概要
2020年9月11日公開のクレしん映画第28作目。
本作では「クレヨン」と「落書き」がメインテーマとなっている。
令和に公開された最初の作品となった。
本作は現時点で唯一、原作漫画の短編が原作となっている映画である。
元々初期のクレしん映画は原作の大長編が原作となっていたが、本作は原作23巻収録の『ミラクル・マーカーしんのすけ』を原作としている。
解説
クレしん映画のシリーズとしてみれば、いくつもの異例な要素で作られた作品。
また、後述するように作品の公開時期自体が、2020年のコロナ禍と言う異例の状況で行われたものである為、興行収入などの商業的な面では良くも悪くも評価しづらいという点がある。
クレしん映画初の要素
概要の項にもある通り、原作漫画の短編を原作として作られた初の映画。
これは同じ時期に公開されているドラえもんの映画シリーズにはおなじみの手法だが、クレしん映画でこれをやるのは初。
これは恐らく、漫画原作者の映画版に対する製作スタンスの違いが原因であると思われる。
元々、ドラえもんは作者の藤子・F・不二雄が生前の頃から映画原作となる大長編ドラえもんを製作して公開していたのに対して、クレしん映画は原作者である臼井儀人が生前のごく早い段階から映画の製作には一切かかわらないことを明確にしたため、アニメスタッフによってしんちゃんの冒険が自由に描かれていた。
しかし今作で初めて、原作の短編を題材にとることになった。
これはつまり、もしかしたらこれから、原作のみのオリジナルキャラクターとなっていたキャラクターたちが映画ゲストとして出演するかもしれないという事であり、原作では人気だったが、アニメには採用されなかった話が映画として再構成されて公開されていくのかもしれない。
また、劇場版のオープニングで恒例だったねんどアニメは今回初めてエンディングに回されている。第1作『アクション仮面VSハイグレ魔王』はTVシリーズの映像を流用していたため、オープニングがねんどアニメ以外の専用映像となる初の事例となった。
クレしん映画久しぶりの要素
今作では、塩沢兼人が没後、21年ぶりに台詞付きでぶりぶりざえもんが活躍する。
ぶりぶりざえもんが登用された経緯などは当該項目に詳しいが、ぶりぶりざえもん自体は原作ファンにとってはクレヨンしんちゃんには欠かせないおなじみの人気キャラクターであったため、2代目声優が配役された上で映画に再登場を果たし、キーパーソンとして活躍するのは感無量の一言である。
また、それに合わせてか、クレしん映画ではおなじみとなっている野原一家やかすかべ防衛隊の団結はあまり描かれておらず、全体的にしんのすけの成長とファインプレーに主軸が置かれた作品となっているのも、最初期の作品以外では珍しい。
コロナ禍での公開
当初は2020年4月24日に公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響により延期。
新たなる公開日は9月11日に決定し、奇しくも公開日は原作者の臼井儀人先生の命日となった。
GW以外での公開は『アクション仮面VSハイグレ魔王』以来27年ぶりで、シリーズ初の秋公開である。
この影響で2014年の『逆襲のロボとーちゃん』以降増加傾向にあった興行収入は本作では11.8億円と減少し、同作以前の映画と同程度の水準(28作品中22位)になっている。
あらすじ
地上の子供達の落書きのエネルギーによって空に浮かぶ異種族の国・ラクガキングダム。
だが、落書きを行う子供の減少に伴うエネルギー不足のため崩壊の危機にあった。
そこで王国の防衛大臣が半ばクーデターを起こし、地上の子供達に無理矢理落書きを行わせる「ウキウキカキカキ大作戦」の遂行を決断。手始めに春日部の侵略を開始した。
これを危惧した王国の姫は、描いたものを実体化させる王国の秘宝「ミラクルクレヨン」を部下の宮廷画家に渡し、伝説で存在するという地上の勇者に託す。
ミラクルクレヨンを手にした野原しんのすけは宮廷画家によって富士山の近くの林野まで避難させられ、その地でブリーフ、ニセななこ、そしてぶりぶりざえもんを描いて実体化させる。
かくして4人の勇者は春日部を救うため、行動を開始するのであった。
主要ゲストキャラ
勇者
- ブリーフ
(声:冨永みーな)
しんのすけが描いた最初の仲間としての落書き。
新品ではなく「2日前のパンツ」として描かれた事にショックを受けるが、真面目な性格で一行を取りまとめる。
- ニセななこ
(声:伊藤静)
しんのすけがななこおねいさんを模して描いたキャラ。
画力が追い付かず、本人とは似ても似つかない姿と声色になる。
セリフも書かれてしまった事から「しんちゃん好きよ」としか話せないが、モデルとなった本人と同じくとても面倒見が良く、仲間(特にしんのすけ)を守る為なら自己犠牲も厭わない性格。
- ぶりぶりざえもん
(声:神谷浩史)
本作ではしんのすけの落書きが実体化した存在として、現実の春日部に姿を現す。
ラクガキングダム
- 防衛大臣
(声:山田裕貴)
ラクガキングダムの防衛大臣にして、ウキウキカキカキ大作戦の首謀者。
根っからの悪人ではないが、愛国心が強過ぎて暴走しクーデターを起こした。
王国軍を地上に送り、手始めに春日部に進攻する。
- 姫
(声:きゃりーぱみゅぱみゅ)
ラクガキングダムの幼き王女。
暴走する防衛大臣の野望を食い止めるため、身を挺してミラクルクレヨンを地上の勇者に託す。
- 宮廷画家
(声:平田広明)
王族の絵を描く画家で、姫の命でしんのすけにミラクルクレヨンを与えた張本人。
原作では「絵の精」として登場していたが、映画では王国の市民として設定が変更されている。
外見は地上の人間とほとんど変わらない。
- ラクガキング
(声:中田譲治)
姫の父親でラクガキングダムの国王。
普段は巨大な鎧に身を包んでいるが、中身は子供の落書きそのものでかわいらしい姿をしている。
人格者ではあるが絶対的な権力を持つ君主ではなく、防衛大臣の作戦に反対するが暴走を許してしまう。
- 鬼軍曹
(声:玄田哲章)
防衛大臣の側近。
ウキウキカキカキ大作戦の実行指揮を担うが、その格好はかなり際どく筋肉モリモリマッチョマンの変態と言っても良いところ。
ちなみに中の人はアクション仮面と同じ方である。
- リンゴ、イチゴ、メロン
(声:りんごちゃん)
ウキウキカキカキ大作戦の現地指揮官たち。
被写体を平面化させて拘束するカメラや凄みのある声色などを使って落書きを強要する。
上記の通りりんごちゃんの1人3役。
- ローラー兵士
(声:諏訪部順一)
防衛大臣の刺客。
ハチマキを巻いた非常口のマークのような外見の二人組で、巨大なローラーシューズに乗り込んで走らせる。
その他
- ユウマ
(声:黒沢ともよ)
しんのすけ達が冒険の途中で出会った少年。
相模湖のそばで居酒屋を営む母親と暮らしており、春日部に祖母が住む。
タブレットを駆使して、地図や情報収集などでしんのすけ達をサポートする。
関連項目
新婚旅行ハリケーン←前作 次作→謎メキ!花の天カス学園