ウルタール
うるたーる
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが創出した架空の街。
綴りは「Ulthar」で邦訳ではウルサー、ウルサルとも呼ばれる“ドリームランド”の地球に存在するとされる町。
初出は、ラヴクラフトの短編『ウルタールの猫』(1920年11月)であり、後に『蕃神』、『未知なるカダスを夢に求めて』でも登場した。
猫を何人も殺してはならないという奇妙な法律で知られる。
ドリームランドの地球、“魔法の森”を抜け、スカイ川の川沿いの小さな町で4万年程前に近隣のハセグやニルの町と同期に出来たとされる。
ニルからスカイ川にかかる橋を越える、あるいはダイラス=リーンからスカイ川を7日間北上したところにあるとされる。
郊外に農場や牧草地帯が広がり、町中に玉石敷きの通りや古風な尖り屋根の家々が立ち並ぶ爽やかで古都の趣ある非常に美しい町で、主な産業はキャベツや毛糸。
また、交通の要所にある為、行商や往来が盛んであるといわれており、その関係でダイラス=リーンから商隊や流浪の民のキャラバン隊が年に2回街を訪れるという。
街の最も高い丘の上には迷える“夢見る人”に助言・忠告を授けてくれる齢300歳を超える大賢者・神官アタルが守護する“古き神々”の神殿が有り、ロマールから持ち込まれた最も古い魔導書である“ナコト写本”の最後の1冊や“サンの謎の七書”を始めとする数々の魔導書が安置されているとされる。
出来た経緯の詳細は省略するが、ウルタールの町には“何人たりとも猫を殺してはならない”という法律が定められており、ドリームランドを語る上では枕詞用に使われる重要な要素となっている。
その為、町には既に絶滅したものを含めた様々な種類の猫たちが自由気ままに暮らしており、町には猫が溢れかえっている。そしてそんな猫たちを町の人々も可愛がっているという。
また、猫たちも人語を解する知性と勇気を持ち合わせており、非常に義理堅く、彼らの言葉に通じていれば会話も可能という、猫が好きな人たちにとって天国のような場所となっている。
ちなみに現在は町に猫たちの神殿もあるらしい。
クトゥルフ神話の産みの親、ラヴクラフトは猫好きで知られ、彼の崇拝者ロバート・ブロックから狂える詩人、バテスト神官ラヴェ=ケラフの異名を捧げられている。またラヴクラフトはダンセイニ風の短編ファンタジーを書こうと考えており、復讐をテーマにして『ウルタールの猫』を執筆した。
ウルタールが登場する一連の物語は、ウルタールの司祭、賢者アタルの年代記でもあり、『ウルタールの猫』ではまだ幼い宿屋の息子だったアタルが『蕃神』では賢者バルザイに弟子として師事し、『未知なるカダスを夢に求めて』では、300歳以上の神官として登場することになる。