概要
複数の国家・地域が同一地の領有権を同時に主張することによって起こる問題。
領土問題が発生する要因には、過去しばしば両国間で変更されてきた国境線のどれを支持するかによって両国の意見が対立することで発生するものがある(全てがこの限りではない。言いがかり的なものから、武力による不法占拠などもままある)。
特に旧植民地であった国同士では、旧宗主国の都合一つで勝手気ままに国境線が動かされる。そしていざお互い独立となった時、旧宗主国が当事者同士に任せて逃げてしまえば、あとはお互いの主張が強烈にぶつかり合うことになる。
主な領土問題
- 朝鮮半島(北朝鮮・韓国)
- 北方領土(日本・ロシア)
- 竹島(独島・リアンクール岩礁)(日本・韓国)
- 尖閣諸島(釣魚島)(日本・中華人民共和国・中華民国)
- 南沙諸島(スプラトリー諸島)(中華人民共和国・中華民国・ベトナム・マレーシア・フィリピン)
- カシミール(中華人民共和国・インド・パキスタン)
- ゴラン高原(イスラエル・シリア)
- ピラン湾(クロアチア・スロベニア)
- 北アイルランド(イギリス・アイルランド)
- ジブラルタル(スペイン・イギリス)
- オリベンサ(スペイン・ポルトガル)
- セウタ、メリリャ(スペイン・モロッコ)
- ハンス島(カナダ・デンマーク)
- ナヴァッサ島(アメリカ合衆国・ハイチ)
- フォークランド諸島(マルビナス諸島)(イギリス・アルゼンチン)
- ハラーイブ・トライアングル(エジプト・スーダン)
領土問題の副作用?「無主地」
また、こうした国境線の問題次第では、「どこの国も領有を主張しない」無主地なる土地が発生することがある。
代表的な事例で言えば、エジプトとスーダン国境にある「ハラーイブ・トライアングル」と「ビル・タウィール」。後者は無主地とされる。
当初緯線に沿ってまっすぐひかれた国境によって、ハラーイブがエジプト、ビル・タウィールがスーダン領とされた。ところが、宗主国イギリスによって、お互いの国の遊牧民がそこを本拠地にしているという理由から、ハラーイブはスーダンに、ビル・タウィールはエジプトに属する新しい国境線が引かれた。
独立後、互いの国は石油資源の豊かなハラーイブを欲しがった。エジプトは最初の、スーダンは改正後の国境が正しいと主張するわけだが、どちらの場合もハラーイブを自領としたらビル・タウィールは相手国領となる。しかし、ビル・タウィールはハラーイブより遥かに資源に乏しい土地で、ハラーイブを手に入れられるならお互い必要では無かった。
以上の理由から、現在に至るまでビル・タウィールはどちらの国も放棄を明言するという結果になった。(逆にハラーイブは現在も係争中。ただしエジプトが実効支配している)。加えて周囲が両国領土に囲まれた内陸地であるから、第三国も誰も手を出せず、無主地となったわけである。しばしば南極を除く世界最大の無主地とされることがある。
もっとも、「手が出せない」のはそこ以外に領土を持つ一般的国家であるから。しばしばミクロネーション建国を目指す者たちがこのどこの国にも必要とされていない土地を求めてやってくる。2014年にはアメリカ人が娘の「プリンセスになりたい」という要望をかなえるために「北スーダン王国」を建国した…という。
同様の事例は他の無主地にもみられる。ドナウ川の帰属問題に端を発したセルビア・クロアチアの領土問題でも無主地が発生した。この無主地に対し、完全な古典的自由主義を掲げた「リベルランド」という「国家」を作った者がいる。
何れの場合も、過去のいい加減ともとれる宗主国の国境ラインとその変更という、無視していいかどうか分からないものが原因となって現れる存在である。一方の当事国が、軍事侵攻などで我儘勝手に侵略したような土地の場合、好き放題に国境線を引くことが多いためこのような土地が発生しないことが殆どである。