2012年4月14日公開の『クレヨンしんちゃん』劇場映画シリーズ第20作目『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』
キャッチコピーは『さよなら、ひまわり』『おバカ、ときどき、兄 宇宙も揺るがす、5才の決断!!』。
概要
野原ひまわりを中心に、シリーズ初の宇宙を舞台にした作品になる。
本当の意味での悪役が一人も登場しないのも特徴である。
上映時間はシリーズ最長の111分。
あらすじ
ある日のこと、しんのすけは昼食のデザートにとプリンを食べようとしていたが、妹のひまわりが狙っていたので遠ざけつつ追い払う。みさえから「お兄ちゃんなんだからあげなさい。」と言われるもしんのすけはほんの少ししか与えず、ひまわりはしんのすけの目を盗んで残りのプリンを食べてしまう。
しんのすけはその仕返しにと、ひまわりのおやつのたまごボーロを一つ残らず食べてしまうが、みさえに叱られ、その上ひろしからも咎められてしまい、怒ったしんのすけは思わず「お兄ちゃんなんてやめてやる! オラ、妹なんかいらない! ひまわりなんかいらないゾ!」と吐き捨て、家を飛び出してしまった。
するとしんのすけの目の前に突然、謎の2人組がやってくる。妹を預かると話す彼らは、ひまわりを渡すことに同意する契約書をしんのすけに渡し、しんのすけがそこにサインをすると、野原一家は上空にいたUFOに連れ去られてしまう。
しんのすけたちは、地球の兄弟星“惑星ヒマワリ”に到着し、そこで宇宙の平和のために、ひまわりがこの星の姫にならなければいけないと知らされる。
果たしてひまわりはヒマワリ星の姫として星に残るのか、それとも野原一家の下で暮らすのか。野原一家の行く末はいかに…。
今作のゲストキャラ
ヒマワリ星人
外見的には地球人とさほど変わらないが、宇宙人のイメージを彷彿とさせる頭に浮かぶボールのような器官とオムツやかぼちゃパンツのような奇抜な服装が特徴で、皆穏やかな人格の持ち主。
元々惑星ヒマワリは人々の幸福を司る『ヒママター』というエネルギーを兄弟星である地球と供給することで平穏と均衡を保ち発展していたが、近年そのヒママターが枯渇してしまい両惑星が滅亡の危機に陥ったため、新たなエネルギーを確保する為に古くから伝わる予言の『地球と惑星ヒマワリを救う姫』としてひまわりを招き入れようとする。
大王を含めヒマワリ星の各大臣にはそれぞれ名前にちなんだ惑星をイメージした固有の特殊な空間を発現する能力を持つ。
- サンデー・ゴロネスキー(声:飯塚昭三)
ヒマワリ星の大王。禿頭で目つきが悪いなど見るからに悪人顔が特徴であるが悪人というわけではなく、どころか優れた統治者であり人格者でもある。
しかし、ひまわりを拐われた野原一家にとっては、敵役的存在であり今作のボス的存在。ごろ寝とダンスが大好き。しんのすけからは「ゴロちゃん」と呼ばれている。
名前の由来は太陽(SUN)から。
うっかり大臣兼お守り大臣。人が良く心優しい性格でナスのような下膨れの顔とふくよかな体型が特徴。母星を救う為に地球にひまわりを探しにきた。
終盤ではひまわりの奪還に向かうしんのすけを妨害する大臣達の中で唯一しんのすけの妨害はせず、ただしんのすけとひまわりの心配をしていた。
名前の由来は天王星(URANUS)から。
地球担当のヒマワリ星人。地球に単身赴任してひまわりを探しつつひそかにエネルギーを供給するというもうひとつの任務を行っていた。単身赴任してすっかり長くなるためか非常に疲れきった表情が特徴。
名前の由来は月から。
- マズマズ・イケーメン(声:三ツ矢雄二)
イケメン大臣。名前の通りのまずまずのイケメンで、イケメンの選抜には厳しい目を持つ。ひまわり専用のベビーシッター「イケメンDEイクメン軍団」を指揮する。
「~マース」等、西洋かぶれの口調で喋る。
名前の由来は火星(MARS)から。
- ボインダ・ド・ヨーデス(声:日高のり子)
おねむり大臣。名前の通りの巨乳と包容力の持ち主で、数々の赤ちゃんをその胸で眠らせてきた。
名前の由来は土星から。
おつまみ大臣。目元だけを隠したサングラスと髭が特徴の小柄なヒマワリ星人。主に惑星ヒマワリの警備を担い、迷惑なやつは特殊なボールで固めて文字通り星からつまみだしてしまう。
「~ヨ」等のおどけた口調で喋る。
大臣の中では唯一特殊な空間を発現していない。
名前の由来は水星(MARCURY)から。
- キンキン・ケロンパー(声:川村万梨阿)
おしゃべり大臣。三日月のように逆立った髪が特徴。主に広報活動が専門でいつもホットなニュースをみんなに知らせている。
名前の由来は金星から。
お運び大臣。パーマがかかった怪力自慢の巨漢であり、どんな重い荷物だろうとなんでも運んでくれる。時々お相撲さんのような仕草を見せるが、文明の違いからか本人は相撲のことをよく知らない。
名前の由来は木星から。
余談
しんのすけが宇宙ゲートに入って見た夢で、過去の劇場作品で登場した歴代ヒロイン達が登場しており、桜ミミ子、ルル・ル・ルル、吹雪丸、リング・スノーストーム、トッペマ・マペット、東松山よね、お色気、指宿、後生掛、春日廉、天城(唯一の敵キャラクター)、つばきちゃん、ジャッキー、マタ・タミ、ビクトリア、タミコ、スノモノ・レモンの総勢17人が登場する。
シナリオ・設定の評価(ネタバレ注意)
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「悪役が一人も登場しない」本作であるが、それ故にシリーズファンの間で、批判的な意見が多くなってしまった。その理由は極めて複雑である。
本作の題材は『「宇宙の平和」か「家族のひまわり」どちらを選ぶか』というもので、過去作の嵐を呼ぶ歌うケツだけ爆弾!とかなり似ている。
しかし大きな違いがある。ケツだけ爆弾は、地球滅亡阻止のためにシロの命を犠牲にしようとする時雨院時常が冷酷で悪魔的に描かれていたため、シロを救うためにそれに抗う野原一家の姿にはカタルシスがあり、彼らに応援したくなるものだった。
一方で本作は、宇宙のためにひまわりと離ればなれになるのだが、当のひまわりは命を失うわけではなく、王女としてヒマワリ星の人々に優遇され、幸せな日々を送れる。宇宙は平和になる上、ひまわりは裕福な暮らしができるという、事実上野原一家側もヒマワリ星人側も両者共に利害が一致している。前述した悪役がいない点に伴い、ラスボス的な存在であるはずのヒマワリ星のサンデー・ゴロネスキー大王が明確に悪役として描かれていないことも相まって、ファンからは「ひまわり一緒に暮らしたい」と取り戻すために奔走する野原一家が悪役に見えてしまって応援できないというやりきれない評価となってしまった。
さらに終盤唐突的に起きた奇跡によって、宇宙は存続、ひまわりも元の暮らしができるという結末で幕を閉じるが、これをご都合主義と捉えられ、更なる不評を買ってしまった。
一応擁護すれば、悪役として描かれなかったヒマワリ星人であったが、落ち度はないわけではない。むしろ落ち度だらけである。
特にひまわりを渡す契約の際、明らかに筋違いなやり方をしている。本来、重大な案件に対しての契約をさせる以上、契約書にサインをさせる前に、全ての事情を説明し、相手に選択の猶予をある程度与えることが筋である。にもかかわらず、突然野原家に押し掛け、親であるひろしやみさえを無視して、責任能力が未熟な子供のしんのすけに契約書のサインを書かせるのはおかしい。「妹なんかいらない」というしんのすけの発言につけこんだのだろうか?だとしたら余計に質が悪い。しかも契約前の説明も「ひまわりを預かる」程度で済ましており、相手からすれば意味不明な上、冗談だと思われてもおかしくないだろう。
他にも、契約直後に問答無用で野原一家を連行するわ、ひまわりが泣き出したからと野原一家を乱暴な扱いで強制送還するわ、と野原一家に対して全く配慮が無い。
野原一家から見れば、こんな筋違いなやり方をされて、ひまわりと離ればなれになるのでは、いくら何でも理不尽であり、取り戻しに奔走しても無理もないと言える。
また前述の奇跡についても、序盤の方でゴロネスキーが古からの伝説を語るという形で、一応伏線は張られている。
しかし語った当人も詳しく把握してなかった程、伝説の中身について解明されてない上、
その場で語っただけでそれ以降は解明はおろか、ストーリー自体に全く絡んでこないので非常に分かりづらく、奇跡が起きた展開があたかもご都合的に見えたのかもしれない。
上記のように、シナリオ面において、かなり惜しい映画となってしまった本作だが、それに目を瞑れば(作画・演出・構成)は特に問題はない上、映画単体としては完成度が高い方である。そのため、執拗に非難するのは流石に野暮ではないだろうか。
制作陣は本作不評をかなり反省したのか、次回作B級グルメサバイバル以降はシナリオでの問題点を概ね改善している。
関連タグ
羽鳥慎一:しんのすけと同じく埼玉出身とあだ名が「しんちゃん」という事でハトリシンというヒマワリ星人役でゲスト出演した。
黄金のスパイ大作戦←前作 次作→B級グルメサバイバル
のび太と雲の王国…似たようなテーマを持つ。