概要
Long Term Evolution(LTE、ロング・ターム・エボリューション)が正式名称である。第3世代移動通信システム(3G)であるW-CDMAやCDMA2000は特許使用料が高かったなどの理由で日本や韓国など一部の地域以外では当初期待されたほど浸透せず(多くの国で普及が本格化したのは2000年代末になってからである)、特に新興国ではあまり普及しなかった。また、3Gが第2世代移動通信システム(2G)比でいくら高速化したとはいっても固定回線の回線速度とは歴然とした差があり、動画コンテンツなどを日常的に楽しむのは現実的ではなかった(3.5G)。
LTEでは3Gを上回る高速度・大容量の通信を低価格の特許で実現できるようになっている。3Gを導入せずに2GであるGSMから一足飛びにLTEを導入するという事業者も多く、大容量通信を行うスマートフォンが普及するのと歩調を合わせて世界中で使われるようになった。
技術
第4世代移動通信システム(4G)に用いられる技術を先取りして採用しており、4Gにスムーズに移行するための橋渡し役として、第3.9世代移動通信システム(3.9G)などと呼ばれる。3Gとは全く互換性が無く、端末がLTEと従来方式(2G含む)のエリアを行き来する際の手続き手順(ローミング)の仕様が策定されているだけである。
なお、LTEの発展規格であるLTE-Advancedはれっきとした第4世代(4G)の規格の一つとされているが、LTEは3Gとはほとんど共通点がなくLTE-Advancedとの共通点が多いため混乱を招いた。結局、ITU(国際電気通信連合)から「著しく進化し、4Gに近い通信速度を提供できるLTEとWiMAX(3.9G)、HSPA+(3.75G)の3種については4Gと呼んでも良い」との勧告が発表されている。
複信方式の分裂
LTEはその複信方式についてFDD(周波数分割複信)を採用するのが当初の予定だった。しかしそこに異を唱えたのが中国である。
FDDはその内容から当然であるが上下の通信に別の周波数帯を用いるが、まとまった周波数帯を確保しづらい中国やインド等の新興国ではFDDの採用は難しかった。そこで中国は複信方式にTDD(時分割複信)を採用したTD-LTE方式を独自に開発し始めたのである。
TDDでは原理的に上りと下りの電波が混信しない様、電波を発射しない時間帯を設ける必要があり高速化には不利であるとされているが、中国企業が主導でかなり頑張ったそうで、通信速度そのものには大きな差は無いところまで開発されたそうである。
そんなわけで、現在LTEにはFDDなLTEとTDDなLTEの二種類が存在し、しかもTDDなLTEはWiMAXの次世代規格であるWiMAX2とかなり似たものとなり、しかもWiMAX陣営はそれを見てTDDなLTEとの互換性を視野に入れたWiMAX2.1なる規格を作り始める始末であーもう面倒くせえ!
LTE-Advanced
先述のとおりLTEを発展させた規格であり、変調方式の工夫やMIMOという複数アンテナの同時通信を取り入れることによって、理論値でLTEの10倍以上の速度が出る。また、キャリアアグリゲーションといって、複数の周波数帯に同時接続することによって速度向上・接続安定性の向上を狙うこともできる。
規格上想定される通信速度の理論値はNIMOに用いるアンテナの本数や変調方式で複数の種類があるが、2015年の登場時点で下りの最大速度は150Mbpsを超えていた。2020年時点では1Gbpsを超えるものもあり、下手な光回線を凌駕する速度が出る。実際にLTE-Advanced(やモバイルWiMAX)が登場してからはモバイルルーターに頼って固定回線を持っていないユーザーが激増した。
もっとも上りの速度はそれほど早くはなく、ネット配信などには向かない。また通信の遅延や安定性、コストに関しては固定回線に分があり、特にネットゲームなどでは遅延の大きさは致命的である。
日本におけるLTE
日本での商用LTEサービスはNTTドコモが先行した。
NTTドコモの場合
NTTドコモは2010年12月から「Xi(クロッシィ)」として商用サービスを開始した。これはFDDなLTEである。2011年末頃からXi対応スマートフォンなどを積極的に導入しており、混雑が激しくなりつつあるFOMAネットワークからの移行を推進している。
2.1GHzをメインとし800MHz・1.5GHz・1.8GHzでもサービスを開始している。2015年には700MHzの利用も開始した。
auの場合
auは、『au 4G LTE』というブランド名で2012年夏~秋に商用サービスを開始している。これもFDDなLTEである。2013年3月末に全国の実人口カバー率96%を目指すとしている。周波数は800Mhz帯をメインとしており他の事業者と比べ電波の届く場所が多いという特徴を持つ。混雑する大都市圏では、1.5Ghzおよび2Ghz帯も利用する。
KDDI傘下のUQコミュニケーションズが採用しているWiMAXは、LTEサービス開始後も併存させる。
UQコミュニケーションズは次世代として前述したWiMAX2.1を採用する「UQ WiMAX 2+(仮称)」を発表した。結果的に同グループ内でFDDなLTEとTDDなLTEが併存する形となってしまっている。
ソフトバンクの場合
ソフトバンクモバイルは2012年に「SoftBank 4G LTE」という名称でサービスを開始した。これもまたFDDなLTEである。主に2.1Ghz帯を使用している。イー・アクセス買収によって取得した1.7Ghz帯も利用する様だが、経営まで統合するのかそれとも乗り入れることが出来る様にするだけなのかはまだわかっていない。
またそれとは別に、傘下のウィルコムが開発したXGP(PHSの系統の通信技術)をベースにしたAXGPと呼ばれる規格を用いたサービス「Softbank 4G」を2012年2月から提供開始。2.5Ghz帯で展開されている。このAXGPと呼ばれている規格、その正体はTD-LTE(TDDなLTE)そのものと言って差し支えない。XGPが高速化のためにいくつかの互換性を失うような仕様変更をしてAXGPを作った結果、TDDなLTEと同じ様なものになってしまったというような感じである。したがって、AXGPもLTEの一種という扱いもできるのだが、その辺はたぶん大人の事情であって、今後も公式でLTEを名乗ることはおそらくないと思われる。
ちなみにソフトバンクモバイルには「ULTRA SPEED」と呼ばれるサービスもあるが、これは上のほうで出てきたHSPA+という規格を用いており、旧イー・モバイルの「EMOBILE G4」と同等のもの。
ワイモバイルの場合
旧イーモバイルでは2012年3月サービス開始。スタート時の名称は「EMOBILE LTE」という名称。1.7Ghzを使用している。
将来、700MHz帯でのサービス展開も予定している(免許取得済)。
ワイモバイル網+ソフトバンク網の両方のLTEを使える(状況に応じ自動切替)が、機種により乗り入れ先が異なる。
例として、Nexus5の場合は2.1GHz帯・900MHz帯に、EM01F(ARROWS S)の場合は2.5GHz帯に乗り入れが可能である。
小ネタ
韓国語のWebでは、LTEを縦に並べたように見えるハングル文字「눝」(ローマ字に直すと nut)の一文字で表されることがある。このことが2012年9月頃にTwitterなどで話題になった。