概要
北米で打倒ベンツ/BMW/キャデラックを狙って設立され、アメリカ合衆国で大成功をおさめたブランド。LS(トヨタ・セルシオ)やGS(トヨタ・アリスト)などレクサス系の車種は、当初日本市場においてはトヨタブランドで投入されたが、2005年秋口に日本でもレクサスに切り替えられた。
こういった歴史的経緯から「所詮はトヨタ」と言うところがバレ切ってしまっているのか、ドイツ車信仰の強い日本ではベンツやBMWに太刀打ちできているとは言いづらい。
日本においてはマークXの3.5Lモデルを買えるくらいの経済力があればエントリーモデルのIS250くらいなら購入可能という価格設定になっている。しかし、同クラスのトヨタブランド車や他社製品と比較するとやはりボッタクリとも言うべき価格差が見られる。(国産どころか、ベンツやBMWまで射程圏内に入ってしまう。)
一方
・ISおよびGSの3500cc車は日本向けトヨタ車のカタログモデルでは初の280ps越えを達成している
・IS-Fにはブレンボ製キャリパーを奢っている
など、所々に「トヨタの本気」が見え隠れする事もたまにある。
その本気、幾分かトヨタブランド車にも回せばいいのにと思うがさすがに無理だろう。
日本での反応
ブランド日本導入前
アメリカでブランドが設立されてから日本に凱旋投入されるまでには15年もの歳月が流れていた。そのため、当然海外仕様気分を味わいたいユーザーがセルシオ(現:LS)やアリスト(現:GS)などのような日本仕様車のエンブレムを貼り替えるなど各種パーツを交換するドレスアップスタイルが生まれ、今日でも定着している。
また「レクサスES300、日本名ウィンダム」のキャッチコピーに代表されるようにトヨタ自身が積極的にネタバレさせた時期がある。
同様に「レクサス=トヨタ」と言うことをバラシてしまうCMはセルシオ、アルテッツァ、ソアラでも見られた。
さらに、GS・ISのシャーシ構成にはクラウン・マークXとの共通性が見受けられる・・・と言うか、WikipediaのマークXの項目にはGS・クラウンと車台を共有しているという記述さえある。
同様にESもカムリとシャーシを共有しており(と言うかそもそも、初代ES=日本名:カムリプロミネント)、この件に関してはBMWにズバッと言われてしまったなんて言う話もあるらしい。
レクサス店オープン後
上記の事情があってか、日本においてトヨタブランドとの差別化に成功しているとはとても言い難いのが現状であり、いずれの車種もトヨタ時代より売上が落ち、レクサスブランドの導入は完全に逆効果となった。
【名前が浸透しない上に難解】
レクサス店オープン時点(2005年)で初代セルシオデビューからは16年、アリスト・ウィンダムは14年経過しており、トヨタ時代の車名の認知度は高かった。また日本車においてはまるで形式名のような「LS460L」「GS450h」といった英数字の組み合わせのみで構成され、しかもグレード名(の一部)まで内包される車種名は(グレード名ならともかく)車種名としてはほとんど例がなく、日本人にとっては「セルシオ」「アリスト」といった「名前」を持っていたトヨタブランド時代の方が親しみやすかったとも考えられる。それらから「元○○」と言われてしまうことさえ珍しくない。さらに富裕層=高齢層ともなれば新しい名前を定着させるのは難しい。実際、日産・シルフィの場合だと「しる・・・ふぃ・・・?」「新しいブルーバードです。」というやりとりが行われることもあるという。
名称 | 車種 | 排気量 | 特記事項 |
---|---|---|---|
LS460L | LS | 460=4.6L | L=ロングボディ |
GS450h | GS | 450=4.5L並の動力性能(実際は3.5L) | h=ハイブリッド |
NX200t | NX | 200=2.0L | t=ターボ |
さらに、この上に"Version L"とか"F SPORT"とかのようなサブグレード名まで付く。
確かに・・・例えばカローラ「X」グレードにビジネス向けの「アシスタパッケージ」、と言った具合に他の車種でもサブグレード名が付くことは多々あるが、そもそも・・・車種名が例えば「IS」なのか「IS250」なのか混乱を招きかねないような状況下では、さらなる混乱を招くことは想像に難くない。
これは輸入車でも同じ傾向がある。例えばフォードやフォルクスワーゲンのように「名前」が付くことが多い場合は「マスタング」、「フォーカス」、「ゴルフ」、「up!」とかと言った具合に名前で呼んで貰えることもあるが、逆にメルセデス・ベンツやBMWのように「英数字の羅列」だったりすると、例えばAクラスでもSクラスでも関係なしに「ベンツ」とだけ言われてしまうのである。そもそも「ベンツのA160」と言われても、「A160」がグレード名のように聞こえてしまい「Aクラスと言う車種の1600cc」とはなかなか認識して貰えないだろう。
【トヨタ内で顧客が移っただけ?】
先述のようにレクサスブランドで販売される車種は既にトヨタブランドで日本仕様車が販売されていた。それ故、「クラウンやセルシオなど、トヨタ車オーナーの乗り換え需要に支えられているのが現状である。
それ自体は問題ないのだが、肝心の当初目標である他社(特にいわゆる高級外車)オーナーの取り込みには成功していない状況下では、結局あのクソ高い店舗を作っただけに終わると言うことになる。また例えば地場のレクサス店をネッツ店(ex.愛媛県)やカローラ店のみが運営していた場合、結果としてトヨタ店やトヨペット店はセルシオというドル箱を奪われる格好となる。
【あまりにも拠点が少なすぎる(遠すぎる)!!】
例えばLSの場合、セルシオ時代であれば全国津々浦々にある、しかもトヨタ店とトヨペット店と言う2系列で扱っていたためどんな田舎でも10万人クラスのいわゆる地方都市レベルならまずメンテナンスには困らなかった。しかしLSになった現在では下手したら100km離れた県庁所在地(※一部例外はあるが)にまでわざわざ出てこなければならない。
例えば愛媛県四国中央市 旧川之江市(※愛媛と香川の県境にあり、トヨタブランド全系列が揃う)を起点とした場合、やはり100km近くの距離を移動しなければならない。
※今回の前提条件:Googleマップで検索、高速道路利用
起点:愛媛県四国中央市妻鳥町 フジグラン川之江
プランA:同県松山市「ネッツトヨタ愛媛 レクサス松山インター」・・・86.5km
プランB:香川県高松市「香川トヨタ レクサス高松」・・・72.8km
この距離は無視できない問題である。
仮に系列店舗(この場合であればネッツ愛媛/香川トヨタ)が持っていってくれたとしても、キャリアカーを走らせるためのコストや時間が余計にかかってしまう事には違いない。何せ片道70~90kmも離れているのだから。それもたかが車検や日常的なメンテナンスのために、である。
ましてCT・HS・ISあたりのような「ちょっと高級な足」を、それもクルマがなければどこにも行けない田舎で乗っていようモノなら・・・。
・・・とまぁ、「維持に手間の掛かるトヨタ車」がベンツ並みのプライスタグってどうなのよ?
拠点が遠いって事はメンテ機会が限られるって事でもあるわけで・・・。
さらに都市郊外では、輸入車ディーラーがあるのに逆にレクサスディーラーが無いという逆転現象が起きている。
【総じて言えば・・・】
・・・ホント、あの店は上から目線なのかおもてなしなのかハッキリしろこの野郎。
言うなれば、当時の日本でイケイケとも言われた外車を見てしまっていたがために、それこそ日本人の好みと傾向を知り尽くしているはずの「いつもの商魂たくましいトヨタ」なら絶対考えなかったであろう「アメリカで成功したモノを日本にそのまま持って来る」というとんでもない戦略ミスをしてしまい、結果トヨタの歴史上希なほどの大失敗をカマしてしまった可能性すらある。
あの真っ黒い販売店はその多くが既存トヨタディーラーの運営であり、入りづらさに苦慮しているのか運営会社によっては「系列トヨタディーラーでも販売やアフターサービスを行う」「リーフレットを置く」などの措置を取る事例が見受けられる。
競合他社の反応
日本において、同様のブランドを擁する日産とホンダがそれぞれのブランド、インフィニティとアキュラを日本に投入しようとした。しかし、リーマン・ショック後の経済状況の悪化が影響してかどちらも立ち消えとなっている。 その結果、両社とも軽自動車やコンパクトカーといった薄利多売による販売政策を行った結果、日本国内での売り上げが減少するという悪循環に落ちる羽目となった。
正直、トヨタともそうだが総車種数は変わらないのだからわざわざディーラーを立ち上げてまで投入するのは得策ではない。(むしろトヨタの場合、設立以降ESは投入されずウィンダムが消滅してしまった。もっとも、上述のようにES=ウィンダム自体が所詮はカムリ派生モデルであるという禁断のツッコミをされては何も言い返せないのだが。)
特に日産の場合・・・
日産車はトヨタ車に比して動的な性能を押し出す傾向があるわけだし、インフィニティを導入したところで車種数が増えるわけでもない。だから(少なくとも今の段階では)むしろGT-Rを大切にする方が賢明であろう。
GT-Rを整備するハイパフォーマンスセンターは基本的に機材・人材の導入でGT-R対応を図ってはいるものの、それでも基本はマーチを販売・整備する「普通の日産ディーラー」である。そして店舗自体も既存のモノを使用している場合が多い。
当然、レクサス店のような異常なまでの敷居の高さ(例えばこの場合、ネッツ店運営のレクサス店でスターレットのタイヤ交換頼む勇気ある?ということ)も存在しない。ここが大きな違いである。 但し、GT-Rブースでは近寄りがたい雰囲気があるのも事実だが…。
もしインフィニティ店を設立した日にはそれこそ大変な事態に陥ることは想像に難くない。シーマやスカイラインなどの名が消える可能性が一気に高まるからである(とうとうV36ではインフィニティエンブレムが付けられるなど、半ば無くなっている状態だが)。
特にスカイラインは半世紀の歴史があるだけに、ファンから「なんで半世紀の歴史を持つスカイラインの名前を消したんだ!!」というブーイングが殺到することは必至である。
そういった世代も高齢化を理由に減少している事もあり、日本国内の収益の安定化を図るためにいつかは投入せざるを得ない時が迫っているかも知れない・・・まぁしかし、レクサスが大失敗していると言える現在ではインフィニティ投入だなんてあり得ない話であろう。