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空中給油の編集履歴

2023-07-03 06:03:56 バージョン

空中給油

くうちゅうきゅうゆ

空中給油とは、飛行中の航空機へ燃料の給油を行うことである。

攻撃機が給油機を離れるときはいつも、悲運がまさにふりかかろうとしているような心地になる。まるで給油機が、秩序と混沌、平和と戦争をつなぐ最後の細い糸であるかのように思える。訓練ミッションの際にもときどき感じるのだが、自分の乗っている飛行機が、給油機とともに旋回しないとき、これから戦いにおもむくという実感がこみあげる・・・・・・

デイル・ブラウン「レッドテイル・ホークを奪還せよ(下)」P18より


概要

飛行中の航空機に直接、燃料を給油すること。戦闘機などの航続距離を延長する手段として重要である。艦艇爆撃機などの護衛を行う戦闘機や、長時間滞空して哨戒任務に当たる哨戒機、長距離飛行する偵察機、大量の爆装を積む為に燃料を減らして離陸する戦闘攻撃機、陸上機に比べて航続距離が短い艦載機、垂直離陸を行えるが燃費が悪いS/VTOL機には無くてはならない。


空中給油という概念自体は航空機が登場して間もなくから存在していたが、当初は空中で伸ばされたホースを手でキャッチし給油口に入れるという、あまりにも原始的かつ危険な手法であったため滞空時間の世界記録樹立などに使用されただけであった。実用的になったのは後述する専用の方式が開発された1950年代からである。


ただしそんな現在でも、たたでさえ不安定な空中で母機が生み出す後方乱気流(下手をすると機体が一瞬でひっくり返ってしまうほどの威力がある)と戦いながら連結するという危険を伴う行為であり、相当の技量が求められる事に変わりはない。


これまた50年代からのジェット化に伴い敵機の進行は高速化、地上基地からの迎撃ではとても間に合わなくなった一方で、同じくジェット化による燃費悪化で滞空時間は大幅に短くなった。

ジェット機による効果的な迎撃のためには空中給油を挟んでの空中待機が必須となっており、空中給油は長駆進出作戦だけでなく、防空任務にも必須の支援設備となった。専守防衛を旨とする航空自衛隊も空中給油機のヘビーユーザーである。


方式

現在では大きく分けて3つの方式がある。

フライングブーム方式

F-22

給油機から燃料を供給するためのブーム(竿)を伸ばし、被給油側の機体の給油口に差し込んで給油する方式。(こら、変な想像をするなよ!)主に空軍が多用する方式であり、給油機に搭乗したオペレーターが給油ブームを操作することで位置合わせを行う。このため1機ずつしか給油ができないが、反面大量の燃料を供給できるため爆撃機などの「動きは鈍いが大量の燃料を必要とする」機体に有利な給油方式である。重量とサイズからある程度大きい機にしかブームを積むことは出来ず、着艦時にはブームが邪魔になる為、艦載機への搭載は難しい。


プローブアンドドローグ方式

空中給油ミッション

先端に漏斗状のパーツの付いた給油用ホースを給油機に取り付け、被給油側の機体がそこに空中給油専用の給油プローブを接続する方式。位置合わせは被給油側の機体操作で行われる。風の影響を受けやすいのが難点で、被給油側のパイロットにも技量が要求される。また、一回あたりに給油可能な量も少なめ。但し「ホースを給油機からぶら下げておくだけ」なので、ホースの数さえ増やせば一度に複数の機体に給油できる。また、フライングブーム方式ではローターが邪魔で給油できないヘリコプターへの給油も可能。給油装置自体が小型の為、戦闘機などのパイロンに給油用のバディポッド(後述)を懸架することで簡易的な空中給油機とする事も出来る。戦闘機などの小型でよく動き、それほど燃料を必要としない機体に有利な方式で、米海軍をはじめ他の国々でも採用されている。


HIFR(Helicopter In Flight Refuling)

洋上の艦艇から飛行中のヘリコプターに給油を行うための方法。「飛行中のヘリに給油する」という意味で、立派な空中給油の手段の一つである。悪天候時や艦艇側に十分な着艦スペースが無いような場合に使用され、艦艇と並行して飛行するヘリコプターが給油ホースを受け取るためのフックを降ろし、そこに給油用ホースを引っ掛けてヘリに引き上げ、給油口に空中で接続する。「とりあえず給油用ホースさえあれば実施できる」という利点があり、哨戒ヘリには必須のテクニックである。各国の海軍組織でも「必修科目」の一つになっている。


余談

  • 「バディポッド」という装備を使えば、スマホ同士でmicroUSBを介して給電するケーブルの如く、戦闘機同士での空中給油もできる(プローブアンドドローグ方式のみ)。制約上大型の機体を運用できない海軍で多く使われている方式で、大型の給油母機では危険を伴う敵地上空での給油はもちろん、着艦に手間取ったり空母に何らかのトラブルが起きて着艦したくてもできない内に燃料がなくなった機体へ給油ができる(着艦できない=何億もする機体を海に捨てる事態を避けられる)という意味で重要な存在である。口移しとか言うな。
  • フライングブーム方式の機体であってもプローブが付いたドロップタンクやコンフォーマルフェールタンク、ブーム先端へのアタッチメントなどによりプローブアンドドローグ方式が前提の機体にも給油できるが、逆は基本的に不可能である。
  • ソ連の爆撃機Tu-16の空中給油機型は、給油側と受油側の翼端同士をホースで結合させ、給油を行うユニークな給油方式を採用していた。
  • ロシア(旧ソ連)のPAZ空中給油ポッドは、戦闘機などに搭載するバディポッドとする以外に輸送機等を空中給油機に改造する際にも使用されている。
  • フォークランド紛争イギリス軍は、2機のバルカン爆撃機をアセンション島からフォークランド諸島へ到達させる為に、11機のヴィクター空中給油機を使用し、バルカンへの給油のためにヴィクター同士の給油もリレーのように行い、当時史上最長となる戦略爆撃を実施した。(ブラック・バック作戦)
  • 偵察機SR-71は飛行して機体が膨張して温まるまではパネルの隙間から燃料が駄々漏れの為、離陸後に給油を必要としていた。
  • 近年の殆どの戦闘機(マルチロール機)は最大積載重量>最大離陸重量の為、フル爆装で離陸する際には搭載燃料を減らして離陸後に空中給油をする。
  • 過去のノーズアートには、フライングブーム受油口がグラビアモデル(雑誌の模写)の股間部となるように描かれた、下品なものもある。現在では低視認性が重視されて塗装が地味になり、また女性搭乗員が登場したこともあって、そういった戦争への皮肉を込めた「落書き」は鳴りを潜めてしまった。
  • F-15用のコンフォーマルフェールタンクにはフライングブーム方式のバディポットも計画されていた。

関連イラスト

赤めく空夜間の空中給油


関連タグ

飛行機 航空機 軍用機 戦闘機 空中給油機タンカー

給油 ガソリンスタンド

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