概要
初登場は1939年の『マーベル・コミックス』誌1号(Marvel Comics #1)。キャプテンアメリカより登場が早く、初代ヒューマントーチと並んでMARVEL最古参のキャラクターである。
ネイモア(Namor)は、水棲人類ハイドロ・ホモ・サピエンス(ホモ・マーマヌス)の王国、アトランティスの王子である。母親はアトランティスの王族で、父親はアメリカで砕氷船の船長だった。
基本的には七つの海とアトランティスを守るために戦い、海面以上の世界にはそれほど関心がなかった。しかし、アベンジャーズやファンタスティック・フォーといった地上界のスーパーヒーローたちとの出会いにより、彼らの友人としてさまざまな脅威と戦っている。
プライドが高いのが欠点だが、勇猛で誇り高き戦士である。味方だったり敵だったりスーパーヒーローの枠にとらわれないキャラである。
外観
人間と同じ肌色(なお、純正アトランティス人は、青または水色の肌を持つ)。
耳は尖り、やや釣り目。目の色は青灰色。髪は黒。
両足首に、一組の小さな翼を有する。この翼は、飛行時に姿勢制御に用いる。
普段は上半身裸で、鱗模様の緑色のパンツと、貝殻型バックルの金色のベルトを締めている。
後年になると、黄金色のブレスレットまたはガントレットを装備するほか、鱗模様のジャケットを上半身に羽織る事も。
武器として、トライデント(三叉槍)を携行する場合もある。
能力
水中および空気中の、両方で呼吸が可能(純正アトランティス人は、水中でしか呼吸できないため、空気中では水が満たされたヘルメットを装着する)。
海中を時速80㎞で泳ぎ、空中飛行も可能。また、深海で自在に活動できるため、地上では怪力を持ち、100tの重さを持ち上げる事が可能。
電気ウナギのように、電撃を放つ事が出来る。この能力は、一度用いるとしばらくの間充電する時間が必要。
また、海中の生物、イルカ、シャチ、サメなどとある程度の会話(意思疎通)もできる。
このほかに、肉体的な能力ではないが、アトランティスに伝わる角笛を用い、海中の怪物を召喚。従わせる事も可能。ファンタスティックフォーと戦った際には、角笛を用いて巨大クジラ怪獣を海中から召喚した。
遍歴
ゴールデンエイジ
アメコミ最初期(1939年)に、マーベルコミックの前身、「タイムリィ・コミック」に登場。
この頃は、ヒーローと言うよりも、環境破壊を行う人類に対してのアンチヒーローといった位置づけのキャラだった。海を汚染する陸上人類に敵対する海の超人というキャラクターだったが、1940年7月に、タイムリィから改題した「マーベル・ミステリーコミック」#9にて、オリジナル・ヒューマントーチと対戦する。
これは、現在もマーベル内で頻繁に行われている、タイトル及びキャラクター同志の「クロスオーバー」の先駆けで、それまでは作品同士のつながりは存在していなかった。
最初は、ネイモアを退治すべく、警察がヒューマントーチ=ジム・ハモンドに依頼。以降、マンハッタンを舞台に戦っていたが、婦人警官のベティ・ディーンにより両者は和解。そのまま別れる。
しかし後にネイモアは、スペインでイギリス・イタリアの両軍へ攻撃。ジブラルタルを占拠した後に全人類へ宣戦布告する。
のちにアメリカ本土へ、巨大タービンを用いて大津波を起こし強襲。ヒューマントーチとニューヨークの上空で壮絶な空中戦を展開した。
この後、第二次世界大戦が勃発。ネイモアも人類への攻撃を止め、連合軍に協力してナチスドイツおよび旧日本軍と戦うようになる。
戦っていたトーチとも仲間となり、キャプテンアメリカともチーム「インベイダーズ」を結成したりして、枢軸国およびそれらの国のヴィランと対戦した。
やがて第二次大戦が終結するとともに、人気も低迷。しばらく姿を消す。
シルバーエイジ
1962年に発刊された「ファンタスティックフォー」#4で、ネイモアは再登場する。
当時、ファンタスティックフォーの仲間とケンカして家出したヒューマントーチこと、ジョニー・ストームが、マンハッタンのダウンタウン、スキッド・ロウ(いわゆるドヤ街)で宿泊した際に、記憶喪失のホームレスとして登場する。
顔はヒゲに覆われていたため、ジョニーは自身の炎でヒゲを剃り、髪の毛も整える事で、そのホームレスがネイモアである事に気付く。
これが切っ掛けで記憶を取り戻した後、自身が不在の間に簒奪されたアトランティスの王座を取り戻し、再び王として君臨する。
その後、海洋汚染による地上人への怒りを利用されて、再び地上に戦いを挑んだり、その際にファンタスティックフォーと対戦し、インビジブルガールことスーザンに横恋慕し、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズと三角関係に陥ったりした。
アベンジャーズやX-MENとも戦った事もある。その時には、戦中にともに肩を並べたキャプテンアメリカと再会している。
後に実業家として会社を興し、地上で商業活動を行って、その利益を用いて海洋環境保全活動をするようにもなる。
アトランティス人の同胞が国連に拘束された際、奪還すべくアトランティス軍が地上に進軍した時に出た被害も、この会社の利益から出し弁償した事もあった。
ドクター・ストレンジにより、ヒーローチーム「ディフェンダーズ」の一員にもなった。
MCU版
演:テノッチ・ウエルタ、吹替:浪川大輔
ハルクとともに映像化の権利はユニバーサル・ピクチャーズが持っていたが、彼とは違い単独作品は作られず、そのまま権利がマーベル・スタジオに回帰。
2022年11月11日公開予定のフェイズ4最終作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』に登場することが発表され、80年以上経っての実写デビューとなった。
吹き替えの浪川氏は「ヒーロー映画に重要ポジションで関わるのは初めて」「喜びの極み」とコメントしている。
大きな相違点として、立場が「アトランティスの王子」から「タロカンの支配者」に変更されているが、これは恐らく、先に実写化されたDCコミックの海底人ヒーローアクアマンとの設定的被りを避ける為と思われる。
予告ではエムバクから羽を持つ蛇の神「ククルカン」と呼ばれており、両足首の翼は原作準拠だが、タロカンの文化全体がマヤやアステカなどの中南米の文明を意識したものであることがうかがえる。
それを踏まえて界隈では、「タロカン」の由来はアステカ神話に伝わる雨の神トラロックが支配する楽園「トラロカン」ではないか?と考察されている。
またミュータントに分類されることが明言されており、シリーズにこれから登場する予定のX-MENたちとの関係性も気になるところではある。
ちなみに原作コミックスにおいても「近現代以降に初めて人前に姿を現したミュータント」と扱われる事があるので、あながち的外れな設定変更ではなかったりする。
ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
ワカンダ以外でヴィブラニウムを保有する海底の王国『タロカン』の王として登場。
アメリカが開発したヴィブラニウム探知機によって国が荒らされる事を危惧し、ティ・チャラ亡き後のワカンダと接触する。
劇中ではネイモアとタロカンのオリジンについて、ネイモア本人がシュリに語る形で紹介されている。
元々、タロカン人の先祖達は中南米に住む原住民の一部族の一つだった。
だが、スペインからやって来たコンキスタドールによって土地を奪われ、迫害を受け、ヨーロッパからもたらされた天然痘の流行により滅亡の淵へと追いやられた。
そんなある日、一族のシャーマンが啓示を受け、ワカンダの物とはまた別の、大西洋の海底に落下していたヴィブラニウム隕石による影響を受けた海草を発見。
生き残りの一族全員でその海草を摂取した。
すると……肌は鮮やかな青色に変色し、地上で呼吸ができなくなった代わりに水中で呼吸・生存が可能な肉体に変貌。
人々は海中へと移住し、築かれたのがタロカン帝国だった。
この時、一族の女性の一人は妊娠しており、胎内の子供に悪影響が出ることを危惧して海草を摂取することを躊躇っていた。
だがシャーマンが『生まれた子供はタロカンの王にする』と説得し、ようやく海草を摂取して海中へと移住した。
その後、その女性は海中で一人の男子を出産した。
その子供は『地上にいた頃のタロカン人と同じ褐色の肌』、『他の同胞より先が尖った耳』……そして『足首から生えた鳥のような小さい羽』を持って生まれた。
母親の胎内にいた頃に前述の海草の影響を受けた彼は、『水中だけでなく、陸上でも呼吸と生存が可能な肉体』、『足首の羽による高速空中飛行(飛行中、足首の羽がハチドリのように超高速パタパタしている)』、『(時系列的に後の時代に登場する)ソーやハルクと同等かそれ以上の腕力』、『成長や老化のスピードが他者よりも遅く、寿命が長い』等の特性を生まれながらに備えたミュータントとして誕生し、誕生前に交わされた約束の通り、タロカンの支配者『ククルカン(マヤ文明の神話に伝わる羽を持つ蛇の神の名)』となった。
時が経ち、彼の母が年老い亡くなると、その遺言に従い母の亡骸を『故郷の地』に埋める為に数人の仲間と共に地上に上陸。
だがそこで彼が見た物は……本来の住民である筈の人々を奴隷として迫害し、ヨーロッパ風の屋敷で暮らすスペイン系移民の姿だった。
その光景に怒りを感じた彼は仲間達と共に移民達を殺害。
その場にいた宣教師から「El niño sin amor(エル・ニーニョ・シン・アモレ/スペイン語で『愛のない子ども』の意)」と呼ばれた。
以来彼は敵対者に対して自らを、そのスペイン人の言葉を捩った『ネイモア』と名乗るようになったのだった。
ネイモア以外のタロカン人は水中でしか呼吸ができない為、基本的に地上で活動する際には口元と鼻を海水を含んだ半透明の青いマスクで覆わなければいけない。
母語はユカテコ語(ユカタン半島の先住民が使用する言語で、マヤ語の一種)で、挨拶する際には顔の前で両手を揃えて掌を見せるドラゴンボールのかめはめ波を打つ時のようなポーズを取る。
その他
キャプテンアメリカが北極海で氷漬けになっていたところを、アベンジャーズが回収し復活した……という出来事の遠因を作っている。
第二次大戦直後、エスキモーが崇める氷山の中にキャップが眠っていたが、ネイモア本人はそれに気づかず、エスキモーの村で暴れた際に、その氷山を海に放り投げていた。
これがのちに、アベンジャーズに回収されて、キャップが復活する事になる。
また、従姉妹に「ネイモリータ」がいる。
青い肌の、アトランティス人の女性。ネイモアと同じく怪力と水中呼吸、飛行能力などを持つ。ヒーローチーム「ニューウォーリアーズ」の一員。
スタンフォードにて、TV撮影中。ヴィラン「ニトロ」の攻撃を受けて死亡。この事が切っ掛けで「シビルウォー」が始まる事となる。
関連項目
アクアマン:DCコミックのヒーロー。「アトランティスの海底人」「アトランティス王」「地上の人類とのハーフ」「地上と海中両方で呼吸可能」「怪力を持ち海中の生物と意思疎通可能」と、ほぼ同じような設定と能力を有する。ただし、アクアマンの方が若干人づきあいが良く、ネイモアのような空中飛行能力は有していない。
大規模クロスオーバー「DCvsマーベル」では、当然ながら両者は対戦。水中および地上での殴り合いはほぼ互角だったが、ネイモアはアクアマンの左手義手のケーブルにより縛られ、更にはアクアマンに随伴した巨大なシャチに押しつぶされてノックアウト。
アクアマン曰く「ズルができない高潔さ、それがあんた(ネイモア)の弱点さ」
マーベルズ:アレックス・ロスによるグラフィック・ノベル。マーベルユニバースのヒーローたちの動向を、一人のカメラマンの目を通して描いている。この第一章にて、サブマリナーとオリジナルトーチとの動向、および社会に与えた影響とが描かれている。