アスラが裁くとは、pixivユーザー鼻氏によるオリジナル漫画作品である。
概説
鼻氏が自身のサイトに連載していたものを、pixivへ転載した作品。
基本的にサイト本家で公開したのち、pixivでの公開となっている。
あしたのヤングジャンプ、ニコニコ静画でも掲載中。
主人公の霊能少年と、少年の相棒で神様見習いの鬼神「アスラ」による修行の日々を描いたオカルトホラー作品。
見どころは何と言っても、商用漫画作品に引けを取らない内容の濃さと展開の熱さ、ときに不意打ちのように襲い来る死生観への問いを伴った感動の展開だろう。
あとアスラさんかわいい(重要)。
ホラー作品だけに幽霊のおどろおどろしさも迫力があり、荒いタッチの画風が、より不気味さを演出してくれている。
苦手な人は夜中に読まないように。
あらすじ
葉北高校の2年1組には阿部清弘(あべきよひろ)という問題児がいる。
日頃から授業も受けずフラつき、起こした騒動は数知れず。
そのクラスメイトで学級委員長の中村美幸(なかむらみゆき)は、どうにか清弘に授業を受けさせようと苦心する日々が続いている。
ある日、清弘が立ち入り禁止の屋上に向かうのを追跡する。
するとそこには勝手に動く日本人形と会話する清弘の姿があった。
清弘に「アスラ」と呼ばれる人形は、人形を依り代とする「神様」だという。
オカルトを信じない美幸は、アスラが手品で動く人形だと思っていたが、ストーカーの生霊をアスラと清弘に除霊してもらい、否が応でも信じざるを得なくなってしまう。
そして清弘により、自身が超特級の霊媒体質という事実を知らされ、清弘に半ば強引に彼とアスラの「修行」に加担する羽目になってしまい……。
登場人物
主要キャラクター
阿部清弘(あべ きよひろ)
葉北高校2年1組所属の男子高校生。本作の主人公で、白髪と耳のピアスがトレードマーク。
素行不良でサボりの常習犯、起こした騒動は数知れず。そして「霊が見える」「鞄に人形を入れて歩いている」という不可思議なうわさが付いて回っている。
家は名の知れた退魔行の寺で、一応は後継ぎ。修行としてアスラを鞄に入れて連れ歩き、普段は家から来る依頼のために屋上で不浄霊の気配を探索し、放課後は除霊のために市内周辺を飛び回っている。
不愛想で寡黙。自身の興味のない物事は全く覚えない性質で、素行不良やサボりはこの性格が原因。一応猫を被ることはできるが、その際には180度違うくらい爽やかな好青年を演じる(しかし長続きしない)。
根っからの不良ではなく、性格的に不器用なだけで根は年相応。
アスラを相棒として大切にしており、接するときも普段は見えない世話焼きな一面をのぞかせる。一方で他人との接触を極力避けるきらいがあり、どうも幼少期に原因があるようで……?
中村美幸(なかむら みゆき)
清弘のクラスメイトで2年1組の学級委員長。本作のヒロインで、黒髪ロングの割と美少女。
大変に生真面目で、サボり常習犯の清弘をどうにか授業に出席させようと奮闘している。
清弘とアスラの修行を偶然に知ってしまい、さらにその日の放課後に自身に憑いていたストーカーの生霊を除霊されたことから、清弘とアスラと深く関わっていくことになる。
当初はオカルトを全く信じていなかったが、助けられてからは不承不承信じるようになった。同調した霊と記憶を共有できるほどの超特級の霊媒体質(霊視能力はない。ついでも変人も吸い寄せる)であり、兎角霊を寄せ付ける気質を清弘に目を付けられ、彼とアスラの修行に巻き込まれてしまう。
周囲からは清弘と「良い仲」だと勘違いされ、放課後は清弘を授業に出席させる見返りとして恐怖と戦いながら修行に付き合わされと、すっかり苦労人ポジションに。
ただ根は優しく芯が強いため、決して修行の補佐からは逃げず、時に不条理な死で不浄霊となった相手を思いやって涙するなど、清弘とアスラに少しずついい影響を及ぼしている。
アスラ
清弘の鞄に入っている謎の日本人形。本作の看板キャラクター。
普段は鞄の中にいるが、自立して動き回ることができ、宙を浮いて移動することもできる。
本来の名は「阿須羅之尊(アスラノミコト)」(より正確にはもっと長い)といい、人形を依代にして神になるべく修行を重ねる鬼である。本性は清弘と同じ体格で、額に日本の角と尖った耳を持つ妖艶な姿をした美しくも恐ろし気な女の鬼だが、本来の姿はもう少し違う模様。
長い髪を無尽蔵に伸ばすことが出来、これで相手を束縛することを得意とする。本来の姿になると並の不浄霊では相手にならないほどの霊威を発揮するが、神として“慈悲を以って除霊する”ことを課せられているため、本来の力を見せることはない。
言葉を発することはないが、ときどき「くつくつ」を静かに笑うことがある。茶目っ気に溢れた性格をしており、劇中でもちょこちょこと動き回ってとてもかわいい。
清弘はもとより、美幸ことを非常に気に入っており、美幸も彼女を「アスラさん」と敬称付きで呼ぶ。
20話で鬼女形態だと漢文のような字面にルビを振る、独特の台詞回しをすることが判明した。
ある事情から雨が苦手。
葉北高校
2年1組
三宅まどか
美幸の友人。ギャル風の風貌の女子生徒。
良くも悪くもイマドキの女子高生であり、苦労する美幸を隣の席で見守っている。
清弘と美幸の関係にラブコメの波動を感じるらしく、二人をくっつけようと奮闘中。
佐原智之(さはら ともゆき)
伊達眼鏡をかけたチャラ男風の軟派な男子生徒。
明るくにぎやかだが、ナルシスト気味でちょっとウザい。
美幸に好意があり、よく馴れ馴れしく声をかけに行っているが相手にされていない。
美幸が清弘と一緒にいることを好く思っていなかったが、清水梅乃の一件以来、清弘を「きよっぺ」と呼んで親し気に接するようになる。
寺田先生
2年1組担任のおじいちゃん先生。
見た目通りに穏やかな人。
その他
隠岐すみれ
「葉北高校のマドンナ」と呼ばれる2年3組所属の美少女。
口元の艶黒子と緩く癖のある黒髪が目印で、女子高生離れした華やかな色香をまとっている。
実は清弘の元カノ(ただし清弘は不認定)。ある筋から鞄の中に人形を(アスラ)を連れ歩いていることを聞きつけ、半ば脅す形で一ヶ月ほど付き合っていた。
清弘に好意を抱いたのは本心からであり、それ自体に邪気はなかった。
なお交際中に一度寝込みを襲おうとしたが、セコム(鬼)の発動で未遂の終わった。
玄徳寺
清弘の実家。退魔行を執り行う寺として知られる。
宗派は真言宗・褪日(アスカ)派。
阿部道舟(あべ どうしゅう)
今代の玄徳寺住職であり、阿須羅之尊を封じた張本人。
褪日派の総代も兼任する。
清弘の祖父で、彼にアスラとの修行を課した。
その筋では名の知れた僧侶であり、アスラを封じたことからもその実力の高さが伺える。
17話でその力の片鱗を見せたが、西洋の悪魔を片手指一つで地面に圧し付けて屈服させる(本来、西洋の悪魔はそこらの動物霊や悪霊とは文字通り「強さの桁が違う」のだが)という、常識はずれの験力の強さを垣間見せた。現状、作中最強のジジイ。
一介の行者として、また年功者としても一流だが、「win-win」を「wi-fi」といい間違えたり、孫やアスラからたまにぞんざいに扱われたりと、割とお茶目な面もある。
阿部法真(あべ ほうしん)
玄徳寺副住職で、清弘の叔父。
眼鏡に短髪、顎髭の渋いオジサマで、普段は道舟の付き人として動いている。
阿部公代(あべ きみよ)
道舟の坊守(妻)で清弘の祖母。
和服姿の似合う慈愛の深い穏やか女性。
しかし若い頃は当時の鬼一法眼に土を付けた凄腕の剣術家という、とんでもない経歴の持ち主。
実際、23話では清弘と鬼一兄弟に気配を消して割って入り、弟・サツキの小刀を持つ手を押さえている。
晩田(ばんだ)
玄徳寺の寺男(雑用係)。
穏やかな性格の男性で、本職は絵本作家。
ただどうも元族らしいことが17話で判明し、バイクに乗ると昔の性格に戻ってガラが悪くなる。
普段は手拭いを頭に巻いているが、取ると坊主頭に刺青を入れている。
褪日派五家
22話で集結した褪日派を構成する五つの退魔師の家問。
褪日と書いて【あすか】と訓む。
中央を「加茂」、東方を「阿部」、西方を「芦屋」、南方を「鬼一」、北方を「土御門」が守護を担当している。
芦屋久禅(あしや くぜん)
現芦屋家の10代目当主で、阿部家同様に寺院を経営する住職。
生真面目で良識的な人物だが、それ故に破天荒な面々に振り回され立ち。
特に探求心を抑えきれず出奔した長男には、現在進行形で頭を抱えている。
加茂忠行(かも ただゆき)
加茂家の現当主。褪日神社の宮司。
全体的にふくよかな坊主頭の人物で、その雰囲気に違わず穏やかな人柄をしている。
土御門龍勢(つちみかど りゅうせい)
褪日派・土御門の現5代目当主。
ドレッドヘアーを後ろでまとめ、顎髭を生やして左目に傷を持つ隻眼の男性。
一見するとチンピラ染みているが、情に篤く理知的な見聞を持っている。
道舟を「親方」と呼び慕う。
土御門は人形師の一族で、22話で顔を壊されたアスラの依代の修復を請け負う。
息子曰く「凄腕」とのことで、道舟も人形ことに関しては全幅の信頼を寄せている。
土御門賢治(-けんじ)
龍勢の息子で清弘の幼馴染。
父親を強く尊敬しており、父の「ドレッドヘアーに顎髭」のスタイルを真似ている。さらに耳や顎にピアスを通している。
厳つい見た目に反して気は優しく、ハードボイルドな父に対してかなり賑やかな性分。また方向音痴でもあり、目を離した瞬間に迷子になる困った癖を持つ。
清弘のことを真剣に案じている数少ない親類の一人であり、心に孤独を抱える清弘のために「ビビり症」を押して清弘の力になるべく修行に励んでいる。
清弘のことは「ヒロ坊」と呼んでいる。
鬼一家の現12代目当主を預かる女性。本名は与月(よつき)。
冷厳とした雰囲気を纏った切れ長の目を持つ美人で、息子が2人居る。
鬼一は退魔において「剣」を用いる兵法家であり、褪日に這い寄る一切の邪悪を断つことを信念とする。
鬼一タツキ・サツキ
当代法眼の子供たち。
短髪で「比較的に」穏やかほうが兄のタツキ、髪が長く挑発的な態度なのが弟のサツキ。
ともにアスラにたいして並々ならぬ執着を持ち、親たちが神霊の跳梁跋扈に目を奪われている隙に、アスラの首を取るというとんでもない計画を発動させる。
清弘にもまったく嫌悪感を隠そうとしておらず、むしろアスラの首級を挙げるために挑発を繰り返している。
ただタツキの方は清弘の実力を冷静に判断しており、アスラの監督者である清弘にも警戒の目を向けている。
鬼一飛月(-ひづき)
先代の11代目鬼一法眼。
髪を髷のように高く後ろでまとめた白髪の婦人で、公代とは古くからの顔なじみ。
与月同様、女性ながらに鋭い雰囲気を身に纏っている。
自分の好敵手を掠め取ったとして、道舟には個人的にちょっと「根に」持っている。
その他
不動影踏(ふどう かげふみ)
本名を「芦屋道文(あしやみちふみ)」といい、西の退魔行一門「芦屋」氏の長子。
元は実家の寺・万尚院(まんしょういん)を継ぐはずだったが、心霊現象に魅入られて家出同然に出奔し、「心霊相談所」を個人で設立して心霊現象の解決と研究に邁進している。
大和広場に地蔵を設置した張本人で、自身が張った地蔵による結界を突破した存在に興味を持ち、清弘と美幸に接近してくる。
霊感を「臭い」として知覚する特異能力者で、その嗅覚の鋭さも犬並み。
愉快犯染みた人物ではあるが、霊能力者としては一級かつ良識的な研究者。旧安ヶ谷トンネルの怪異でアスラの本性に気づいて以降、彼女の正体と玄徳寺の目的を探り始める。
二階堂しの
テンションアゲアゲな影踏に振り回されつつ、冷静にツッコむブレーキ役。
美幸が抱えていたアスラの入ったカバンに違和感を覚えるなど観察力は高いが、根が生真面目で善人であるため、そこを突いてくる怪異からの罠にはまだまだ耐性が低い。
童
鉤鼻で痩せぎすの童子。
安ヶ谷峠周辺を神域としていた、今は力を抑え込まれた土地神らしき存在。
旧安ヶ谷トンネルの怪異から、美幸を保護してくれた。
アスラの素性を知っており、彼女と何か因縁があるらしく、“再戦”を望むような発言をしている。