ACアダプタ
えーしーあだぷた
商用交流電源(日本の一般家庭では100ボルトないし200ボルト、50ヘルツないし60ヘルツ)を変圧・整流し、電子機器などの動作に適した電圧の直流を出力する電気機器。
電圧を入力側より低くする「降圧」・高くする「昇圧」からなる「変圧」(レギュレータ)機能、交流の電流を直流に変換する「整流」(コンバータ)機能を持つ。直流を交流に変換する機能(インバータ)はない。変圧と整流を行うアダプターを「AC-DCアダプター」と呼び、変圧のみ行うアダプターは「AC-ACアダプター」と呼ばれる。ハイフンの左が入力、右が出力を表すことが多い。
基本的にその機器ごとに専用のものが付属する。様々な機器に対応できるようにした「マルチACアダプター」も出回っているが、供給可能電流値が異なれば正常に動作しなかったり、過負荷となって発熱し、最悪発火することもあるので、慎重に確認することが求められる。一方で、近年はUSB端子で直流5V(USB PD対応であれば最大20V)を出力する「USB-ACアダプター」(USB充電器)もよく用いられ、消費電力が30W未満の携帯機器などでは主流となっている。汎用のUSB充電器の使用を前提に、付属のACアダプターを省略した機器も増えている。
携帯電話やノートパソコンなどバッテリー駆動の機器のACアダプターは充電器とも呼ばれる。白物家電、LED照明、デスクトップパソコンといった「一度設置したら基本的に移動させない」前提の製品は内蔵タイプが多いが、ノイズを嫌う音響機器(ラジカセなど)の電源は多くが外付けである。また、変圧・整流回路はそれなりの容積を食うし、発熱源であり熱設計が面倒になるので、小型化や軽量化、デザイン性重視、静粛性確保(発熱源を分離しファンを不要にする)のため、デスクトップパソコンなどでもあえて外付け型を採用する事例も多い。現行の据え置きゲーム機でいえばPS5は内蔵電源だが、Switchはドックに電源を内蔵せずACアダプターが必要である。
上記の通り、ACアダプタは発熱する。多くのアダプタは外装からの熱放射のみで排熱する「自然空冷」方式だが、熱量が多い場合はファンの送風で排熱を促す「強制空冷」方式が採用されることもある。
小型でプラグと変圧器が一体のものは、壁面とそのコンセント差し込みの摩擦力で変圧器本体を支えることができる。表面積が大きく取れ、放熱の面で有利。断線のリスクもほとんどない。USB-ACアダプターのような小型低出力の用途に使われる。
変圧方式
トランス式
アダプター内部に2つのコイル(インダクタ)がドーナツ状の鉄芯を巻いている構造。入力電流を一度磁気に変換して鉄芯に流し、出力側のコイルで再び電流に戻して変圧する。コイルの巻き数で電力量が変化する。余分な電力はレギュレーターで廃熱として捨てる。耐久性に優れているが、大型で質量が重く、機器未使用でも待機電力を多く消費する。ノイズ対策から音響や医療機器などに使われている。
スイッチング式
半導体式スイッチングレギュレーターで、電流のオンオフを高速で繰り返すことで変圧する。電流オンの比率で電力量が変化する。小型化や軽量化が容易で、出力を柔軟に変更でき待機電力を抑えることが可能。トランス式に比べ電波障害を起こしやすいのが短所。かつては高価であったが、パワー半導体技術の進歩により劇的な低コスト化と高効率化が実現され、現在では汎用変圧器の主流である。
プラグの径が合って差し込めるからといって他機種のACアダプタを流用してはいけない。電流や電圧が機器で定められた値と違うばかりか、極性のプラス・マイナスが逆の可能性があるため。
トランス式変圧器が主流だった時代のなごりで、「使っていないACアダプターはコンセントから外す(延長コードのスイッチを切る)」ことが習慣になっている人もいる。
変圧器とプラグが一体の機種は壁側のコネクタに直接挿し込むと、変圧器本体で他のコネクタが塞がりがち。それを解消するために、家電メーカーや雑貨屋では、長さ20cm以下の短いものや、ACアダプターの挿せるスペースを確保した延長コードを発売している。
コンセントにACアダプターを挿してから送電が始まるまで若干のタイムラグがあるのは、コンデンサの充電を行なっているから。