作品概要
メディアワークスによる漫画雑誌(いわゆる電撃系)『電撃コミックガオ!』に連載された作品。単行本は電撃コミックスより全3巻。
いわゆる両作者による「ら・むうん作品」と呼ばれるカテゴリの作品のひとつで、同じ作者による複数の作品群とは世界観を同じくしており、特に『HAUNTEDじゃんくしょん』(電撃コミックス)『アンダー・ヘブンズふぁみりぃ』(電撃文庫)『恋咲忍伝おもいっきりハヤテさま』(講談社マガジンZコミックス)との関連が深い。
『アンダー・ヘブンズふぁみりぃ』と同じく『HAUNTEDじゃんくしょん』に脇役の一人(近江真吾の契約悪魔のひとり)として登場した、メフィスト=フェレス=ファースト(フェスくん/笛烈一郎)を主人公としたスピンオフ作品としての側面を持っている。ただし、もう一人の主人公である本作独自の主人公として『恋咲忍伝おもいっきりハヤテさま』の主人公陣の子孫である人間の少年戸隠まどかも登場する「ダブル主人公制」(バディもの)の作品でもある。(もっともクロスオーバーとハイパーリンクが跋扈しまくっている「ら・むうん作品」にはよくあることでもある)
現在は「ら・むうん」がコミケごとに発行している季刊誌「月の音」にて、番外編「隠された扉」(完結していて同人誌として単行本化されている)、続編である「寄宿舎編」(再び女の子になったまどかがシュバルツレイカー学園に入学したフェスに会いに行くストーリー)が月の音vol.18から連載スタートしている。
あらすじ
戸隠まどかは常々ごくごく普通の母子家庭で育つ普通の少年だったが、最近、気が付けば周囲が散らかるポルターガイストに悩まされていた。
そんな彼のクラスに、あからさまにワケありな反抗期真っ盛りっぽい笛烈一郎という気性の荒い少年が転校してくる。噂によると一郎は以前の学校で、とても人には言えない問題を起こしてまどかの学校に転校したのだという。そして噂を裏付けるように一郎の周囲には明らかにカタギではない「その筋」の人々としか思えないメンツが接触。まどかは間の悪い事にことごとくその現場に遭遇してしまう。
状況にビビるまどかだったが一郎の「お前は何も見ていない、全部忘れろ!」の声に自らムリヤリ納得することにするが、同時に彼の奥に潜んでいる不器用な優しさを感じるようになる。
そんな危険と隣り合わせのスリリングなある日。配送センターの事故により給食の未達が発生。クラスの児童が一斉に空腹の抗議を上げる中、まどかの中に秘められていた「何か」がそれに反応し、まどかを中心として召喚の魔法円陣が発生する。円陣はクラスメートたちの空腹に反応して魔界に繋がり食屍鬼(グール)を召喚。顕現させられたグールはまどかを襲う。死を覚悟したまどかを救ったのは瞳を紅く変色させ、紅の雷を放ってグールを消し炭にした一郎だった。驚くまどかだったが一郎はいつものように「お前は何も見ていない、全部忘れろ!」と言い放つ。しかし、この騒動をきっかけとしてまどかは地獄や魔界の悪魔たちに狙われる身の上となってしまう。
実は、まどかは自らの身の内に異界への扉を封じた血族である「戸隠一族」の末裔だった。もともと戸隠一族は異界と縁を結ぶ忍者の家系だったが異界の扉を厳重に封じて民間に降った結果として封印術を含む忍術を失伝してしまい、結果まどかの代でその封印のタガが外れてしまったのであった。まどかを依り代にすれば人間界と魔界の行き来をしたい放題、やりたい放題。世界の征服を望む悪魔たちが、まどかを狙う理由はそこにあった。
一方で、そんなまどかの事情に巻き込まれることになった笛烈一郎の正体こそ、魔界にヒエラルキーの秩序を敷く六大魔王家のひとつアスモデウス家の傍系たる魔界の貴族メフィストフェレス家の嫡男にして魔王アスモデウスの甥っ子であるメフィスト=フェレス=ファースト(フェス)その人であった。
結果、一郎は自らの安穏とした日常(と、ついでに世界)を守るため、まどかを守らざるを得なくなる。が、それは魔界に伝わる「扉(戸隠)の一族」の始祖たる「扉の姫君」の伝説に繋がる大騒動の始まりとなってしまうのだった。
登場人物
戸隠まどか
主人公にしてメインヒロインの少年。人への思いやりが篤い、心優しきメガネショタ。異界の扉を身に秘めた「戸隠一族」の末裔であり、その血脈を原因として召喚円陣を開く力を持ってしまう。その能力ゆえに「生きたマジックアイテム」として多くの悪魔から狙われる身の上となってしまう。挙句の果て、まどかを狙う悪魔の呪いを受け、なんとロリ化。真メインヒロインへの道を歩みだす。その特性から最終的にはロリもショタもこなせるようになるという恐ろしい児童。
気のいいお人好しな性格のため、その性格と自身の力によって、トラブルに巻き込まれることが多い。父親はすでに亡くなっていて、看護師をしている母親と二人暮らし。
「寄宿舎編」では、再び女の子になってしまったために、シュバルツレイカー学園に入学したフェスに会いに行く。
笛烈一郎/メフィスト=フェレス=ファースト
本作の主人公。騒動に首を突っ込みたくないのに、突っ込まざるを得ない状況に追い込まれる苦労人。魔界の貴族メフィストフェレス家の嫡男にして魔王家アスモデウス家の因子(母がアスモデウス家の出身)を色濃く受け継ぐ悪魔少年。アスモデウス血統の証である魔術「赤き雷」の使い手。実は子ども向けのヒーローものが大好きという小学生らしい一面もあったりする。親の仕事の関係から人間には非常に辛辣だが、まどかの優しさに触れてイロイロと思い直す。のち、まどかとは(一応は健全な)固い友情で結ばれるようになる。
「寄宿舎編」ではシュバルツレイカー学園に在籍している。シュバルツレイカー学園に入学したのは、まどかから離れようと思ったからだが、まどかがシュバルツレイカー学園にやって来ると知り困惑する。
笛烈絵音亜/エネア=A=フェレス
一郎の姉。美少年ドルヲタな女子高生にして魔女、かつ盆暮れの時期には台場の聖地に出没する貴腐人。本編では、まどかを案じて可愛がる、優しいお姉ちゃんだが、その裏(同人誌版)では実弟(フェス)と弟の親友(まどか)の関係をネタに腐りきってる薄い本を描きまくる(主にフェスにとっては)悪夢の同人作家。
季刊誌「月の音」ではエネアの描く同人誌をネタにした番外編が掲載された。
笛烈二郎/メフィスト=フェレス=セカンド
エネアおよびフェスの弟で未だ赤ん坊。通称「セド」。赤ん坊の図体で豚5頭をペロリと平らげる大食漢。終盤で一気に成長して幼稚園児くらいの外見になる。フェレス家の血筋と能力を色濃く継いでいて、番外編「隠された扉」では、父親譲りの「分離」「鏡」の魔術を使えることが明らかになる。
「寄宿舎編」では小学生くらいの外見になっていて、小学校にも通っている。兄とまどかのことを案じている優しい素直な性格。
マナ
メフィストフェレス家に仕えるメイド。穏やかな女性だが、怪力の持ち主。
セバスチャン
メフィストフェレス家に仕える老齢の執事。元はアスモデウス家の執事であったが妹(フェレス姉弟の母)を慮ったアスモデウスの命を受けてフェレス家に仕えている。
アンドリュー
セバスチャンの息子でフェレス家に仕えている執事見習い。ストラスが敷いた策略を意図的に看過するなど不穏な動きが目立つ。正体は先祖返り(魔界の悪魔の中には、いわゆる堕天使も含まれている)によって魔界に生まれ落ちてしまった天使の能力の持ち主であり、これを原因として魔界から疎まれていた存在。まどかの扉の能力を用いての天界への帰還を目論んでいたが、ほかならぬまどかの博愛やフェレス家が自分を受け入れ愛してくれていた事実に触れ、改心する。
「寄宿舎編」でも登場。シュバルツレイカー学園に入学するまどかを守るために、先にシュバルツレイカー学園に入学してくる。まどかに興味津々なミロワールを警戒している。
メフィスト父
「メフィスト二世」の二つ名を持つメフィストフェレス家の当主にして姉弟の父。魔界において魔界捜査官(デモンズ・サーチャー)の任を持つ、言うなれば魔界の警察官。魔界より人間界に不正召喚された「罪宝(ペナジュエル)」を探し出して回収する任務を命じられて人間界に赴任している。心優しいマイホームパパだが、罪宝の召喚者には結構「その筋」が多いため、その手の「業界人」のフリをしている事が多い。(魔界捜査官は罪宝を探し出すためにケースバイケースで様々な職業の人間になりすましている)
メフィスト母/アンナローゼ=Y=フェレス
メフィストフェレス家の大奥様にして姉弟の母。毒魔法が得意で「子どもたちを鍛える」ために、わが子に容赦なく毒を盛るスパルタンなママ。魔界の七大魔王の一人アスモデウスの実妹。夫にはベタ惚れでラブラブ。
ジョニー
夢魔一族ナイトメアリスの末席(フェスいわく「ただの他人」と同じ)に控える悪魔。まどかを狙うがフェスによって返り討ちに遭い、ムリヤリにフェスと「まどかを安全に守り導く」契約を結ばされる。以降まどかのマスコットとして彼に従うこととなる。
「寄宿舎編」にも登場。シュバルツレイカー学園に向かう列車内でまどかと再会して、再び行動を共にする。
ストラス
魔界の七大魔王の一人であるマモンの王子。300人いる王子・王女のうちの299番目の王子でジョニーすら軽蔑する見事なまでのバカ王子。罪宝マニアであり、本来ならば所持されることが禁じられている罪宝を秘匿するために、まどかの「扉」の能力に目をつける。のち「扉の姫君」伝説と、まどかの関連性に目をつけ、まどかをロリ化させてしまう。コウモリ娘とネズミ娘を部下に持つ三馬鹿トリオのトップ。
番外編「隠された扉」にも登場する。
ハイアン
ストラスの部下。コウモリ娘。バカに仕える苦労人で三馬鹿の一角。
ドロー
ストラスの部下。ネズミ娘。やっぱり苦労人で三馬鹿の一角。
プロル・ケシケル
魔界の伯爵家であるケシケル家の令嬢。自称・フェスの恋人あるいは許嫁(あくまでも自称)で、自らに手に入れられないものはないと思い込み豪語しているワガママ娘。ケシケル家はメフィストフェレス家よりも格上(メフィストフェレス家は男爵位を持つ)であるため、さすがのフェスも対応には苦労している。まどかを「かわいいから」という理由で愛玩動物にするためにつけ狙う。本作を「フェスとまどかの絆の物語」と見るならば、ぶっちゃけ悪役令嬢のポジションにいる娘だったりする。まぁ彼女の被害に遭うのは大抵フェスだが。
アスタロト・ケシケル
プロルの兄でケシケル家次期当主。冷徹な戦略眼と確実なる俯瞰力と危険な野心を併せ持った、まさに清濁を併せ持つ上級悪魔。状況に対しては静観を決め込んでいる……と見せかけて、おバカな妹の陰に隠れつつ暗躍していた。最後の最後で漁夫の利を得るがごとくまどかをさらいラスボス化。まどかの力を使って扉を開けるが、扉の向こう側にいたルシフェルによって惨殺されてしまった。
アスモデウス
魔界の七大魔王の一人でアンナローゼの兄。フェスの叔父にあたる青年。『色欲』を司る。普段はとても温厚な性格の紳士だが、怒ると怖い。アンナローゼとは幼い頃から仲が良く、近親婚が珍しくない魔界では二人は将来結婚するとまで言われていた。アスモデウス自身は独身で、今でもアンナローゼのことを愛している。またアンナローゼの若い頃に瓜二つの姪エネアをとても可愛がっている。
五精霊
アスモデウスが作り出した五人の精霊たち。凶悪な魔界の犯罪者すら一蹴する魔力の持ち主。その力と知識でフェスたちの心強い味方として活躍する。
レヴィアタン
魔界の七大魔王の一人。『嫉妬』を司る。長身の美女。相手を石化する「ゴルゴンアイ」という石化能力を持つ。とても厳格な女性で、彼女の治める地域では軽犯罪でも城の牢獄に連行されて拷問を受けるほどである。番外編「隠された扉」にも登場する。
マモン
魔界の七大魔王の一人。『強欲』を司る。ストラスの父親。城の周囲にある四つの宝物殿には財宝が山ほど保管されている。
バルベリス
番外編「隠された扉」に登場。魔界の七大魔王の一人。バイキングのような装束の筋骨逞しい老人の姿をしている男性。アスモデウスとは親友。一人娘ジェンティアがいたが、身分違いの恋をしたために、娘を罪宝に変えた過去を持つ。
ルシファー
七大魔王の一人で魔界を統べる王。作中では名前のみ登場。
ヴェアトリエル
魔界の伝説に語られる「異界の扉」を持った天使の姫君。「扉の姫君」とも呼ばれている。ルシファーの恋人とも言われているが、謎に包まれている。
レーヴェ
かつてヴェアトリエルに仕えていた魔物。ライオンのような外見をしている。現在はレヴィアタンによって鍵の獄に閉じ込められている。まどかの力で解放された後はまどかに仕える。最終戦でまどかをかばい、ルシフェルの力で氷漬けにされてしまった。
ジニー・アーゼン
マモンに契約で雇われて、宝物殿の守護を任されている精霊。ランプの精みたいな外見をしている。明るく陽気な性格。まどかの提案でトランプの勝負をして負けたことで、まどかを主人として仕えることになった。最終戦でまどかをかばい、レーヴェともどもルシフェルの力で氷漬けにされてしまった。
ジェイド
番外編「隠された扉」に登場。相手を石化する「ゴルゴンアイ」を持つ青年。ジェンティアとは相思相愛。正体はレヴィアタンの弟。バルベリスを訪問したレヴィアタンからその事実を教えられて、ジェンティアとの仲をバルベリスに認められた。
ジェンティア
番外編「隠された扉」に登場。バルベリスの一人娘でジェイドの恋人。無実の罪で父に罪宝の置物の像に変えられてしまっていた。誤解が解けて元の姿に戻り、ジェイドとの仲を父に認められて晴れて公認の仲となった。
ミロワール・ラビリント
「寄宿舎編」で登場。シュバルツレイカー学園の生徒でフェスのルームメイトの少年。悪戯好きでつかみどころのない性格。優秀なのだが、何故か大昔からずっと学園に在籍している。シュバルツレイカー学園に編入してきたまどかにも興味を持ち、シュバルツレイカー学園行きの列車に女の子の姿で乗り込んで、まどかに接近して仲良くなった。
列車を襲撃した魔物を退けるなど強大な魔力を持ち、まどかを狙う教団からもひそかに勧誘が来ている。
※ 以下「ら・むうん」ワールドにおける魔界の根幹に繋がりかねない最大のネタバレ |
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ルシフェル
アスタロトによって開かれた扉の向こう側にいた天使。魔界創成の折に産み出された、最初にして最大の力を持つ原初の罪宝。その正体は、かつて神によって堕天した「ルシフェル」が自ら魔界を建てる(ルシファーになる)において、その彼から切り離された「何物もいなければ、欲望も無く悲しみも無くなる」ゆえに「他の生命の存在するを認めず、何もいない(虚無の)世界こそ最善である」とする最悪の傲慢そのもの。ヴェアトリエルの命と引き換えにルシファーによって封じられていた。
子供の天使の姿をしているが、その性格は人間はおろか天使や悪魔の述べる(あるいは神の理解する)善悪ですら図りかねる超絶した傲慢。言うなれば自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪。
しかして、その力は本体であるルシファーと分割されてなお強大で、アスモデウスの五精霊を圧倒するほどである。最後はフェスによって再び扉の向こう側に封じられた。
用語
- 魔界の扉(デモンズ・ゲート)
- まどかの魂に内在する異界を繋ぐ扉。「異界の扉」とも称する。何らかの願望に対してまどかが同情することで作動してしまう。また、魔力の強い者にかかると強制的に開かれてしまう。まどかが悪魔たちにつけ狙われる最大の要因。
- 本来の名は「九天の扉」で、本来の機能も魔界および人間界を含む九つの世界(あらゆる異世界の根幹を担う大元の世界)を繋ぐ異世界への扉。そのため、いわゆる「神(天使)の領域」である天界にも繋がっている。
- 戸隠一族(とがくしいちぞく)
- 罪宝(ざいほう/ ペナジュエル)
- 魔界を統べる魔王たちが管理している宝玉。罪を犯した悪魔が封印されており、所持したものは封印された悪魔の能力を使うことができる。が、精神力が弱いものが所持すると、逆に封印された悪魔に精神を乗っ取られる。おおよそ人間(やランクの低い悪魔)に扱えるものではないが、欲望を持つ人間が強く願うと召喚されてしまうことがあるし、悪魔にとっても自らの力を増強させる術になりうるため、求める者は後を絶たない。
- なお、まどかの持つ「魔界の扉」でも召喚ができてしまう。(しかもノーリスクで)
- 扉の姫君ヴェアトリエル
関連リンク
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