概要
漫画からイラストまで、幅広く使えるペイントツール。かつては機能が制限された無償版、mdiapp lightが公開されていた。
無印は発売を停止していて、現在は強化版のmdiapp+SEが発売されている(説明は後述)。だが、ユーザーの間では強化版も「mdiapp」呼びで通じる。
名前の由来は、ボーランド製のアプリケーション開発用ソフトウェアで使われる「Multiple Document Interface (MDI) application(まるてぃぷる・どきゅめんと・いんたーふぇいす・あぷりけーしょん)」の初期名称で、ユーザーにはイニシャルに合わせた様々な発音をされる(例:「まるち」「みでぃあっぷ」「もじゃっぷ」「めでぃあるぱかorあっぷる」「めでたいあっぱれ」「みじかいあっぷでーと」etc どれも公式ではないが、イニシャルを覚えるのに困らない)。
「mdi」を当て字(例:漫画ドローイング、漫画デザイン)、「app」を「アプリケーション」の略として覚えるのが覚えやすくていいかもしれない。
「有料のメディバンペイントプロ的なもの(略称がmdiapp)」という覚え方をしている人もいる。
インターフェイスは無料ペイントソフトfirealpacaに似ている。というか、開発者が同じ。.mdpファイル形式で保存されるペイントツールは皆この開発者のシリーズで、一覧は最初の説明文参照。
開発者はほかにもopenCanvasの初期バージョンやCOMICWORKS、LayerPaintシリーズの開発にも携わっており、これらのソフトを触った人なら比較的扱いやすい。
漫画製作用のソフトだが、イラストを描くのにも良い(特に白黒主線画)。
チラシの裏にすぐさま漫画が描けるようなお手軽さも良い。
主な仕様
基本的にアナログに近い感覚で使える、というoC系統の設計思想は維持されている。フルデジタル化を前提に再設計されたコミワク、というとおおむね正しいかもしれない。
- Windows専用ソフト。Mac版も当初発売されるはずだったが頓挫した。XP以降で動作する。32bit版のみだが64bit機でも動く。
- 基本保存形式は.mdp。後にfirealpacaやLayerPaint HD/Zeroにも採用された。テキストエディタで閲覧・編集できる.mdiとバイナリデータの.mdibinからなる2ファイル形式もある。
- レイヤーはモノクロ1bpp・グレースケール8bpp・カラー32bpp・ベクター・カスタムであり、一つのファイルに混成可能。bpp(色深度)が低いほどメモリを節約できる。カスタムはユーザーが良く使うレイヤー設定をソフトに登録できるようにしたものである。クリッピング、マスク、リンク(複数枚関連付けて一括移動などが可能)機能などが存在する。
- 集中線や図形描画、再編集可能な文字入力など、漫画を描くのに便利な描画機能も搭載。コマ割はベクターレイヤーで矩形フレームをつくり、適宜修正・加工していくことが推奨される。
- キャンバス・レイヤーの自由回転・移動機能がある。手動で回転させたままの状態で描画することもできる。
- 画像データを利用したパターンブラシ機能を実装。ファイルを指定してペンタブで描画すると、線を引いたところだけ敷き詰められた画像が貼り付けられる。塗り潰すように選択範囲を決めて貼り付けることもでき、この際角度と拡縮倍率を指定出来る。ただしmdiapp本体にはパターンデータは一切付属しない。
- 直線・曲線を引くためのスナップ(定規)機能がある。平行線・放射線・同心円・曲線など、多くはfirealpacaにも流用された。スナップ曲線はベジェ曲線として幾つか打った点の間に線を描画しなぞれるようにしたもの。移動・反転・回転・拡縮が可能で雲形定規のように使える。
- A4・B5等の用紙サイズを指定してキャンバスを作成できる。印刷に反映されない漫画補助線の設定機能もある。
- 上書き保存で手直しが不可能にならないよう、データの自動バックアップ機能を実装。
また、特に独自性の高い仕様として、
- 3Dパース機能がある。これによってベクターレイヤーを通じて画面内に設置した立体データをスナップすることで、消失点などに悩まず綺麗にパースを取ることができる。スナップさせずに、たとえば人物を描くときの頭身を採る場合などにも使える。
実際の配置作業は、平面上に物体データを向き・大きさ・傾きなどを設定して配置し、カメラ視点を保存するものである。喩えて言うなら写真館のスタジオでジオラマを設置して撮影するような感覚である。これを移動・変形させてキャンバス上の使いたい位置に持っていく。
立体データはデフォルトでボックス、平面、屋根、階段が用意されており、.obj形式で保存されている。メタセコイア.mqo形式の読み込みにも対応。たとえば、デザインドールの筐体データをインポートする、といったことも(いったん加工する必要があるが)できる。
- Cの下位言語Luaを用いて、プログラミング(スクリプト)による高度なブラシの編成が可能。専用のエディタ・コンパイラを必要とせず、テキストデータとしてメモ帳などで作成・編集できる。.bs形式で保存しクリックすればmdiappが拾ってくれる仕組みである。ガーゼや竹筆、木炭風のブラシなども作れる。
その他
- portalgraphics.net販売のシェアウェア「コミラボ」、デリーター販売のパッケージソフト「COMICWORKS NEO」はmdiappのOEM版である。どちらもページ管理(プロジェクト)機能やデリータートーンデータが追加されており、COMICWORKS専用保存形式の読み込みをサポートしている。トーンはパターンファイルである。
主な仕様の違いは下記のようになる。
ソフト | mdiapp | コミラボ | COMICWORKS NEO |
---|---|---|---|
販売 | nattou.org | portalgraphics.net | デリーター |
価格(税込) | 6,279円 | 5,800円 | 7,171円(店頭での値引きも多い) |
ページ管理機能・ノンブル出力 | ×(※mdiapp+に実装) | ○ | ○ |
トーンデータ枚数・形式 | なし | 38種、.ds3形式 | 100種、.cn1形式。追加パックにて100種追加可能 |
旧コミワク形式(.cwx、.cw2)の読込み | × | ○ | ○ |
アップデート | 多い | 少ない | ほぼ無し |
※.cwx、.cw2形式での保存はいずれも不可。
NEOの場合、旧バージョン(ver2.MAX)に比べて収録トーン数の貧弱さが目立つが、MAX専用データに限り旧トーン.ds2形式を読み込むことができる。コミラボは初期バージョンのみ可能だった。
- 現在、次期バージョンであるmdiapp+の開発が進行中。64bitネイティヴ対応やマルチスレッドによる高速化、レイヤーフォルダ実装などが盛り込まれた。またOEM版にしか存在していなかったプロジェクト機能が搭載された。一方、64bit対応やメンテナンスができないため、 ver.0.9.63にてTWAIN入力機能が削除。
- トーン・ブラシの初期登録数にバラ付きがあるが、どのソフトも後からトーン・ブラシを追加できるので、差はあってないようなものである。追加候補のトーン・ブラシは別売りされてるもの、無料公開されてる商用利用可のもの、別ソフトから書き出したもの、自分で作ったものなどがある(pngなどの、一枚画像状態のものが汎用性が高くてお勧め)。印刷を考えるなら、600dpi、1200dpiの高解像度のトーンがいいだろう。台詞に使用するフォントも無料公開されてる商用利用可のものがお勧め。
- mdiappの読み方は作者日記(※現在は閉鎖)にて"読み方は秘密 (というか無い?)"とされている。しかしユーザーの漫画家が「マルチ」と読んだことを作者が面白がって取り上げたことがありそう呼ぶ人も居る。ここでも改稿にあたってそれに倣った。
mdiapp&コミラボの販売中止、mdiapp+SEの発売
mdiapp本体は、売上げの不振が続いたため、2014年7月末に販売を停止し、また、2017年にコミラボも販売を停止した。
mdiapp+開発版の更新・公開は継続さており、mdiapp+SEがSTEAMで販売されることになった。
告知されていた「コミラボ+」の開発も開発停止され、mdiapp+SEに吸収される形になった。
開発中のコミラボ+はコミラボ無印の認証キーで無期限に試用可能であったが、mdiapp+SEは新たに購入してもらう形となっている。
関連タグ
外部リンク
mdiappシリーズはチュートリアルが非常に貧弱であり、ネットで使い方を調べ上げる必要がある。解説本は下記の『パソコンで描く イラスト&マンガの教科書』のみ。
- 公式マニュアル
- mdiapp&コミラボ 非公式マニュアル 赤坂素人氏による定評ある機能解説サイト。
- 宇河弘樹氏によるレビュー 1 2
- パソコンで描く イラスト&マンガの教科書 デリーター社による宣伝ページ
- このぶ ブラシスクリプトの配布サイト。
- もものす コミラボ/mdiapp用3D素材を配布。(※18歳未満閲覧禁止)