パワードスーツ
ぱわーどすーつ
概要
SF作品などに登場する、装甲や武装を施した強化服などのこと。近年ではファンタジー色の濃い作品にも類似する物が登場している。
しかし、特筆すべきは技術の進歩により、現実が追いつき始めている点である。
その嚆矢は、ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』に登場した機動歩兵と言われている。日本では、スタジオぬえがデザインを手掛けた機動歩兵がハヤカワ文庫版『宇宙の戦士』の挿絵に描かれており、『機動戦士ガンダム』をはじめとした様々な作品に影響を与えた。
現実での実用化
現実にも産業用や介護福祉などの分野で、こうした体力強化・補助スーツが実用化に向けて開発が進められている。
現在実用化されている外骨格は大まかに分けると、動力を搭載して動作をアシストするアクティブ型外骨格と、動力を搭載せず負荷を分散するパッシブ型外骨格の2種類がある。
アクティブ型外骨格
軍事においても、1966年に考案されたゼネラル・エレクトリック社のハーディマン(Hardyman)を祖とするパワーアシストスーツが開発されているが、これらはフィクション作品のように戦闘に用いるのではなく、フォークリフトやクレーンのように物資の運搬や搬送などを想定している。
歩兵用として銃火器やバリスティックシールドを支える多関節アーム型の装備も開発されているが、これは大型ビデオカメラを安定させる撮影補助器具と同様のもの。腕にかかる重量を肩や胴体へ分散させる装置であり、装着者の動作を強化するパワードスーツとは異なる。
日本では「サイバーダイン社(「ターミネーター」シリーズの同名企業とは無関係)のアシストスーツ「HAL(ハル)」をはじめ、高齢者向けの動作補助スーツなども多数開発されている。足腰や腕のみを補助する部分的な補助システムは荷役や農業向けに実用化が進むほか、防衛省が自衛隊向けの研究を継続し、野外を機動できるレベルのものが試作されている。
2020年1月7日にはデルタ航空が「サルコス・ロボティクス社と提携し、従業員の身体能力と安全性を強化し、持ち運び可能で動きやすい外骨格型パワードスーツの設計を開始する」と発表する等、地道に実用化は進んでいる。
パッシブ型外骨格
パッシブ型外骨格は主に肩や腰にかかる負荷を別の部位に軽減し、疲労や負傷を減らす目的で設計される。動力を搭載しないため人間の筋力を強化する効果は薄いが、その分軽量で比較的安価で導入もしやすい。
カナダのマワシ社の戦術外骨格UPRISEは、肩と腰と膝を覆う外骨格で、腰や肩にかかる負荷を分散することで兵士の疲労や負傷を減らせるとしている。
パッシブ型外骨格は2017年頃からアウディ、フォード、ヒュンダイ、GMなどの自動車工場で採用され始めており、事故率を大きく減らすことに成功しているという。 電力不要のパワードスーツ「EksoVest」でフォード労働者の事故が83%も激減する絶大な効果を発揮
ドイツではオットーボック社のPaexo Shoulderを着用した外科医が2020年ごろからテストを行なっている。外科医は長時間の手術を行うため首や肩に疲労が蓄積し筋骨格系の損傷リスクが高いというデータがあるためだという。 外骨格着用による精密な脳神経外科手術
パッシブ型外骨格は比較的安価とはいえ2022年現在でも数十万円以上することが多い。その点では、日本のユーピーアール社が開発したサポートジャケット Bb+FITは機能を絞っており2万5000円と非常に安い。 パッシブ型はとがった製品で市場開拓をけん引
エンターテイメント目的の外骨格
佐川電子の『パワードジャケットMK3』や『スケルトニクス』(後述の動画リンク)
のような「動作の拡大」を主目的にしたスーツも発表されているが、これらは「強化」と言えるほどの動力機構を持たず、スケルトニクスに至っては無動力なのを特徴として推している非実用的な器具である。
言うなれば「関節つきの竹馬とマジックハンドを手足の形に組み上げた」もので、ワイヤーと滑車、パンタグラフ機構の組み合わせで動作を連動拡大しているため、テコの原理で末端のパワーは低下する。
これらを「全身型パワードスーツ実用化の第一歩」のように受け止めるのはむしろ逆であり、実際にパワードジャケットの開発元は「アート作品なので動かす前提では販売していない」、スケルトニクスは「エンターテイメント特化」と公言している。
その他、実用化された外骨格については以下のリンクを参照。
[[外骨格カタログ Exoskeleton Report
>https://exoskeletonreport.com/product-category/exoskeleton-catalog/]]
因みに後述のパワードスーツ登場作品の中には「動作入力の逆フィードバックを利用して『心神喪失状態の運用者の身体を強制的に駆動させる事で危機的状況から離脱』させる」機能が描かれている作品が幾つか確認されている(ホビージャパンエクストラ1988.夏号の「HEAVY ENFORCER 99」等)。本格的な実用型パワードスーツの実現に際してはこの様な保護機能も必要になるだろう
技術的問題点
そもそも着こむタイプのパワードスーツはその内部骨格を生身の人間が担当するため、どうしても性能に上限がついてしまう。それは急激な運動や機動に人間の骨格・筋肉・生理機能が耐え切れないためであり、挙動に関しては人間以上にするのが難しくなっている。
また、パワーを適度に調整する技術なり機能も必要である。敵を殴打するなら最大パワーで良いが、人質を抱き上げようとしたら握り潰してしまった、では大問題なのだから。
更に軍事用として見た場合も人間と大差が無いサイズに内部構造を収めなければならないために脇下や股下・首などの関節部に制限がつき、極端な重武装・重装甲化が難しく、戦場で運用するには装甲が脆すぎるなどの問題点も多い。この点は着ぐるみなどを想像すると分かり易いだろう。
上記のような問題点を克服する手段の一つとしては、内蔵型の動力を備え、重量の増大化にも耐えられる乗り込み式のパワードスーツを開発するのが最も現実的な解決手段と言えるが、最早その時点でパワード「スーツ」とは呼べないだろう(創作では全高5mも行かなければ巨大ロボットでなくパワードスーツ扱いされることもザラだが)。
更には上記の逆フィードバックを採用するならば、制御系へのクラッキングなどの対策も必要になる。
概要(創作)
SF作品などに登場する、装甲や武装を施した強化服などのこと。
近年ではファンタジー色の濃い作品にも類似する物が登場している。
巨大ロボットものが「リアル系」「スーパー系」の区別が(もともと某ゲームの造語という点はおいておく)曖昧になっていったように、
パワードスーツも登場作品が増え続け定義も曖昧になってきている。
要するに、「人体を密閉する大型の強化服」も「3mの人型兵器」も「水着にしか思えないボディスーツ」もどれ作品次第でパワードスーツなのだ。
なんだかんだで厳密な定義は無く、それぞれの原作者のフィーリングでカテゴライズされている場合が多い。特定ジャンルではなく、こうした類のガジェットの総称として用いられるため、亜種とも言えるものが多数存在する。
着るタイプ
装甲服など。
使用者は基本的な操作については特別な訓練を必要としないとされる事が多く、「着る」という性質上、大きさは人間の身長と大差ない。
(前述した通りパワー制御が難しかったり、更には[[肉体改造]が必要な場合もあったりと、そんなに甘くはないことが語られている作品もある)。
腕を千切られたら当然中の人の腕もちぎれて生命の危機。
大型の着るタイプ(仮)
一応着るタイプではあるが、大体3m以上の大きさがあるため四肢の先まで生身が入っているわけではない(むしろ届かない)事が多く、四肢が千切れても必ずしも生命の危機とは限らない。たとえばパワーアーマーであれば足先と掌は完全に機械なので千切れても無事である。
乗るタイプ
コクピットが存在していて乗り込むタイプ。巨大じゃない巨大ロボット。
大きさは5mもないが、四肢を千切られても。コクピットさえ無事ならパイロットは大体安全。
巨大ロボットの代表格たるモビルスーツが「スーツ」を名乗っている理由も一応「乗るタイプのパワードスーツ」と言う扱いだからである。
そもそも本来「スーツ」とは「一揃い」という意味なので、実は搭乗型でもスーツと言えなくもない。日本で「スーツ=服」となったのは「上下一式の服」をスーツと呼んでいた事に対する勘違いである。
マスタースレイブ型
所謂モビルトレースシステム。乗るタイプの一種だが、パイロットの動きにリンクしているためパワードスーツに分類される事がある。
特にアームスレイブは開発時は3m程度の「大型の着るタイプ」だったものが、性能が足りなかった為に8m程度のマスタースレイブ型に大型化したものである。