概要
『宇宙戦艦ヤマト』のリメイク作品『宇宙戦艦ヤマト2199』にてリメイク版新規設定として登場した星間戦争。
地球(国連)と、開拓された火星との間で勃発した地球人類同士の戦争である。2164年〜(不明)年の「第一次内惑星戦争」と2179年頃〜2183年の「第二次内惑星戦争」の2回にわたって繰り広げられた。
旧作における「遊星爆弾落とされ始めてから地下都市作ってる時間的余裕なんてあったの?」という疑問に対して、「ガミラス戦争以前に地球人同士の戦争があって、その時に下地ができてた」と理屈付けする形で設定が誕生した。
村雨型宇宙巡洋艦の「内惑星戦争時に大量建造された」という設定や山本玲のマーズノイドという設定などにも活かされている。とはいえ『2199』時点ではまだストーリーにそこまで重大な影響を与えるものではなかった。しかし続編の『ヤマトという時代』にて掘り下げが行われ、より劇中の歴史において重要なファクターであったことが語られることになる。
歴史
前史
西暦2042年、人類は火星へと到達。そこから69年後の2111年には入植が開始された。
そこから半世紀、移住者とその子孫は火星を根気よく開拓していき、テラフォーミングによって海も誕生。着実に有人惑星へと発展していった。
地球も地球で平和な時を営み続けており、2145年には第二次世界大戦以降世界規模の戦争を起こさなかったことを記念し、第二次世界大戦終結二百周年式典が催された。
しかし、その平和は宇宙という新世界では長くは続かなかった。
戦争勃発
火星の住民は自治政府を設立。2164年に自治権を求めて地球への独立戦争を仕掛けた(それ以前の地球と火星がどのような関係性にあったかは不明)。
この時火星自治政府は、既存のものよりも遥かに進んだ技術によって作られた「宇宙戦闘艦」を配備し、宇宙海軍を創設。これが地球文明圏における最初の「宇宙海軍」だった(火星艦をデザインした玉盛順一朗氏のラフ案では、「海軍」の由来は「海」への一種の憧れがあったからとも言われている)。
国連側も宇宙戦闘艦の開発・配備を進め、4年後の2168年に宇宙海軍を設立。2170年前後には金剛型宇宙戦艦や村雨型宇宙巡洋艦が就役した。
さらに、万一に備えて地球上には避難用の地下都市建設が進められた。
この戦争は一度は終結したものの、山本玲が生まれた頃(2179年頃)に再び勃発。最終的には2183年に国連側の勝利にて終結した。
裏事情
この戦争において火星が投入した宇宙艦は、地球の技術レベルを遥かに上回っていた(玉盛氏のラフ案だと、一例として水平状態のまま浮遊するように離床する方式は火星艦が最初に実現したとされている)。
何故このような艦が建造できたかというと、それはとある宇宙船が関係しているとされる。
ある時、火星に正体不明の宇宙船が漂着しているのが発見された。それは当時の地球のものとは異なっており、異星文明の船であると思われた。
火星政府はこの船の残骸を回収し、異星文明の技術を解析・吸収。その技術を用いて建造されたのが、第一次内惑星戦争時に登場した火星艦だった(因みに『ヤマトという時代』劇中だとあくまで「説」止まりだが、同作の劇場パンフレットでは明言する書かれ方をしている)。
なお、この船に関する情報は証拠の類が全て抹消されており(抹消したのが火星側なのか戦後の国連側なのかは不明)、2205年時点では詳細を確認することは不可能となっている。劇中でも出てくるのは数秒の映像程度。
この船のことは地球側も少なくとも存在自体は把握しており、「火星は秘密裏に異星文明の残骸を入手した」と囁かれた。
だが、火星が異星文明の技術を入手したこと以上に、異星文明の船の存在自体が地球側の首脳陣にとっては問題だった模様。なぜならその船は明らかに戦闘用のものであり、それは「地球より進んだ文明を持ち、なおかつ争いという概念を知っている異星人が宇宙のどこかに実在する」ということに他ならなかったからである。
戦後
第二次内惑星戦争終結後、火星は全居住者が地球へと強制移住させられ、火星の独立という夢は潰えることとなる。
それから数年後の2191年、ガミラス帝国の侵攻により、地球首脳部が抱いていた懸念は現実となった。
皮肉にも内惑星戦争で軍事面の技術発達が促進されていたことで、ほぼ負け通しではあったものの、終盤の第二次火星沖海戦では一矢報いることに成功。さらに、イスカンダルから供与された波動エンジン技術によって一気にブレイクスルーを起こし、宇宙戦艦ヤマトという恒星間航行用宇宙戦艦を完成させたのだった。
内惑星戦争では活用されなかった(と思われる)地下都市も、遊星爆弾によって地表が壊滅した際の人類の逃げ場となり、絶滅までの時間稼ぎに大いに役立つこととなった。
このガミラス戦争の存在から、後年では「内惑星戦争は(将来的に起こり得る異星人との戦争の)予行演習だった」と評する人もいる。
関連兵器
- 火星艦(正式名不明)
第一次内惑星戦争時に火星側が投入した兵器。当時の地球の宇宙船より遥かに進んだ技術を有していた。その設計・運用コンセプトは後の地球軍艦のデファクトスタンダードにもなった(要は軍艦史でいうところの戦艦ドレッドノートのようなもの)。
劇中での数カットと玉盛氏によるラフ案(ラフ稿)しか資料が無いので、詳細なスペックは不明。ラフ稿での情報によると、全長は120mくらい。上部甲板に主砲塔を2基備えている(それ以外にも武装らしきディテールは見られるが詳細は不明)。武装は上部に集中しており、下部は堅固な装甲に守られ、「盾と矛」を体現している(この設計思想は後のヤマトでも採用されている)。
第一次内惑星戦争時に建造された国連の宇宙戦闘艦。
金剛型は国連が標準艦として策定した巡洋戦艦「AU艦」をベースに日本仕様として建造された。
因みに磯風型突撃宇宙駆逐艦に関しては「内惑星戦争時に活躍した宙雷艇の設計思想を受け継いで開発された」という設定がある。
『宇宙戦艦ヤマト2202』に登場する地球連邦防衛軍の試作戦闘機。内惑星戦争時に活躍した火星戦闘機の設計思想を盛り込んでいるという裏設定がある。
- 異星文明の宇宙船
火星に漂着したとされる宇宙船の残骸。火星艦はこの船から入手した技術を盛り込んで開発されたとされ、ある意味この戦争の元凶とも言える。その正体はボラー連邦の戦艦A型。
証拠の類が残らず末梢されたため、いつ・火星のどこに漂着したのかは不明。そもそもどのような経緯で太陽系までやって来たのかも謎のままである。
マーズノイド
「火星生まれの地球人」の意。火星に入植しただけで人種的には地球人と何ら変わらないはずなのだが、紅眼が身体的特徴として現れる。また、作中で描かれている限り(といってもまだ山本兄妹しか出てないが)においては銀髪という共通点もある(兄の方は色が濃く、どちらかというとベージュ色。あと最初の第2話でのみ完全に茶髪茶目で描かれていた)。
特に赤い瞳に関してはマーズノイドの特徴として広く知られているようで古代進は山本玲の瞳の色を見て彼女がマーズノイドであることを察していた。
アニメ本編ではこれといってマーズノイドとの軋轢は描かれていないが、むらかわみちお氏による漫画版ではマーズノイドへの差別がかつて地球で横行していたことが描かれており、東まゆみ氏による『緋眼のエース』でもマーズノイドの瞳の色を指して「忌まわしい血の紅い色」と蔑む描写がある。
ここからどのように融和していったかは描写が無いため不明。まあ少なくともガミラスというもっと強大でしかも同祖ですらない敵が殲滅上等で攻めてきた時点でマーズノイドに悪感情をぶつける余裕なんてなくなりそうなのはなんとなく想像に難くないが(『2202』小説版だと実際に反ガミラス思想の人物がマーズノイドを地球人(=同胞)と認定している)。
余談
考察や二次創作を楽しむファンがいるのはヤマトシリーズでも同様だが、リメイク版シリーズで盛んだったのはどちらかというとガミラス戦争中の第二次火星沖海戦であり、内惑星戦争は(情報が少なすぎて)そこまで注目されていなかった。しかし『ヤマトという時代』で内惑星戦争の情報が複数追加(火星艦のデザイン登場、ボラー連邦艦の存在など)されたことで、二次創作が盛り上がりを見せている(同作で第二次火星沖海戦が数分とはいえ公式で描かれたため、その代替という側面もあると思われる)。
しかも第二次火星沖海戦と違って特定の戦闘ではなく数年単位の戦争なので、話の自由度が高く、サイドストーリー的な感じで様々な想像を膨らませるファンも多い。
内惑星戦争に異星人が関わっていたという物語の初出は航空模型雑誌『スケールアヴィエーション』で連載されていた小林誠氏の「飛ぶ理由」(2017年5月号掲載の第33回「火星独立軍最終戦闘機コスモワン」)。因みに小林氏本人が当該ページをSNS上で何度かアップしているので検索すれば見られる。
ただし、飛ぶ理由自体は『宇宙戦艦ヤマト』とは直接関係の無い作品(『2202』がやってた時期はその内容とリンクさせたものが多かったが)で、内容も『ヤマトという時代』で描かれたものとは多少異なる。どちらかといえば元ネタと言った方が近い。
関連動画
『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』冒頭22分
※3:00~5:00付近が内惑星戦争の内容
関連タグ
機動戦士ガンダム:地球VS宇宙に移民した元地球人の国という構図や、物量VS技術といった点など、一年戦争と共通点が多い。