空中給油機は大きい方がいい!
1970年代、アメリカ空軍はKC-135を運用し続けた経験を踏まえて、より大型の空中給油機を欲するようになった。
単に空中給油をするだけでなく、輸送機としても優れた性能を持ち、遠くへ派遣する航空部隊に給油しつつ支援要員・物資も一緒に運べる機体を。
第四次中東戦争真っ只中のイスラエルへの緊急軍事援助「ニッケル・グラス作戦」の経験もこれに拍車をかけた。
この時アメリカ空軍の輸送機は、アラブ側についていたヨーロッパ各国から着陸・給油を拒否されてしまい、アメリカ本土から空中給油を受けつつ直接イスラエルへ飛んでいかなければならなかったのである。
こうして、ATCA計画(先進空中給油機・輸送機計画)が発動。
ベース機の候補はボーイング747とDC-10の2つに絞られ、費用対効果などの観点からDC-10が採用された(ちなみにボーイング747ベースの空中給油機はイラン空軍で使用されている)。
かくして誕生したKC-10は、1980年7月12日に初飛行し、60機が生産された。
KC-10のフライングブームは、新開発されたフライ・バイ・ワイヤ方式のものが採用され、ブーマー席も広さに余裕ができた事で通常の座席が設置され作業が楽になっている。
さらにブームの脇には、プローブ&ドローグ方式のホースが設置されており、アメリカ海軍機への給油にも後付け装備なしに対応した。
機体が大きい分、燃料搭載量・輸送機としてのペイロードもKC-135を上回る。
ただし60機しか生産されなかった事からもわかるように、KC-10はKC-135を代替するものではなく両機種は並行して運用されていた。
オランダにいるそっくりさん
KC-10は、KC-135と違って輸出されていない。
ただしオランダ空軍には、同じくDC-10をベースにした「KDC-10」が運用されている。
見た目はKC-10に似ているが、こちらは中古のDC-10を改造したもので、ブーム操作はテレビカメラの映像をモニター画面で見ながら行うなどの違いがある。
退役
2024年9月、KC-10の最後の機体がアメリカ空軍から退役。先任のKC-135よりも先に姿を消す事となった。
一方、オランダのKDC-10はそれよりも前にA330MRTTに代替されて退役し、空中給油を請け負う民間軍事会社オメガ・エアに払い下げられている。