概要
商用交流電源(日本の一般家庭では100ボルト、50ヘルツないし60ヘルツ)を変圧・整流するための変圧器。特に外付けのそれを指す。
電圧を入力側より低くする「降圧」・高くする「昇圧」からなる『変圧』機能、交流の電流を直流に変換する『整流』機能を持つ。直流を交流に変換することは構造上不可能。
変圧と整流を行うアダプターを「AC-DCアダプター」、変圧のみ行うアダプターは「AC-ACアダプター」と呼ばれる。ハイフンの左が入力、右が出力を表すことが多い。
プラグと変圧器が一体のものは、壁面とそのコンセント差し込みの摩擦力で変圧器本体を支える。表面積が大きく取れ、放熱の面で有利。断線のリスクもほとんどない。USB-ACアダプターのような小型低出力の用途に使われる。
携帯性が重視される携帯電話やノートパソコンの充電器、ノイズを嫌う無線機や音響機器の電源などといった用途に、外付け型ACアダプターが使われる。
洗濯機や電子レンジ、テレビといった「一度設置したら基本的に移動させない」前提の製品は本体内蔵が主流。ただし小型化や軽量化、デザイン性重視や本体内部の部品点数の増加を避けるため、あえて外付け型を採用する事例も多い。
多くのアダプターは外気への熱放射のみで排熱する「自然空冷」方式だが、熱量が多い場合はファンの送風で排熱を促す「強制空冷」方式が採用される。
変圧・整流方式
- 変圧方式
- トランス式
- アダプター内部に2つのコイルがドーナツ状の鉄芯を巻いている構造。入力電流を一度磁気に変換して鉄芯に流し、出力側のコイルで再び電流に戻して変圧する。コイルの巻き数で電力量が変化する。余分な電力はレギュレーターで廃熱として捨てる。耐久性に優れているが、大型で質量が重く、機器未使用でも待機電力を多く消費するのが短所。今日ではノイズ対策から音響や無線を扱う機器に使われている。
- スイッチング式
- 半導体式スイッチングレギュレーターで、電流のオンオフを高速で繰り返すことで変圧する。電流オンの比率で電力量が変化する。小型化や軽量化が容易で、出力を柔軟に変更でき待機電力を抑えることが可能。高価なのと、トランス式に比べ電波障害を起こしやすいのが短所。近年の汎用変圧器の主流になりつつある。
- 整流
- 電流を一方向にしか流さない性質を利用し、直流電流を生成する。
- トランスやスイッチングレギュレーターから直流を取り出しただけでは電流が波状になり安定しない。コンデンサに充電させ、電源からの受電がなくなる間コンデンサの放電でまかなうことで、電流を平滑に供給できるようにする。
使用上の注意
プラグの経が合って差し込めるからといって他機種のACアダプタを流用してはいけない。電流や電圧が機器で定められた値と違うばかりか、極性のプラス・マイナスが逆の可能性があるため。
- 例としては、EIAJ極性統一プラグを使用する機器はセンタープラスに統一されている。それ以外の規格のプラグを使う機器は、1990年代半ば以降の機器はセンタープラスを採用するものが多いが、音響機器や楽器・エフェクターなどはセンターマイナスが主流。
- 任天堂ではACアダプタの誤挿入を防止するため自社のゲーム機に『ニンテンドウ64』からは専用のコネクタを採用している。
- 現在はUSBを電源コネクタとすることであらゆる機器のACアダプタをひとまとめに出来るようにした商品の発売により、ケーブルの断線や極性の問題はある程度解決している。
余談
トランス式変圧器が主流だった時代のなごりで、「使っていないACアダプターはコンセントから外す(延長コードのスイッチを切る)」ことが習慣になっている人もいる。
変圧器とプラグが一体の機種は壁側のコネクタに直接挿し込むと、変圧器本体で他のコネクタが塞がりがち。それを解消するために、家電メーカーや雑貨屋では、長さ20cm以下の短いものや、ACアダプターの挿せるスペースを確保した延長コードを発売している。
コンセントにACアダプターを挿してから送電が始まるまでタイムラグがあるのは、コンデンサの充電を行なっているから。
強制空冷の場合、変圧器周辺をカバーで覆い、気流を整えることで排熱効率を上げるため、ダクテッドファン寄りの構造になる。
関連タグ
ノイズ;スイッチング電源のノイズは激しく、ラジオで音として聴くことができる。
修理/交換;電気製品が使えなくなった原因がACアダプターなら、それを取り替えることでまた製品を使える。外付け式の強み。
据え置きゲーム機;外付けACアダプターを採用した機種が多い。