概要
ヒイロ閃光に散るとは、新機動戦記ガンダムWのサブタイトル。
Wの代名詞の一つ、ウイングガンダムの自爆が決行される回としても有名だが、OPでも展開されていたウイングガンダムとトールギスが交戦した最初で最後の回でもある。
ゼクス・マーキスは幼少期にサンクキングダムを崩壊に導いた主犯ダイゴ将軍を殺害、そしてオットーの決死の特攻によりミリアルド・ピースクラフトとしてサンクキングダムを再び制圧した事で全ての復讐を果たしたはずだったが、ガンダムという新たな好敵手に拘り続けており、その事をトレーズ・クシュリナーダに見抜かれていた。
レディ・アンはOZの新主力モビルスーツとなるトーラスに戦闘蓄積データから学習する自動操縦システムを組み込むためレイク・ビクトリア基地(4話で五飛とノインが邂逅した場所)から空路と陸路の二手に分かれシベリア基地にトーラスを輸送し、同時に襲撃してくるであろうガンダム5機を殲滅する作戦を立てる。同時にゼクスにはウイングガンダム(01)迎撃を命じる。
一方、ヒイロ・ユイはドクターJの通信により「トーラスが積む新システムは人類の脅威となる」と判断され、輸送の阻止及び機体の破壊を告げられる。デュオもまた(おそらくプロフェッサーGから)同じ任務を告げられ、(直接的描写はないが)トロワとカトルも開発者達からの任務でトーラスの輸送機撃墜に向かう。
張五飛もモールス信号で任務が命じられていたが、トレーズに敗北したショックを引きずっており、今回は出撃しなかった。
まず最初にガンダムサンドロックとマグアナック隊が陸地を襲撃、次いでガンダムデスサイズの加勢により輸送列車を破壊する事には成功するが、それはダミーで中に入っていたのはリーオーだった。
ガンダムヘビーアームズは空から輸送機に乗って襲撃する。
遅れてやってきたウイングもリーオーをバスターライフルで消滅させ応戦するが、そこにトールギスが接近する。
ゼクス「やめろ、ガンダム01。我々にはビームライフルもキャノンも必要ないだろう。
最強の敵として認め合い戦う。この申し出を受けざるをえまい。ガンダムのパイロットとして!」
ヒイロはバスターライフルを捨てビームサーベルを抜き、鍔迫り合いが始まる。
デスサイズとサンドロックをダミーの輸送列車で、ウイングをトールギスで足止めする事こそ出来たが、ヘビーアームズを本来の予定だった弾切れの状態にまで持ち込めず給油基地への襲撃を許してしまい、誰もが作戦は失敗だと思っていた。
だがレディにはそれすらも作戦の想定内に過ぎなかった。
ガンダムの性能にはかなわないと知ったレディは宇宙要塞バルジの照準をコロニーに向けコロニーを人質にして脅迫する作戦に出る。
レディはコロニーを破壊して欲しくなければ降伏しガンダムを引き渡すよう要求する。
あまりに非道なやり方にゼクスやノインも反発するが、トレーズの理想の世界を作る事にしか目がいかない特佐のレディは聞き入る事もない。緊張が走る中OZに一人の通信が入る。その声はドクターJであり、降伏の宣言だった。
ガンダムから降りるヒイロ、そしてガンダムのパイロットが少年である事に驚くゼクス。
だがドクターJはこう付け加えた。
ドクターJ「降伏はする、しかしガンダムは渡せん。
繰り返す、降伏はする、しかしガンダムは渡せん。」
ヒイロ「任務…了解…」
ヒイロはためらいなく自爆スイッチを押しウイングは大破。
ヒイロも爆風に飛ばされ落下し、目の瞳孔は開き、頭から多量出血による血だまりを作っていた。
その光景に唖然とするOZとガンダムパイロット双方。
コロニーを盾に取られた事でガンダムパイロットは攻撃を中止しその場を撤退せざるを得ないのだった。
瀕死状態となったヒイロはトロワのヘビーアームズが回収した。
なお、このエピソードは第10話である。第10話でこの展開である。
さらに言うとOPでも搭乗しているトールギスにようやくゼクスが乗ったのもその前の話である第9話である。
これまでウイングが倒したのはリーオーやエアリーズといったモブの駆る量産機、基地や輸送シャトルといった兵器ばかりであり、ようやく前話でライバルのゼクスもトールギスに乗り好敵手が現れたというタイミングで入れ替わるようにヒイロがウイングを失ってしまった。
無論、製造が困難なガンダニュウム製というのもあって完全修復にはこの話からゼクスが再戦を申し込む16話までかかっている。その間にウイングの戦闘シーンが回想以外に出てきた事は当然一度もない(OZの目を欺くためのダミーは登場したが)。
そしてようやくウイングの修復が終わり、トールギスとの再戦準備が整ったかと思うと
- ゼクスとの決闘こそ受諾したもののヒイロがウイングの搭乗を拒否しヘビーアームズに搭乗
- 17話で基地を破壊しているシーンが数秒映った次の話では「宇宙では目立つ」という理由で地球に放置
- とどめに24話でウイングを含むガンダムタイプの原型機ウイングガンダムゼロが(設計から20年以上を経てようやく建造される形で)登場
と色々ぶっとんだ展開が続いて結局、この話以降ウイングとトールギスが戦闘を行う事はなかった。
もはや悪意すら感じるレベルである。
※ただし、コミックボンボンで連載されていた漫画版ではゼクスとの決闘を受託した際に修復されたウイングへの搭乗を了承したので無事再戦が実現した。…まぁ、結局地球に置いてかれちゃうのだが。
※漫画版の展開があったおかげか、第2次スーパーロボット大戦Z再世篇でも修復されたウイングに乗ってトールギスと決闘している。……ただし、同作のウイングは後に捕獲されてそのまま最後まで行方不明であった。
余談
- ヒイロは後にガンダムを自爆させる時の注意点に「死ぬほど痛いぞ(経験者談)」とトロワに忠告している。
- ここで言う自動操縦システムとはもちろんモビルドールの事。劇中終盤でも登場するこのシステムの存在に初めて触れられる回でもあった。
- ウイングガンダムの自爆の最大の元凶となったレディ・アンのコロニーを盾にとるというやり方だが、本来のトレーズの望む「エレガント」な方法ではなく、ウイングガンダム自爆後ノインへの通信を介して異を唱えている。つまりトレーズがもっと早くに注意しておけばウイングガンダムは自爆せずに済んだという事である。
- 実はレディはこれ前後にもやらかしており、8話にはガンダムパイロットを確実に抹殺するためにニューエドワーズ基地ごと破壊しようとする、舞台が宇宙に変わる18話以降はロームフェラ財団の意見通りモビルドールを導入するなどトレーズの意思とは真逆の行動を何度も取ってしまっている。レディを信頼するあまり全てを任せっきりにしている事や自身の詳細な意思を打ち明けない事、毎回タイミングの悪い時に異を唱えるなど、トレーズの悪癖の大半がレディ・アンにまつわるものだと言っても良い。(尤もトレーズ様は自分の思想を実現出来るだけの可能性を持った人間には、厳しい試練を与えて素質があるかどうかを試すというドSな性分の持ち主でもあるため、レディの人災も試練の一環で意図的に放置している可能性も考えられる)
- この話で自爆してしまったせいでウイングガンダムだけが出番を失われたのではないかと思われがちだが、実際はコロニーを盾に取られたことの方がはるかに痛手でヘビーアームズ以外ろくに稼働しておらず、あまり機体を自爆で失った事による弊害は出ていなかったりする。むしろパイロットのヒイロがその時に一ヶ月経っても完治しきれないほどの重傷を負ってしまってゼクスとの決闘にも響いていたことの方がよほど弊害になっていた。
- 実際このエピソード以後デスサイズとサンドロックはマグアナック隊の地下基地に少なくとも一月以上は幽閉され、17話で新たな戦う意義を見いだし活動再開した頃にはとっくにウイングは修理されていた。実はウイングは自爆→修理というイベントで注目されていただけ皮肉にも早くに画面に復帰出来た方であり、この2機に関しては本当に一切出番がない。
- シェンロンは上述通り長らくパイロットが戦意を喪失していたため出撃はサリィ・ポォに説得されて戦意を取り戻す12話の一度のみしかない。
- そしてそもそもヒイロに関しては宇宙に上がってからの行動でわかるように「ガンダムが任務遂行の邪魔になるならガンダムを破棄して生身で突っ込む」性格なので、機体が失われなかったにしてもコロニーを人質に取られた時点で生身での行動に切り替えていた可能性が高い。
- まともに動いていたヘビーアームズですら未遂に終わったものの戦闘後に機体を自爆させること前提で攻撃を行っており、それ以降もヒイロを自身が誤殺してしまったシャトル乗客の遺族への謝罪に付き合い、ゼクスとの決闘場所へ安全に連れていくためのボディガードとしての役割の方が大きかった。そしてそのヘビーアームズもそれらの役割を終えると2クールもの間回想以外では全く出てこなくなる。当時のサンライズがよくこんな扱いを許したものである。
- ドクターJからは危険な機体と見なされていたトーラスだったが、モビルドールが凋落した続編のEndlessWaltzではほぼ有人機として扱われている。さらにノインがマリーメイア軍への反乱に使用し、結果的にマリーメイア軍の降伏に貢献するという何とも皮肉な扱いとなった。
- ウイングガンダムの自爆シーンはポプテピピックの自爆するしかねぇの元ネタになっている。こじつけではなく、自爆の際のエフェクトがそっくりそのままなのである。
- 第1話放送時トレンドになったMXでの再放送では2018年5月1日に放送。奇しくもヒイロの担当声優の緑川光氏50歳の誕生日前夜であった。