幻坂
まぼろしざか
あなたが教えてくれた天王寺七坂、もちろんちゃんと言えますよ。一心寺さんの横、四天王寺さんから通天閣の方へ下っていくのが逢坂、そこから北に向かって順に天神坂、清水坂、愛染坂、口縄坂、源聖寺坂、そして真言坂。ほかの六つの坂が東西方向なのに、真言坂だけは南北方向
天王寺七坂
『坂』というのは『境目』でもあって、現実と現実でない不思議な別の世界へつながっている途中
清水坂
もうすっかりお婆さんになった女性が、幼少期天王寺七坂を縄張りに幼馴染と遊んでいた頃、同い年の幼馴染の男の子の妹を皆で可愛がっていたが、幼馴染兄妹は親の離婚で遠くに引越して行ってしまう。約束していた遊びに来ての連絡が中々来ない。そんな中、独り清水寺で四人で遊んだ楽しかった日々のことを思い返していたら…
愛染坂
雨の坂道で出会い恋におちた、小説家の男性と作家のファンで自身も作家を目指している女性。しかし自意識のために男性は女性を死においやってしまった。
源聖寺坂
少女時代上る下るした源聖寺坂。でも少女は理由もなく源聖寺坂が怖かった。大人になり大阪を離れ実家の両親も引っ越したため大阪に帰省しても源聖寺坂を通ることもなく過ごしていたが、パーティーに招待してくれた逗子にある先生の別荘で源聖寺坂が描かれた絵と出会う
口縄坂
猫が大好きだけどペット禁止のマンションの為に猫が飼えない美季。そんな美季を喜ばせてあげようと高校の親友で織田作之助ファンの理緒が、猫が沢山いる口縄坂に連れてきてくれた。大いに喜び、全部の猫の写真を撮りたいと日参する美季。しかし家に帰ってから誰もいないはずなのに視線を感じたり、金縛りにあうようになり…
真言坂
翻訳の仕事をしている絹江。彼女は学生の頃アルバイト先で出会った27歳のフリーライターと良き友人関係になった。そんな中、彼女に好意を持った男にしつこく迫られ相手の男はストーカー行為に及ぶようになり、恐怖の中フリーライターの友人に相談したが…
天神坂
探偵と名乗る男に割烹料理屋に連れて来られた女。だが女は探偵という職業に不信感を抱いていた。
- 濱地健三郎シリーズの一つでもある作品。新宿に事務所を構えている探偵なので、所謂大阪出張編。
- 天神坂の天神は菅原道真のこと。九州に左遷される時、船待ちしていた道真が休憩に利用した坂だということから天神坂と呼ばれるようになった。
- 道真は、天神坂で船待ちしている時に貰った『岩おこし/粟おこし』のその美味しさに感動し、菅原家の梅の家紋を入れることを許可した。
- 坂のふもとにある安居天満宮(安居神社)は、菅原道真を祀っている。その境内に、ある一本の松の木が祀られている。それは大坂夏の陣で退却し立つことも出来ないほど疲労困憊した真田幸村がその松の根本で休んでいたところを敵方に見つかり討ち取られた場所。終焉の地として『真田幸村戦死跡之碑』が建っている。
歴史小説
枯野
弟子たちの仲違いの仲裁の為に大阪に来た松尾芭蕉。しかし体調を崩し、その道々で謎の男の姿を見かけるようになる…
関連タグ
有栖川有栖(作家アリス):彼が作中で散歩コースにしている場所として多く天王寺七坂が登場している。『朱色の研究』の作中で登場人物たちが、しんとく丸云々、日想観云々(夕陽庵に日想観のことが出てくる)の話もしている。また『三つの日付』では「生玉のホテルで~」と森下がアリスに事件の説明をしている場面で生國魂神社近くのラブホ街のことがチラっと出てくる。
有栖川有栖(学生アリス):作家アリスシリーズを書いてるのは未来で作家になった学生アリスなので、彼も天王寺七坂に詳しいということになる。