概要
旧約聖書外典『トビト記』等に登場する、ユダヤ教・キリスト教の悪魔の魔王。
七つの大罪の色欲を司る堕天使で、元は智天使であったといわれる。
アスモダイ、アスモダイオス、アスモデとも呼ばれる。
ユダヤ教における言及
ユダヤ教の聖典タナク、キリスト教で言う所の旧約聖書正典にアスモデウスについての言及はない。
タルムードのナシーム(「女性」)の部の「ギッティン」という箇所にソロモン王とのエピソードが収録されている(ウィキソース収録の英訳)。
エルサレム神殿建築に協力させるためにソロモン王が駆け引きするという筋書き。
13世紀のバルセロナ出身のラビ、シュロモー・イブン・アデレトによると、彼はアグラト・バト・マラトとダビデ王との間に生まれたという。
聖書外典における言及
アスモデウスの話としてトビト記の物語に以下のようなものがある。
アスモデウスはサラという少女に取り憑き、彼女が結婚するたびに夫を殺していた。そんなある日トビアとアザリアという若者がやってきた。アザリアはトビアにサラと結婚するように言う。トビアは断ったが、「魚の内臓を香炉に入れれば大丈夫だ」というアザリアの助言により結婚を承諾。結婚の初夜、香炉で魚を焼くとアスモデウスが逃げ出し、その直後アザリアがラファエルに変身し、彼を捕まえ連れ去った。実はアザリアはラファエルだったのだ。その後アスモデウスはエジプトに幽閉されたとういう。ちなみにアスモデウスはサラには手を出していない。これはアスモデウスが小心者だったからだという。
悪魔学、グリモワールにおける言及
日本では「ソロモン72柱」と総称される悪魔の一体。グリモワールの一つ『ゴエティア』では32番目に記載される悪魔で「アスモダイ」と呼ばれる。綴りは「Asmoday」だが、アレイスター・クロウリーとマクレガー・メイガー版『ソロモンの小さな鍵』ではこれに加え「Asmodai」の表記も紹介されている。先行する悪魔学文献『悪魔の偽王国』では35番目に記載されシュドナイ(Sidonay)と呼ばれる。
両文献において72の軍団を率いる王とされ、『ゴエティア』ではアマイモン配下の東方の悪魔の首座でとされる。
容姿は牛・人・羊の頭とガチョウの足、毒蛇の尻尾を持ち、手には軍旗と槍を持って地獄の竜に跨り、口から火を噴くという。 姿を見ても恐れずに敬意を払って丁寧に応対すれば非常に喜び、指輪やガチョウの肉をくれたり、幾何学や天文学などの秘術を教えてくれるという。
「ラッド博士のゴエティア」によると、彼に対抗する天使の名はヤサリヤ(Yasariah)。
『術士アブラメリンの聖なる魔術の書』によると、トバルカインと姉妹ナアマとの近親相姦で生まれたという。
コラン・ド・プランシー著『地獄の辞典』ではアスモデ(Asmodée)表記でも言及。フランス王室お抱えの式典、行事、祭事を担当する部署「Menus-Plaisirs du Roi(王の小さな喜び)」をモデルとした「小さな喜び」(Menus-Plaisirs)所属の遊技場(maisons de jeu)監督役とされる。地獄の君主制(Monarchie infernale)の項目では『ゴエティア』『悪魔の偽王国』同様「王」の位を持つと記されている。
語源
アスモデウスの語源はゾロアスター教の暴力を司る悪魔アエーシュマだと言われている。
厳密にはその呼び名として想定される「アエーシュモー・ダエーワ(怒れる悪魔)」が転じたもの、という説に基づく。ただし聖典『アヴェスター』等の古いゾロアスター教文献での現存は確認されていない。
ただし、より新しいパフラヴィー語文献ではヘーシュム・デーウという形が見られる。
創作作品におけるアスモデウス
デモンブライドのアスモデウス
闇咲紅花のブライド
属性は闇 大罪は色欲
言葉巧みに紅花を唆して契約、彼女からは嫌われているが大して気にしていない。
Fate/Grand Orderのアスモダイ
魔神柱を参照。
メギド72のアスモデウス
かつて大罪同盟の一角であり、追放後も絶対的な力を奮い不死者と呼ばれ恐れられていたメギド。
転生したらスライムだった件のアスモデウス
究極能力の一つ。
「色欲之王」と書く。
魔王ルミナス・バレンタインが所持。
彼女が大切にしていた「精霊力の棺」を奪われた怒りにより、「色欲者(ラスト)」が進化。
能力は「生」と「死」を司るというもので、魂と肉体がその場にあれば死者を甦らせることが可能。
真・魔導物語のアスモデウス
サタンさまと旧知の仲にあたる魔神。劇中では分裂しデウス、アスモデに分かれてしまった。
レンタルマギカのアスモダイ
アディリシア・レン・メイザースが使役するソロモン72の魔神、その中でも上位四柱の一角。異形の姿をしてるが同時に美を体現した美しさを持つ。