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編集者:バーサル1990
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概要

完全平和主義とは、『新機動戦記ガンダムW』に登場した社会構想である。

亡国サンクキングダムが提唱したものであり、文字通り「完全な平和を実現させるためにあらゆる武力を放棄して対話で平和を作り出す」思想に基づく。同国と友好関係にあったかつてのコロニーの指導者ヒイロ・ユイが提唱した「宇宙の心宣言」が元になっている。

端的には平和を壊す要因となる戦争……つまり「争い」を無くすためにモビルスーツを含めた、あらゆる兵器を廃棄する形で世界中の武力を放棄させ、戦争に従事する者達に対して戦い以外の人生を歩ませて、誰もが幸福に生きられる社会を作るシステム。

それもあり、武力支配によって平和を築こうとする地球圏統一連合ロームフェラ財団にとっては、不俱戴天の仇そのものの思想である(ただし、連合の首脳部には組織の増長や腐敗を改善すべく、そうした思想を目指そうとしたものがいた)。

問題点

しかし、現実世界における一部の退役軍人が、PTSDなどの後遺症によって一般社会に適応できなかったり、暴力衝動に依存し愚連隊を結成するなどで民衆から疎まれたように、戦いを禁じられた兵士全員の人生を社会が保証するのは困難であり、作中で張五飛が語っていた「だから戦士はいらんのか? 戦争のためだけに生きた兵士は切り捨てるのか?」との詰問が完全平和の弊害を端的に表している。

ロームフェラ財団のように戦争で商売している武器商人や、彼らと共存共栄する軍需に関しても、平和産業に切り替えられればまだ幸運な方であり、兵器の需要が無くなった後に職を失い経済苦でまともに生活できなくなる者や、ホームレスに身を落とした末に自殺に走る者も少なからず現れるのは想像に難くない。

仮に軍需の全てを平和産業にシフトチェンジさせても、今度は平和産業間での共食いによる歪んだ自然淘汰が、人材面では兵役上がりのスキル無所持者による飽和状態に陥り、上記とは異なる方向で職にあぶれる者達が生まれるのも目に見えており、経済的観点では「健全な社会活動を維持できるのか?」の疑問が大いに残る。

更に悲しい事実だが、戦争によってテクノロジーが加速的に進化・後に平和的利用される事実や、平和になったために最低限の自衛の術すら失い、想定外の事態によって容易く滅ぶ実例もあり、見方によっては「争いの負の側面だけを責め立てている」との誤解をも生み兼ねない。

更に『平和のための争いの否定』が独り歩きし、俄インテリ層に担ぎ上げられれば、最悪『争いの否定』だけがクローズアップされ「フィクションにまで及ぶ戦争の否定(=エンターテイメント上の言論統制)」「『市場上の競争原理』の否定」などの歪んだポリティカル・コレクトネスが発生、社会システムの根幹の破綻にも陥り兼ねない事態すらありうる。

また、戦争の凄惨さを知るが故に「2度と同じ過ちを繰り返してはならない」との自制心が生じるが、その経験がないために逆に際限なく残酷な行為を選んでしまうケースもあり、例え完全平和主義であってもトレーズ・クシュリナーダが唱えた危惧が消える訳ではない。

最大の問題点として、平和を維持する為に誰かが争いの火種を取り締まる存在が必要がある為、推進派はシステムの外で大なり小なり武力の保持が絶対条件になってくる。

その点については推進派も理解しており、地球圏統一国家の発足後に大統領直属の治安維持組織『プリベンター』がそれを担う展開となった。

また、平和を目指している者全てが健全とは限らず、TV本編の後日談にあたる『新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST』で登場したP3は『完全平和』を口実に「人々から兵器を取り上げて、兵器を独占した自分達が世界を支配する」野望を目論んだ過激派団体であり、結局のところ人間こそが兵器以上に争いを生み出す要因と酷評できうる。

実際にドロシー・カタロニアが戦争を憎みながらも「人類から戦争をなくすためには兵器を取り上げるだけでなく、人類の心そのものを変革させる必要もある」とする持論で敢えて戦争に加担し、サンクキングダムの意志を継いだリリーナ・ピースクラフト「平和は誰かから与えられるものではなく、自分自身の力で得るもの」と民衆に訴える等、完全平和を実現できるかどうかは人間次第であろう。

関連タグ

新機動戦記ガンダムW サンクキングダム 指導者ヒイロ・ユイ

ガンダムシリーズ

ザイード・ウィナー:完全平和主義の賛同者たる人物だったが、徹底した平和主義を貫いた為に軍備保有を願った身勝手な人々に糾弾されて殺された。

ガンダムルシフェル:外伝作品『ティエルの衝動』の登場するMS。これに搭載されたゼロシステムがパイロットであるカール・ノンブルーの平和を愛する心を捻じ曲げてしまい「戦争を起こす生物(人類)の完全抹殺」との過激な思想へと変貌させた。

デビルガンダム:上記のルシフェルのように『人類が地球を汚す』との理由で『人類の抹殺』を目論んだガンダムで、こっちの思想の方が完全平和に近いかもしれないが、ある意味間違っているかもしれない。尚、これの後継機はそれを一歩進めた『人類洗脳による平和』を目論んだ。

イオリア・シュヘンベルグ:完全平和主義に近い思想を提唱したガンダム作品のキャラクター。

デスティニー・プラン:ある意味正反対であり、ある意味似たような思想。

クワイエット・ゼロ機動戦士ガンダム水星の魔女に登場した機構で、パーメット粒子に依存する兵器ならば一律に無能化が可能と、ある意味この思想の実現の一助になりうる存在。

それ以外

スーパーロボット大戦R:これのプロローグが『地球圏統一国家が完全平和主義によって軍備を廃止した為に、その隙を付いた侵略者の攻撃で酷い目に会った人々がリリーナ達を糾弾して見限り、敵勢力がそれを良い事に完全平和主義を根絶、リリーナ達地球圏統一国家を抹殺して独裁国家を建国し再軍備や圧政を行った』との経緯があり、ある意味では先述の完全平和の弊害が見え隠れしている。

超高度文明人:ある意味『完全平和主義』の体現者たる存在の一端。しかし、彼らはそれが過ぎた結果「文明を有する種族に相応しくない」と判断した存在に対し、一方的に殲滅する狂気も秘めている。

イデ:こちらも『完全平和主義』の体現者たる存在。ただし、こちらも「接した人類が『イデの求める思想を成就できない』」と判断すると「次世代に託す」意味合いで、銀河系そのものをリセットする狂気を持っている。

ビーストメガトロン:こちらも「争いのない平和を望む」と豪語するが、実際は自然を破壊して生命体から自由意志を奪うディストピアである。

バルタン星人:ある作品では「全生命体の意思を1つにした上で支配する」ため、上述のメガトロンのように宇宙平和の名目を掲げて支配を目論んだ。

編集者:バーサル1990
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