概要
TRUMPシリーズ。2014年上演。
出演者はモーニング娘。'14の一部メンバーとスマイレージ。
正式タイトルは『演劇女子部 ミュージカル「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」』。
発表当初、TRUMPシリーズとのつながりは設定だけとされていたが、実際には大きく関与している事が判明。その後TRUMPシリーズのファン(主に女性層)が続々とチケットを購入し、男性比率が高かった観客席が様変わりしたという。
凄惨なエンディングの衝撃はすさまじく、初日はカーテンコールで観客が拍手を忘れてしまい、演者であるメンバーは当初「そんなに面白くなかったのか」と落ち込んだという。
2015年、感謝祭にて短編劇『二輪咲き』が上演。シルベチカを中心とした前日譚が描かれる。
2020年、続編として音楽朗読劇『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』が発表。
鞘師里保演じるリリーが旅の中で出会う様々な人々との出会いと別れがオムニバス形式で展開される、『雨下の章』『日和の章』の2つの物語が同時上演された。
2023年、改稿と新楽曲を携え、『LILIUM -リリウム 新約少女純潔歌劇-』として再演(リブート)。
新キャストは全員オーディションによって選ばれ、公式サイトで発表された。5月には配信が行われ、『二輪咲き』が本編終了後に再演された。
あらすじ
血を糧とする種族・吸血種(ヴァンプ)の少年少女が療養するクラン「サナトリウム」。
人間の思春期に該当する「繭期」と呼ばれる期間、特殊な精神状態にある少年少女を世間から隔離して教育するこの施設には、花の名を冠した多くの少女達が、退屈だが平和な日々を営んでいた。
吸血種の少女・リリーはある日、友人のシルベチカが失踪した事を知る。シルベチカを探すリリーだが、他の少女達は「シルベチカなんて知らない」と言い、リリーは繭期の自分が作りだした幻覚なのかと思い悩む。
そして日頃は単独行動を好む少女・スノウが「シルベチカは探さない方がいい」と告げた時から、静かに、だが確実に、花園は崩壊へと向かい始める……
主な登場人物
リリー
演-鞘師里保(モーニング娘。'14)/内田未来(新約)
本作の主人公。心優しい少女で、忌み嫌われるマリーゴールドに対しても「友達」として接している。
何故か皆が忘れてしまったシルベチカの記憶を保持しており、物語序盤から探し続けているが、他の仲間からは信じてもらえない。男子寮から遊びに来たファルスに絡まれてもぶん殴り、「断りなく触るなんて信じられない!」と言い放つ気の強さを見せる。
スノウ
演-和田彩花(スマイレージ)/浜浦彩乃(新約)
もう1人の主人公。
物静かな少女で、必要以上に他の人物と関わりを持たない。周囲からは「変わった子」として認識されており、声をかける者はいない。
サナトリウムとシルベチカの秘密を知っているような素振りをみせ、リリーに「シルベチカは探さない方がいい」と忠告する。
ファルス
演-工藤遥(モーニング娘。'14)/大森未来衣(新約)
貧血気味で、登場するたびに転倒する少年。
無邪気な性格。チャラチャラしているが、これでも男子寮の監督生をキャメリアと共に務めている。
「むさ苦しいので」と理由をつけては男子寮を抜け出し、女子寮に顔を出してちょっかいをかけてくる。
マリーゴールド
演-田村芽実(スマイレージ)/斎藤瑠希(新約)
陰鬱で卑屈な少女。ダンピール(吸血種と人間の混血)で、リリー以外の大半からは「ドブネズミ」呼ばわりされて嫌われている。
実の母親から「あなたは不幸を呼ぶ」「誰も愛してはいけない」と言われた上に殺されかけた過去を持つ。
唯一自身を「友達」として手を差し伸べたリリーに対し「独り占めしたい」と思うほどに執着する。
紫蘭・竜胆
演-福田花音(スマイレージ)/白鳥光夏(新約)
演-譜久村聖(モーニング娘。'14)/河本彩伽(新約)
女子寮の監督生で、サナトリウムでは年長。
二人揃って繭期にある少女達を統括し、教育を行っている。サナトリウムの長「御館様」を知る数少ない人物。
キャメリア
演-中西香菜(スマイレージ)/齋藤千夏(新約)
男子寮の監督生。
折につけて女子寮を訪問するが、本人はその理由を忘れてしまい思い悩んでいる。
同じ監督生であるファルスとは友人で、貧血症状に陥った所を介抱する。
シルベチカ
演-小田さくら(モーニング娘。'14)/北御門亜美(新約)
突如クランから姿を消した本作のキーパーソン。何故かリリーとスノウ以外は彼女のことを覚えていない。
物語中盤で在籍名簿にシルベチカの名前を発見されたのを機に、「本当にシルベチカがいた」ということが寮生全員に知れ渡り、彼女の身に何が起こったのかが判明する。
関連イラスト
ネタバレ
リリー
既に800年を生きている少女。不老薬「ウル」を飲み続けたことにより、老いる事のないまま長い時間を生きていた。
「御館様」ことファルスのイニシアチブによって記憶を操作され、自身もそれを知らないまま生きていた。しかし800年間もファルスの血を摂取した為に同化が始まり、イニシアチブも効かなくなる。それどころかファルスと同化しているため、全員のイニシアチブを握っているファルス同様、リリーも全員に対して従わせることが出来る。
終盤では人の生命を道具のように扱い、永遠の夢の世界を作り出したファルスに反抗。「夢から覚める時」としてイニシアチブで全員を殺し合わせ、自身もそこで死を選ぶ。しかしスノウと違い、死ぬ事ができなかった。
全ての始まりである「TRUMP」、ファルスに続いて三人目の不死者となり、死を望んでファルスを探し続ける事となった。
その後の様子は朗読劇「黑世界」で明らかとなった。
繭期ゆえの異常な躁状態になったり、不老不死の体質が災いしてトラブルに巻き込まれている。精神世界に構築した別人格に、かつて友人だった「チェリー」の名をつけ、終わりのない旅を続ける。とある家族と過ごした日々に安らぎを得た事もあったが、長くは続かなかった。
サナトリウム崩壊後の消息も判明。ヴラド機関に捕らえられ、TRUMPとファルスへの干渉が出来ない事情を踏まえた上で、「不死者の研究」という名目で拷問と呼ぶのも生ぬるい人体実験を繰り返され、廃人になっていた。それでもその心は決して壊れる事なく、スノウフレークの花を見て涙を零したのを見た一人の研究員によって逃がされる。
スノウ
リリーと同じく800年前から生きており、彼女もファルスと同化しかけている。その兆候が現れたのはリリーよりも早く、物語開始の時点で真実を全て知っていた。
クランにきた当初はリリーとは親友だったが、記憶をリセットされて永遠の夢に置かれ続ける少女達をよそに、全てを諦めてファルスに従属する。そして誰からも距離を置き、沈黙を貫き続けた。
終盤、自身を深く憎んでいるマリーゴールドの記憶をイニシアチブによって蘇らせ、彼女に殺される道を選ぶ。リリーとは違い、不死にはなっていなかった。
ファルス
サナトリウムの創設者「御館様」であり、ファルスは偽名。
本名はソフィ・アンダーソン、3000年前から生き続けている不老不死の吸血種である。
数奇な星の下に生まれ、はじまりの吸血種「TRUMP」によって望まぬ不死を与えられる。唯一TRUMPによってのみ死ねる事から、長い時間をかけて彼を探していた。
しかしその心は「永遠の繭期」にあり、永劫に続く不死ゆえの寂しさから狂い始める。「永遠に枯れない花」を求め、繭期の少年少女を拉致しては自身の血から作った不老薬「ウル」を飲ませて「寮生」とした。貧血気味だったのはこの為。また寮生全員のイニシアチブを掌握し、「共同幻想」の下の覚めない夢の中に閉じ込めた。
この頃の出来事は「マリーゴールド」で描かれており、マリーゴールドとなる前の少女を自分の支配下に置き、同時にサナトリウムの秘密を守る為に大惨事をもたらした。
不死であるかどうかを確かめる為に、優秀と見なした少年少女を刺しては「聖痕(スティグマ)」を刻むが、例外なく死んでしまった。繰り返される死に絶望した彼は実験を辞め、「ウル」を摂取する限り続く不老のみを与え続ける道を選ぶ。
800年前から生き続けるリリーとスノウに対しては「優秀」と称し、もしかしたら自分と同じ不死かもしれないと望みを掛けているが、実験の末に生き返らなかった時のリスクを考えて躊躇っている。
また、長く生きてきた2人にはイニシアチブが効かなくなっており、同化し始めている。
終盤、全員に正体がバレるもイニシアチブによってリリーとスノウ以外の記憶を消し、また元通りにしようとする。しかしスノウがマリーゴールドの記憶を蘇らせ、殺されてしまう。これに激昂してマリーゴールドを焼き殺すが、一連のことを見てきたリリーがイニシアチブを使ってクラン全員を殺し合わせ、本人も命を絶った(ようにみえた)ことに激しく絶望。それでも「自分には時間だけはある、それこそ永遠に」と嘯いて姿を消した。
しかし、彼との同化が進んでいたリリーは不老不死となっており、皮肉にも彼が待ち望んでいた「永遠に枯れない花」の完成を知らないまま、放浪を続ける事となる。
マリーゴールド
リリーへの執着から、彼女がスノウが話しているところを見ると「嫌な感じ」になり、「スノウはリリーに破滅をもたらす」と考えて彼女に憎悪の感情を抱く。
物語が進むにつれてその感情はさらに高まり、他の少女達に噛み付いてイニシアチブを掌握。スノウを殺すよう差し向けた。
終盤、他の寮生と同じように全ての秘密を知った後にファルスから記憶を消されるが、自らの死を望んだスノウがマリーゴールドの記憶を蘇らせる。そこでスノウに対する憎しみの感情を思い出し、彼女を刺し殺した。そのことがファルスの怒りを買い、彼から焼き殺されてしまった。
だが燃え尽きる前にファルスを嘲笑い「あんたもあたしと同じ、可哀相な人」と言い放ち、これが花園の崩壊の決定的なきっかけとなる。
後にミュージカル「マリーゴールド」にて、サナトリウムに来る前、別の名前で呼ばれていた頃が描かれる。そこで明らかとなった過去のあまりの凄惨さに、多くの観客が頭を抱える事になった。ちなみにとある演者は「(この話を考えた)末満さん、緑色の血が流れてる」と言っている。
また彼女の先祖と思われる人物が舞台「グランギニョル」にて示唆されている。
紫蘭・竜胆
「御館様」ことファルスに忠誠を誓い、彼の意を汲んで少女達を監督している。彼に寄り添い支えようとするが、実はそれさえもイニシアチブによって縛られている。
サナトリウムの秘密を知った少女達を始末しようと動くが、予想外の抵抗によって逃亡を許してしまう。最終的にリリーによってイニシアチブを掌握され、互いに殺し合う事でその生を終えた。
「マリーゴールド」ではファルス=ソフィの忠実なしもべとしての姿が描かれる一方、ソフィの妄想の中では彼の行いを嘲笑っている。また書き下ろし短編「ホフマンと双子の繭期」では、二卵性の双子である事が判明した。
「黑世界」でもリリーの妄想に登場し、彼女が犯した罪を面罵している。
キャメリア
シルベチカと深く愛し合い、将来を誓っていた。
10年前の事件では、自分達のイニシアチブを掌握するファルスを殺そうとするが果たせず、目の前でシルベチカが死ぬ所を見てしまう。
イニシアチブによってシルベチカの存在を抹消されるが、かつての行動をなぞるように女子寮をたびたび訪問し、その度に理由が解らず思い悩んでいた。終盤になって記憶を取り戻し、愛していた少女を思い出して慟哭する。最終的にリリーによる命令に従い、殺し合いの末に死を迎えた。
後にミュージカル「マリーゴールド」にて、ファルス=ソフィの親友「ウル」としての人格を設定されて同行。マリーゴールドとなる前の少女を迎える為に、人間の街で大殺戮を行った。
本人はずっと自分はウルだと認識しそのように振舞っていたが、ある理由から不安定な状態に陥ったソフィの命令によって設定が解除され、本来の人格を取り戻す。
シルベチカ
物語の開始時点で、既に死亡している。
かつてはキャメリアと深く愛し合い、将来を誓っていた。
10年前、今まで薬を飲まされていたことの真相を知ってしまう。それを機に薬を飲むことを拒んだ結果、薬の効果が切れて一気に老いを迎えた。
自らの名前(シルベチカ=ワスレナグサ)になぞらえるかのように「私を忘れないで」という言葉を残し、塔の上から投身自殺した。
ファルスのイニシアチブによって寮生の記憶から存在を抹消されるが、リリーやスノウは彼女を覚えており、またキャメリアも朧げながらに空白の存在として認識していた。
LILIUMから50年前の出来事を描いた短編劇「二輪咲き」では主人公を務めた。
夢を見て「自分は死んだ」と思い込んだり、約束を忘れたり、つい先程会ったばかりの相手に「久しぶり」と言ったりと、天然な部分が見受けられる。
友人のリコリスとはよく行動を共にするが……
以下、更なるネタバレ
実は二重人格である。
また繭期の症状として未来を予知し、自分の最期を知覚していた。
リコリスとしての人格はキャメリアを愛し、シルベチカは幼馴染のチェリーとキャメリアを応援しているに過ぎない。しかし周囲からはキャメリアと愛し合っているのはシルベチカだと認識されていた。
「マリーゴールド」では、彼女がファルス=ソフィにイニシアチブを掌握される場面が描かれる。
イニシアチブの支配下から免れたリコリスによってギリギリの所で抵抗し、同じように犠牲になりかけていた一人の少年を逃がす事に成功。その奇蹟のような出来事は、しかし後に新たな悲劇を産む事となった。
関連タグ
表記揺れ
LILIUM リリウム LILIUM-リリウム少女純潔歌劇-
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