人間の進歩には〈追求〉が必要だ。
ときに狂気とも呼べる〈追求〉の歴史は、常に新たなる発明、発見という、新世界の扉を開いてきたのだ。
そして、これもまた、〈追求〉という行いの果てに開かれた、新たな扉の話になる。
概要
「ウルトラジャンプ」2021年11月号の付録として収録された『岸辺露伴は動かない』の短編小説集第4巻の収録作品。作者は北國ばらっど。
後に2022年12月に発売された短編小説集「岸辺露伴は倒れない」に収録された。
六壁坂の後日談であり富豪村の前日譚となるストーリーとして描かれている。
あらすじ
T県の田舎町「坂持」で不動産管理をしている名門一族の末裔・伊坂恭明は、音楽に関心を持ちながらも、どこか捻くれた性格をしていた。音大を中退した恭明は、一族が所有する物件「サカモチレコード」で働き、ネット通販での開拓をした結果軌道に乗ることに成功する。
だが、安定した生活を手に入れたものの恭明の捻くれた心はそのまま。店に来る客に自身の知識をひけらかし、客を追い返しては愉悦に浸る日々が続いた。そんな時、店に売れっ子漫画家として名の知れた岸辺露伴がやってくる。恭明は最初普段と同じような態度を取り露伴を追い返そうとするが、「自分の漫画のキャラクターの趣味を実感し、物語にリアリティをだすため」という金やちやほやされるためではなくただ『読んでもらうため』探究し続ける露伴の言葉に感銘を受け、音楽と真摯に向き合う事を決意する。恭明は自身の持ちうる最大限の知識を活用して、露伴を相手に「店員」としての役目を初めて完遂した。
それから7年後、露伴は泉京香との打ち合わせの際に、編集部に届いていた「サカモチレコード」からの招待状を受け取る。書かれていた日時は一週間後、金環日食が起こる午後4時。日時通り露伴は泉と坂持を訪れるが、その坂持では不審なほどに急激な過疎化が起こっており…。