COMICWORKS
こみっくわーくす
COMICWORKSは、コミック画材メーカーのデリーター株式会社が発売している、漫画制作ソフトである。画材メーカーの強みとして、同社の発売しているスクリーントーン、DELETERSCREENを収録している。開発元はCOMICWORKS ver2 MAXまではシステム・プロダクト、COMICWORKS NEOは同社からペイントツール開発事業を継承した関連企業、ピージーエヌ。
現在販売されているのはVer2、Ver2 MAX、NEOの三種類。ver2系統まではプログラム上、システム・プロダクト開発のopenCanvasをモノクロ漫画に特化して改良したものとなっている。NEOはピージーエヌのシェアウェアであるコミラボと同様、mdiappのOEM版。
かつてはセルシス社のcomicstudioのライバル格としてシェアを争った。特に大量のトーンデータを添付したMAXは、これを利用した仕上げ作業を中心に一定のプロユースを獲得している。一般にセルシス系ソフトよりも動作が軽く、シンプルでとっつき易い代わりに機能は限定されている、と評される。
NEOについてはmdiappの項目に譲り、ここではver2系統について記述する。通常版とMAXの違いは収録トーンの数と解像度のみ。
動作
- Windows32bit機用ソフト。98SE~7まで対応。vista以降は自動でインストーラが起動しないため手動でインストールする必要がある。
- レイヤーはモノクロ二値(1bpp)、グレースケール(8bpp)、カラー(24bpp)、ネーム(文字)、ホワイト、反転。全てラスターレイヤーで、一つのファイルに混成可能。ネームレイヤーの文字はOSに登録されているフォントに依拠する。
描画
- ペン(ブラシ)は6種類。鉛筆、ペン、エアブラシ、消しゴム、毛筆、透明水彩(モノクロ二値では不可)。それぞれ5つまで太さ・最小幅・不透明度・筆圧といった設定情報を保存して使用できる。手振れ補正をかけることも出来る。
- 直線・三角・雲型など、アナログを模した定規機能を持つ。画面上に置いて固定・反転・回転・拡縮などをさせて使う。中心を固定して回転させることもでき、公式にはこの方法でパースを採ることを推奨している。
- もちろん直線や矩形、円形や多角形、ベジェ曲線なども描画できる。入り・抜きなども設定でき、例えば、ベジェと合わせると髪の毛や輪郭を表現するのに有効。
- 入り抜きや密度、線長の乱れなどを設定できる集中・平行線の描画機能がある。
- トーン機能を実装。.ds2形式で保存されており、解像度は300/600/1200dpiの三種類。1200dpiに対応しているのはMAXのみ。選択範囲を指定して角度・拡大率を選んで貼り付けられる。後述するデリータートーン以外にも、画像を読み込んで.ds2形式で保存する自作機能もある。写真をモノクロ二値化してトーンとして引用する、なども簡単にできる。
- 丸・四角・ラインの幾何学模様によるパターンブラシを実装。セル(柄)と角度・濃度・線数を設定して保存し、shiftキーを押しながらペンで描画すると手描きで模様を敷き詰めることができる。
- 色調補正、シャープ化、ぼかし、効果(モザイク、ポスタリゼーション、ねじる、波など)などの加工が出来るフィルタ機能がある。
- キャンバスを手動で自由に回転して描画できる。
印刷・キャンバス作成
- 用紙サイズ・dpiを指定してファイルの新規作成が行える。デリーターが実際に販売している原稿用紙にあわせ、漫画補助線の入れられている投稿・同人誌用のテンプレートも用意されている。この補助線は印刷には出ない。
- フィルタ機能からトンボレイヤを追加することができる。
- 専用形式を印刷時と同じように並べて閲覧・編集できるプロジェクト機能を実装。実際の漫画完成時に近いイメージで画像を作成・編集できる。.psd形式の保存や読み込みも当然可能だが、他のシステム・プロダクト/PGN系ソフト同様、CMYKカラーには非対応。そのためデータ入稿する場合、印刷所によってはphotoshopやGIMPの対応プラグインなどで変換する必要がある。
デリータートーンについて
- COMICWORKSは、デリーターの公認トーンデータを利用できるのが大きな強みとなっている。同社が汎用形式で提供・販売しているのはごく一部の網トーンだけであり、デジタルデータをたくさん使うためには本ソフトを購入するしかない。comicstudioでほとんどの作業を行っていてもトーンだけはコミワクで貼り付けるという人、あるいはトーンデータを汎用形式で一旦保存しコミスタで利用する、という人も少なくない。
- 収録数はver2通常版は200種類、MAXは800種類。更にかつてはMAX専用のデリーター新作トーンが半年に一度ほどのペースで配布されており、合計すると1000種を超える。2004年夏分から追加配布が行われ、12年3月配布の11年冬の新作トーンをもって追加終了。デフォルト収録トーンはユーザーズマニュアル(ver2・MAX共通)に図版が収録されているため、これを参考に選んでも良い。
- ちなみに、ブランド最新作のNEOでもver2 MAXのトーンファイルの大半をパターンデータとして読み込むことができるが、通常版と共通する200種は利用できない。
問題点
COMICWORKS ver2はすでに発売(2004年)から10年を経たソフトであり、今となってはブラシ形状の編集・追加が不可能など機能的に不十分な点も多いが、特筆すべきはメモリ管理の問題である。
- このソフトは手動であれ自動であれ、使用したメモリ領域の情報を削除、即ち解放(編集履歴の消去)をしない。残量表示もなければ、自動でバックアップもしてくれない(プロジェクト機能上で手動で行うことはできる)。このため、何時間もぶっ続けで作業しているうちにいつの間にかメモリを食い潰してしまい、完成後に保存しようとするとメモリ不足で保存不能に陥る、ということがしばしばある。なるべくこまめに保存した方が良い。
他にも、販売・サポートそのものは継続しているものの、
- Windows8以降に公式には対応していない(動作保証外である)こと
- 発売以来大きなアップデートが行われておらず、バグ修正のためのマイナーアップデートも2007年1月を最後に行われていないこと、
- その上2014年7月現在も販売中であるにもかかわらず、パッケージで案内されている公式ドメインは2013年末に失効し、いまだに復旧していないこと
などの問題がある。一方、古い上に元々軽めに設計されたソフトであるため、最近のパソコンであればスペックが追いつかないことは恐らくない。また、操作性・仕上がりともにアナログ感の強いソフトなので、トーンが欲しい人はもちろん、いかにもデジタルらしい制作過程や出来が合わない人ならば、検討する価値はある。
2014年7月現在のブランド最新作であるCOMICWORKS NEOはmdiappのOEM版となっている。mdiappの開発者はCOMICWORKSの元開発スタッフとされており、パッケージにピージーエヌがテクニカルサポートとして記載されている。従って、プログラムは一から書き直されているが、開発・人脈上のつながりはある。
ver2からの主な改良点は、
- 線画補正の強化、20段階の遅延補正(ストロークを遅らせてより滑らかさを上げる)の導入
- パターンブラシとトーン機能の一元化
- アナログを模した定規からスナップ機能への転換
- ベクターレイヤーの実装
- 3Dデータ読み込みとこれを用いたパース機能
- ノンブル出力実装
- キャンバス解像度設定の細分化(96/150/300/350/600/720/1200dpi)
- ブラシ設定情報の追加制限撤廃。スクリプトファイルによるブラシのプログラム制御
- ショートカットキーが変更可
- データの自動バックアップ機能搭載
などである。mdiapp/コミラボ同様、firealpacaのWindows32bit高位版と捉えることもできるが、カスタムレイヤーなど現在の他のmdiapp系統から見て実装されていない機能もある。動作はver2程ではないが、競合ソフトよりはだいぶ軽い。
しかしプログラムの連続性が失われながらもカスタマイズ不可能なショートカットキーの変更があり、完全な再現ができないこと、マニュアルが余りに粗末である上に発売当時は書籍・オンライン上の解説も殆ど無かったりしたこと、売りであったデリータートーンの収録数が大きく減ってしまった(100~200種)ことなどから移行はうまくいっていない。また、アップデートも一度のみである。ソフト内にリンクがあるオンラインヘルプは上記ドメイン上にアップされていたため現在は参照できない(ミラーはこちら)。
- 公式サイトのミラー 体験版や修正パッチ、追加トーンはここでダウンロードできる。アップデート履歴はこちらを参照。
- 新コミ まんが家養成講座 小学館の新人漫画賞ページ。comicstudio debut 4.0とver2の比較。
- パソコンでマンガ作成 ver2 MAX、NEOのtipsを公開。