概要
海軍戦略研究所サナリィが、開発した特殊なビームライフル『Variable Speed Beam Rifle(可変速ビームライフル)』の略称である(V.S.B.R) 。
名称の通り、射出するビーム(メガ粒子)の射出速度や収束率、出力を連続帯域(無段階)で調節可能なビームライフル(一応F90Vなどの解説では「ビームキャノン」扱いされているが)である。対MS用~対艦用までの武装を1つのモジュールで賄えるため、搭載武装を増やさずにモビルスーツの対応可能任務が拡大するメリットがある。
原理上は通常サイズ(Eパック式)のビームライフルでもこの機能を持たせる事は可能だが、調整する範囲も広く精度も精密な物が求められる為高出力でなくては得られるメリットが小さくなる(出力リソースが少なく威力の調整幅が狭まり調整機構を持たせる意味がなくなる)ため、本機能が採用されているのは全てジェネレーター直結型(およびジェネレーター直結・メガコンデンサ併用型)のみである。
攻撃対象に応じて高速・高収束で貫通力の高いビームから、低速・低収束で破壊力と破壊面積が大きいビームをまるで「実体弾火器における同一口径砲の用途に応じた弾種変更」の様に撃ち分けられるため、前者であれば~中距離における対MS戦においてビームシールドを貫通して敵機を撃破する、あるいは収束率の高さを活かして長射程狙撃に利用でき、後者であれば対艦・対要塞に威力を発揮する。マニュピレーター(手)というマルチ・ウェポン・プラットフォームを有するMSではあるが、積載容量(推進剤)には限界があるため、1種の武装で幅広い任務に対応できる武装として有用性がある。
従来のビーム兵器ではドライブにE-CAPを使用するが、出力的に可変速機能を稼働させることが不可能なため、ヴェスバーではジェネレーター直結式となっている。このため従来のビームライフルではコネクター等の伝達容量により制限を受けていたビームの出力は、理論上はジェネレーターの出力最大値まで高めることが可能になった。加えてF91のヴェスバーにはサナリィ独自製大容量メガコンデンサが内蔵されており、エネルギー供給のタイムラグ解消及び本体から分離しての使用を考慮した仕様となっている(分離後は数発分程度発射可能)。可変速ビーム砲というデバイスの開発自体は容易だったが、それをMSクラスの機動兵器に搭載するには困難を伴ったとされる。
ヴェスバーはビームの性質変更こそ可能であるが高出力ということもあって扱いが難しく、F91のパイロットを務めていたシーブックはコロニー内で始めて使用した際に「強力過ぎる」と感想を漏らす(あくまでコロニー内での使用に関しての感想であり、他環境下での使用感まで含めた感想ではない)程の兵器であった。ただし、ジェネレーター直結式のメリットとして単純な威力について見るなら非常に高性能といえ、F91に搭載されたものは宇宙世紀120年代~130年代の長期間に亘ってビームシールドを貫通するアドバンテージを維持していた。
後年の宇宙世紀150年代においても採用している機体が存在する。V2ガンダムのアサルト・オプションとして採用された開放バレル式ヴェスバーは、対ビーム防御性能に優れるサブフライトシステム・アインラッドを一撃で撃ち抜いている。また同年代においては、木星共和国(旧木星帝国)で開発されたとされる特殊任務用MSバイラリナに、ビーム収束率の基本値を高める(絞る事に特化する)事で、ジェネレーター出力への負荷を抑えたまま威力・射程の向上を狙ったマイナー・アップデート武装「ニードル・ヴェスバー」が装備されていた説がある。
派生
当初はサナリィの独占技術であったが、F91の完成以前にアナハイム・エレクトロニクス経由でクロスボーン・バンガード(ブッホ・エアロダイナミクス)へと渡っている。このため
アナハイム製シルエットガンダムやブッホ製ビギナ・ゼラにはF91のそれと同等以上の性能を持つヴェスバーが搭載されるに至っている。しかしAEが入手したヴェスバーのデータは開発途上のものであったため、大容量メガコンデンサを解析・再現することができず、その部分に独自の解釈がなされている(そのためMS本体から取り外しての使用は不可能となっている)。
シルエットガンダムではフェイルセーフ用の武装としてビームキャノンユニットが増設され連射機能を強化し、本体との接続方式をクランクアーム構造とすることで可動範囲を拡大させた。ジョイント部分の強度を維持しつつ必要な可動範囲を確保している為保持力が高く、その分の命中精度が担保されており、またF91用の様な着脱機構によるエネルギー供給の不安定が生じない為、より高出力を確保でき、F91用では不可能だったIフィールドを貫通可能である事が記されている。
ビギナ・ゼラでは先行開発されていたB型ことビギナ・ギナⅡのフレキシブルウィングノズルユニットの仕様を応用しヴェスバー自体にサブスラスターを増設、クランクアーム接続構造によるAMBAC肢ユニットと機動補助ユニットとしての機能向上が図られており、また砲身を挟んで上下一対の補正照準ユニットを追加する事でサナリィ製ヴェスバーで問題となっていた照準ブレの問題を改善し命中精度を向上させ、F91用のサナリィ純正ヴェスバーを凌ぐスペックを達成したとされている。
シルエットガンダムの後継機となるネオガンダムにおいては本体と独立したジェネレーターを搭載し手持ち式としたことで、火器及び推進ユニットとしての機能をさらに向上させたG-バード(G-B.R.D)へと発展した。またシルエットガンダム改においてはヴェスバーにG-バードの機能をフィードバックした上で多数のサブスラスター類を増設し(奇しくもブッホ側のビギナ・ゼラと似通った仕様となったがブッホ側と技術交渉でデータを貰った可能性も有る)、機体の総合性能を向上させる効果を生んでいる。
主なヴェスバー搭載機
バイラリナ(ニードルヴェスバー)
ゲンガオゾ(マルチプルビームランチャー)
リグ・コンティオ(バリアブルビームランチャー)
余談
メタ的に言えば、「防御手段が限られている」事が特徴であったビーム兵器への対抗策として登場したビームシールドでも防げない威力を持った「特別な兵器」という形でパワーインフレに対応するために生み出された設定である。あまりにも安直なので、冨野監督は後年の作品である「機動戦士Vガンダム」劇中内で「ビームシールドが絶対的な防御手段ではない」ものとして描いている。