第4世代移動通信システムであるLTE-Advancedの次の世代となる通信システムで、日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの各社により2020年にサービスが開始された。一般的には5Gと表記されることが多い。原則的にワンセグは搭載されなくなった。
概要
「サブ6GHz帯(Sub6)」と言われる3.7GHz帯および4.5GHz帯で従来のLTE/LTE-Advancedとの互換性を保ちつつ、新たに「ミリ波帯」と言われる28 GHz帯域(この帯域は厳密にはセンチ波帯に含まれる「準ミリ波」である)を使ったより高速・大容量の通信方式も導入する。
大容量通信が低価格でできるようになること、遅延が著しく短縮されること、同時接続数が4G比で10倍以上に増加することなどが特徴。Sub6は従来の携帯電話のように広い地域をカバーするのに向き、ミリ波帯はイベント会場など混雑エリアをスポット的にカバーする用途に向く。auとソフトバンクは4G向け周波数帯である3.5GHz帯や2.5GHz帯も転用して5G エリアを広げる方針だが、ドコモは4Gと同じ周波数では5Gの高速・大容量を生かせないとして慎重な姿勢を示している。
サービス開始時の回線速度は、受信時最大が2.0~3.4Gbps、送信時が最大103~182Mbps(キャリアにより異なる)。将来的にはミリ波帯の利用によって20Gbpsを超える速度が目指されている。当面はSub6でのエリア展開がメインになる見通しで、5G対応をうたっていてもミリ波帯には対応しない端末も多い。
特徴
- 高速大容量
より大容量のデータ通信を低コストで実現できる。が、LTE-Advancedでは既に1Gbpsを超える高速通信サービスが提供されており、4Gの時点で充分な高速化が実現している。もちろん理論値であり実効速度は数分の一以下だが、ほとんどのユーザーにとってはそれでも十分である。5Gの通信容量が本領を発揮するのはVRなど没入型の体験が普及してからだと考えられる。
- 低遅延
オンラインでネットゲームなどを楽しむユーザーには気になるポイントだろう。4Gの遅延は最大で50ミリ秒程度とされており、マイクロ秒、ナノ秒単位の光回線と比べるともう問題にならないほど遅い。5Gでは遅延が1ミリ秒未満に短縮され、自動運転や遠隔手術などリアルタイムでの通信が要求される用途に活用されることが期待される。
- 多数同時接続
実は5Gではこれが一番期待されているポイント。1平方kmあたり100万端末が接続できるとされ、イベント会場などで「電波が繋がりにくい」という問題が解消するのはもちろん、ネットに繋がった人工知能が人間を介さず相互に通信するのが当たり前になる。もっともIoTやM2Mの実現には5Gは必須ではなく、現に4Gや無線LANが主流の2010年代末~2020年代初頭において既に実用化が進んでいる技術である。
欠点
- 通信距離が短く、障害物に弱い
建物の壁や大気・雨といった障害物に弱い。特にミリ波帯は物陰に入ったり少し離れたりすると途端に通信できなくなる。ミリ波帯の場合、4Gと同程度の密度のネットワークでは繋がらないスポットだらけになるため、無線LANのアクセスポイント並みかそれ以上に高密度に基地局を設置しなければならない(スモールセル)。
Sub6は比較的障害物に強く少数の基地局で広範囲をカバーできるが、原理的に準ミリ波ほど高速大容量化はできない(ビームフォーミングなどの新技術で4Gよりは高速化するが)。