概要
宇宙戦艦ヤマトシリーズの名戦闘機であるコスモタイガーⅡだが、「なんでⅠが無いのにⅡなのか？」というのは当時からファンの間でよく話のタネとなっていた。
後年の作品ではこの問いに対しての回答が試みられ、シリーズごとに全く異なる解釈のコスモタイガーⅠが生み出されることになった。
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「コスモタイガーⅠ」という名称も実機も出てくるわけではないが、白色彗星帝国編においてヤマトが発進して地球大気圏を離脱した直後の古代進のセリフに「旧型のコスモタイガーは全部降ろしてきてしまった」というセリフがあり、どうやら劇中登場はなかったもののイスカンダルへの航海でヤマトに搭載されていたことが窺える。
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ずばり「コスモタイガーⅠ」という名前の機体が登場するわけではないが、2作目『さらば宇宙戦艦ヤマト』の公式設定資料集にあるコスモタイガーⅡの解説文に「コスモゼロ（コスモタイガー）」と記述されており、コスモゼロこそが初代コスモタイガーであるとされた。
宇宙戦艦ヤマト2202
コスモタイガーⅠが公式により明確に描かれたシリーズ最初の作品。
本作ではコスモタイガーⅡの先代機ではなく、「波動砲艦隊構想」と連動した次期主力艦載戦術戦闘攻撃機計画「CT計画」に基づいて計画・開発された機体とされている。コスモタイガーⅡとはこの「CT計画」において競合関係であり、その機体サイズや過激な操縦特性によりコンペに敗北、制式採用および量産化をコスモタイガーⅡへ譲っている。しかしながら少数のみ量産はされており、うち1機が山本玲の乗機となったほか改良型であるコスモタイガーⅠBが山南艦隊空母へ複数配備されている。
なお制式採用されていないため型式名はなく、名称は「試製艦載戦術戦闘機」となっている。
デザイン
デザイン担当は同作の副監督でもある小林誠。
本作における設定・経緯から、過去作に登場のコスモタイガーⅡとは全く異なる鋭角的かつ華奢なデザインラインとなっている。
カラーリングはダークグレーに黒のラインをベースとし、コスモタイガーⅠはオレンジのポイントカラーを、コスモタイガーⅠBはブルーのポイントカラーをコックピット基部へそれぞれ塗装されている。
鋭角的で扁平な機体の前部にはグラスカプセル状のキャノピーが位置しており、これを囲むようにカナード翼とガードが装備されている。機体下部には大型の垂直翼が装備され、機体本体から前進型の上部翼が、垂直翼の中腹から後退型の下部翼が伸びる複葉機の構造をとる。この垂直翼をはじめ、鋭角的かつ華奢なデザインラインや各種武装などその特徴は『復活篇』にて同氏がデザインしたコスモパルサーに近いものとなっている。機体後部の双発メインノズル上部には下部翼と相似形の垂直尾翼がV字型に配置されている。
前記のように同機のコスモタイガーⅡとの共通点は全くないほか、シリーズ内の他機体との共通点として挙げられるポイントもメインノズル形状のコスモゼロとの類似や同無人型「ブラックバード」との一部装備の共通程度であり、シリーズ全体から見ても特異なデザインとなっている。
小林氏は側面からのシルエットは拳銃をイメージし、胴体部分のイメージはオリジナルシリーズ1作目に登場した「シームレス戦闘機」をベースにしていることを明かしている。
なお、作品とアンダーアーマーとのタイアップ企画に連動し、下部翼には同ロゴマークがペイントされている。
性能
- 全長：26.3 m
- 主機：軸流式コスモエンジン×2機
- 武装：
・小型ミサイルポッド（24発内蔵）×24基
・大型ミサイルポッド（6発内蔵）×2基
・ビームカノン×2基
基本性能では競合機であるコスモタイガーⅡを上回るが、その過激な操縦特性から山本玲クラスのベテランでなければ乗りこなすことが困難である。
機体下部に固定式の垂直翼を装備する関係で着陸時はコックピットを除く機体全体を反転させるため、着陸脚は上面側に備わっている。なお脚の根元にはサーチライトを装備している。メインノズルは双発で、ノズルカバーが開いて逆噴射も可能。この逆噴射は大気圏内でホバリングできるほど強力。
- 武装
武装はすべて外付けのものであり固定武装は持たない。ビームカノンや各種ミサイルが上下主翼のハードポイントに搭載され、使用後は投棄される。一方、改良型のコスモタイガーⅠBは固定武装として、下部翼基部に機銃を2門搭載している。
ビームカノンはエネルギー流を発射する火器である。類似の大口径エネルギー火器はコスモゼロなどにもあるが、あちらが弾丸状のエネルギー弾を発射するのに対して、こちらは完全にビーム状のエネルギー流を撃ち出す。
ミサイルに関しては他のどの航宙機の追随も許さない搭載数を誇る。小型ミサイルは多弾頭式であり、24基のミサイルポッドへ各24発ずつ搭載しており総数は576発。大型ミサイルは下部翼の2基のミサイルポッドへ各6発搭載されており、こちらは主に対艦攻撃へ使用されている。
なお、小型ミサイルポッドはコスモパルサーのものと酷似しているもののルーツはより遡り、大型ミサイルを含むミサイル系のデザイン全般は「HYPERWEAPON2005」などに掲載された「スパンダウ2」（ヤマトシリーズとは無関係）からの流用である。
- 操縦系
コックピットは紡錘形のグラスカプセル状のキャノピー内部に座席と操縦機器とモニターが支柱によって浮いた状態になっている。
キャノピー自体が機体に対して回転するため、着陸反転時にパイロットが反転することはない。なおキャノピーの上下にハッチがあるため機体状態に合わせて上からも下からも乗降可能。
計器類はすべて大型の透明タブレットスクリーンへ一括表示される形式となっている。2枚あるように見えるタブレットスクリーンのうち前部の一枚はディスプレイではなく防弾ガラスである。操縦機器はトリガーボタンとセレクタースイッチを備えたスラストレバーを左右計2本と、その根元に10個のボタンで構成されるキーボードが備わっている。
- 格納方法
全体的なサイズの大きさに加え、尾翼以外への折り畳み機構の搭載もないため、艦載には容量の広い汎用格納庫、もしくは露天駐機を用いることとなる（ヤマトでは第三格納庫、アンドロメダ級空母型では格納庫上面）。
技術系統・開発経緯
既存の地球兵器とはあまりにも異なるデザインの理由付けとして、内惑星戦争時の火星自治政府軍機「コスモワン」をベースに開発された機体であることが設定されている。火星軍の戦闘機は火星の環境に最適化された設計をしていたため、地球の兵器とは大きく方向性の異なるものとなった。
また、小説版では機体の開発経緯について、軍の要求を満たす際のアプローチが影響したことが示されている。設計要件のひとつに「様々な状況に対応できること」(マルチロール化)というものがあり、コスモタイガーⅠはオプション兵装で対応しようとした結果、大量の武装を装備できるよう機体が大型化した。なおコスモタイガーⅡは派生型を考慮した形状に設計することでマルチロール化に対応した。
経歴
第2話でコスモタイガーⅡに乗った新人たちの訓練のため山本玲が登場。その後古代進から依頼を受け、月面に潜入する古代の100式空間偵察機を援護した。
第5話でアンドロメダ率いる演習艦隊を離脱し、追撃の無人型コスモファルコン部隊を撃破しヤマトへ合流する。第6話では第十一番惑星での救助活動の最中に敵を迎撃する作業にあたり、ククルカン級襲撃型駆逐艦に大ダメージを与えた。
以降の数話では救難作業などでの活躍が描かれるほか、第17話では改良型のコスモタイガーⅠBがアンタレスの甲板へ複数露天駐機されていることが確認できる。
最終決戦となる都市帝国戦でも出撃し、第25話でクラウス・キーマンと斉藤始によって起こされた滅びの方舟中枢の大爆発の衝撃波によって機体は破壊されるが、コックピットブロックが破壊を免れたことで山本は後に生還した。
余談
火星自治政府軍兵器を基にしていると先述したが、小林氏の独自設定では内惑星戦争も含めてさらに詳細が描かれている。
火星側の兵器は密かに火星に来訪していた異星人の技術協力を得て開発されたものとされ、（前提となる「宇宙戦艦」「宇宙戦闘機」の概念も地球文明圏においては火星側が最初に用いた）であり、その最終形が戦争末期に開発された「コスモワン」だったとされている。
ただしこの設定は模型雑誌スケールアビエーションにてかつて連載されていた小林氏の個人的なシリーズである『飛ぶ理由』で示されたものであり、公式設定であるかは不明。
このコスモワンについてはBD第二章限定版のスリーブに描かれているが、こちらはコスモタイガーⅠと酷似したデザインであり、『飛ぶ理由』掲載のコスモゼロのプラモデルを改造した作例とは外見が大きく異なる。
なお、火星側が異星技術を取り入れたという設定に関しては、映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』にてやや形を変えて公式化された。ただし、コスモワンまでは拾われていない。
オリジナルシリーズ（アクエリアス・アルゴリズム）
2019年から2020年まで公式ファンクラブ「ヤマトクルー」の会報誌で連載された『復活篇』の前日談『アクエリアス・アルゴリズム 宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部』の第3話において「コスモタイガー開発史」なるコラムが掲載され、コスモタイガーⅠの存在にも触れられている（後に書籍化された『宇宙戦艦ヤマト黎明篇 アクエリアス・アルゴリズム』でも巻末に掲載）。世界観的にはオリジナルシリーズのコスモタイガーⅠということになる。
100式探索艇と同時期に開発された機体で、ブラックタイガーのベースになった機体とされる。開発当初は軍の実情などと噛みあっていなかったためほとんど実戦投入されず、その後ヤマト搭載機として本機の設計を改良した機体「コスモタイガー改」が開発され、これが「ブラックタイガー」と名付けられた。しかし開発陣は急場の改造で生まれたブラックタイガー（コスモタイガー改）に満足しきれず、「コスモタイガー改の真なる完成形」を目指して研究を続け、その結果生み出されたのが傑作機コスモタイガーⅡであるとのこと。
デザインは本作でメカデザインを担当する西川伸司によるもの。ブラックタイガーと見た目はほぼ変わらないが、主翼端部やメインノズルがややコスモファルコンと類似している。
