率いる商人。怪物が出現したために、隊商が進めない事を危惧して、主人公=君に怪物退治を依頼する。髭に覆われた顔の、寡黙な男。

赤速(あかはや)

 雪の魔女ことシャリーラに囚われていた、森エルフ。
 森エルフらしく、弓が得意で闇エルフを憎む。シャリーラを倒した主人公の元に現れ、ともに脱出する。失われたマジックアイテムや、邪悪な「死の呪文」や、それを打ち破る「癒し手」の存在など、様々な知識に長じている。

スタブ・アックスクリーバー(斧断ち)

 赤速とコンビを組んでいたドワーフ。雪の魔女の元にさらわれ、ともに奴隷にされて一緒にいるうちに親しくなった。赤速とともに主人公の元に現れ、雪の魔女を完膚なきまでに倒したのちに「水晶の洞窟」を脱出。以後、行く当てのない二人に対し、ストーンブリッジへと招く。
 ドワーフらしく斧を武器としており、トロールを憎悪。友人のモーリの死体を見た後、丘トロールの一隊へと突撃していった。

秦皮(とねりこ)

 主人公が森の中で偶然出会った森エルフ。赤速の兄。
 赤速にそっくりな外観をしており、今まで弟が雪の魔女に囚われていた事を知らなかった。
 主人公が、「癒し手」を探すのに協力し、途中まで同行する。エルフらしく、やはり弓が得意。「癒し手」が、過去にニカデマスにかけられた死の呪文を打ち破った事を知っており、主人公にその事を教えてくれた。

モーリ・シルバーハート

 スタブの友人の、ストーンブリッジのドワーフ。トロールと戦い傷を負い、戦死してしまった。その遺体を赤速が発見し、スタブと主人公とに教えてくれた。
 スタブとモーリの名前は、世界観の資料「タイタン」に記載されていたもの。

癒し手

 月岩山地の、不死鳥の姿が入り口に彫られた洞窟に住む善の魔法使い。本名ペン・ティ・コーラ。
 仮面を用いた、癒しを専門とした魔術を用いる。過去にニカデマスにかけられた「死の呪文」を打ち破ったが、そのせいで二眼と見られぬほどに身体はねじくれ、苦痛が身体を苛んでいる。そのため、治療を依頼したい者としか接触しない。
「死の呪文」の呪いを打ち破るため、主人公に様々な試練を与えていく。善意で人を癒すため、報酬などは求めない。

シャリーラ

 雪の魔女と呼ばれる恐ろしい魔術師にして魔女。
 氷指山脈の雪山の中、魔術で隠されている「水晶の洞窟」の最深部に住む。
 氷デーモンにより開眼させられ、世界を雪で覆い自らが支配者になる事を企んでいる。自身は現在吸血鬼となり、血を啜ってその命を長らえているが、肉体を滅ぼされても精神のみで生きていられる。彼女を完全に倒すためには、精神体の状態で彼女に敗北を味合わせる必要がある。
 人間やエルフやドワーフを攫ってきては、命令で閉まっていく魔法の首輪をはめさせ、奴隷にしていた。

地名・モンスター

水晶の洞窟

 本作の前半の舞台。
 雪の魔女が潜む洞窟で、内部には氷で形作られた氷デーモンが氷像として顕現している。
 ゴブリンやオークなどが兵士として常駐しているが、服従を強いる首輪をはめられた奴隷たちが、雪の魔女のために労働させられている。
 その入り口は魔法の目くらましで隠されていたが、イエティに襲われた猟師が偶然に発見し、その場所に目印を付けていた。最奥のシャリーラの部屋には、大量の金貨を含む宝物がある。

雪男(イエティ)

 序盤に主人公が狙っていた怪物。巨体を持ち、熊と類人猿とが合わさったかのような外観を持つ。指には短剣ほどもある爪、口には牙、そして白い毛で覆われた全身に、怪力と、並の人間では簡単には倒せないほど強い。更に、触れただけで冷気によるダメージを相手に与えるので、寒冷地では無敵とも言える存在である。
 知能は低い(脳が退化しているらしい)ものの、動物の持つ本能や狡猾さは有しており、匂いだけで獲物を探知し、何日もかけて追跡し、油断したところを襲い掛かるチャンスをうかがっている。
 その性格も獰猛。雪山での獲物が取れなかったら、人家のある場所まで赴き、小屋ごと叩き潰して内部の人間を食らう。

頭脳殺し(ブレイン・スレイヤー)

 タコの頭部に、ローブを着た人間の身体を持つ、おぞましい怪物。その目は強力な催眠力を持ち、獲物を催眠状態にしてから、触手を頭に巻き付けて、人間の精神エネルギーを貪り食う。
 精神を支配されないために、防御のお守りを持っていないと、この怪物の術にかかってしまう。

死の呪文

 本作の真なる敵とも言える呪文。
 ルーン文字で記された文字列で構成され、それをどこか、犠牲者の目の届くところに置いておく。それを目にした途端に、犠牲者には死の呪いがかけられ、短時間で体力と生命力とが低下し、確実な死をもたらす。
 この呪文を破るには、癒しの技を極めた治療師による治療が必要不可欠である。本作では癒し手=ペン・ティ・コーラが主人公を癒していたが、彼は以前にもニカデマスにかけられた同様の死の呪文を破った事がある。

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