概要
アイルランド島北部のアルスター地方を形成する9つの州のうち6つの州にて形成されるグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国・イギリス)を構成する自治地域。
同島の大部分が独立国のアイルランド(共和国)が占める今日においては事実上の飛び地状態となっている。
自治政府の所在都市はベルファストで、国花はアイルランド共和国と同じシャムロック(カタバミ)。
歴史
ケルト系など多くの先住民族のいたアイルランド島は中世以降イングランドや大英帝国による武力制服と長きに渡る圧政の歴史を受けていた。
その後独立を求める声が高まり、アイルランドは1922年に独立(完全独立はイギリス連邦を離脱した1949年)したが、アルスター地方のうち6州がプロテスタント派のブリテン系市民(特にスコットランド系)が多かったことと、ベルファストなどが当時の英国での工業面において重要な面を持っていたこともあり、この地域は北アイルランドとしてイギリスの一部に残留したという経緯がある。
日本で強引に例えるならば、(当然仮にでありその可能性はほぼ皆無だが)北海道(面積的にはアイルランド島と近い)がアイヌという国として日本から独立したが、函館などの渡島半島が日本経済において不可欠であったためにだけが日本領として残ったようなものである。
その後プロテスタント系市民とカトリック派が主流のアイルランド共和国派市民との間で宗教やナショナリズムなどによる対立が続いており、一部の過激派が引き起こした武力闘争にも発展し北アイルランドの治安は長く悪化していた。
1990年代初頭に双方の主流勢力同士が和平を結んだ事により、政情と治安は大幅に改善し安定化する。
以降は合法かつ平和的な手段によるアイルランド共和国との統一の動きも見られるが、過激派の一部は消滅せずに自治政府を狙った小規模な襲撃・犯罪活動を続けているとされている。加えて、2016年に決まったBrexitによって経済的な特殊性もあって統一は難しいとの意見もある。
国籍に関しては、現地民はイギリスとアイルランドどちらのものも得ることができる。
ちなみに、2021年の調査では、カトリックの人口が若干ではあるもののプロテスタント派を上回っている。
文化的な交流も広がってはいるものの、結局はアイルランド共和国ではないので、アイルランドから北アイルランドへの移動、もしくはその逆の際は通貨、ビザなどの注意が必要だ。
地形
面積は約14,130km2で、日本の四国地方より少し小さいほどの大きさ。
人口は約180万人前後で、4分の1がベルファストに集中する。
北大西洋海流の恩恵により冬でも氷点下になることは少ないが、一年を通して冷涼。
丘陵と低地とが複雑に入り組んでおり、低地では酪農や果樹栽培が盛んである。
タイタニック号建造の地でもあるベルファストは造船業や機械工業が発展しており、貿易港として大きく機能している。
北部の海岸には世界自然遺産に登録された「ジャイアンツ・コーズウェイ」(巨人の石道)という景勝地があり、無数の石柱が海中から陸へと道のように続く。
火山活動と海の浸食が生み出したとされるこの風景は、英雄フィン・マックールが作ったとする伝説が残る。