概要
1973年に放送された『ウルトラマンタロウ』のメディアミックスの一環として漫画家の石川賢が週刊少年サンデーにて連載した。1973年17号から34号まで連載の全4回。
内容は石川賢とダイナミックプロが得意とするバイオレンス色の強いハードSFであり、テレビ本編とは別物。
早い話が石川賢がゲッターロボやデビルマンのノリで書いたウルトラマンタロウである。(なおゲッターロボのスタートはタロウの1年後)
その反面「ウルトラマンが地球を守る理由」について触れるなど、平成ウルトラマン以降の作品群に通じるものもあり、本筋はしっかりウルトラマンしている。
2016年に同じく石川氏が小学一年生で連載していた漫画版タロウを同時収録した完全版が発売された。
こちらは対象年齢を意識しテレビ本編の怪獣やウルトラ兄弟が登場するなど比較的原作に近いが、それでも怪獣や宇宙人を纏めて串刺しにしたりミンチに変えるなど情け容赦ない倒し方をする。
TV版との大きな違い
- 防衛チーム・ZATが登場しない
物語はあくまで光太郎と健一が中心となり、2人が奇形獣の引き起こす事件や陰謀に巻き込まれてゆく展開となる。
- ウルトラ兄弟の扱い
TV版では定期的に救援に駆け付けてくれていたが、本作では1話で怪しいコート男に変装したエースとセブンを除いて登場しない。
しかもこの2人、次の任務があると言ってタロウと会うことなく去ってしまう。
- ウルトラの母の描写
TV版では「ウルトラの母は太陽のように」なんて言われていたが、こちらは本当に太陽そのもの(イメージ映像)。まぁ神秘的ではある。
- ウルトラマンの顔はマスク
事実上の最終回である「小さな独裁者」にて、暴徒と化した子供たちに対して攻撃できないタロウの顔が割れたことで判明。
実は我々のよく知っているウルトラマンの顔はマスクで、その下に人間の顔があり、そこから発せられる光によって人類が進化したということが明かされる。
「ゲッター線のプロトタイプでは?」だの「連載が続いたらそのうちタロウがとんでもない進化を遂げてたんじゃないか?」などと言われる。
登場人物
名字の読みは「ひがし」ではなく「あずま」。天涯孤独なキックボクサーである(TV版ではボクサー)。
犬の奇形獣出現時に鉄骨の下敷きになったが、ウルトラの母に助けられ、自分が(知らない間に)地球7億の若者の中から選ばれ、(知らない間に)ウルトラの力を授けられた「ウルトラ六番目の息子」であることを知らされる。
力が欲しいと願う時、ウルトラバッジを使わずにウルトラマンタロウに変身する。
- ウルトラマンタロウ
光太郎が変身する「超人(ウルトラマンと読む)」。デザインはTV版と同じだが瞳があり、普通にしゃべる。
ストリウム光線(構え方はネオに近い)、「正義に燃える怒りの矢」ことウルトラランス、エメリウム光線を使用。特にエメリウム光線の出し方はまんまゲッタービーム(頭)と同じである。
- 白鳥健一
原作よりも幼くなって登場する。描かれ方は兜シローと同じ。
- 仁義くん
健一のクラスのガキ大将。その名の通り義に厚い漢。
- 白鳥サオリ
健一の姉だが空気。
- 白鳥潔
健一の父。タンカーの船長ではなさそう。
- ウルトラの母
ウルトラマンタロウの実の母で、光太郎にウルトラの命を授け、いろいろと教えてくれる。
前述の通りその姿はでっかい太陽。
- ウルトラマンエース、ウルトラセブン
タロウの誕生を見守っていた「ウルトラの息子」たち。光太郎と同じ経緯でウルトラマンになったらしいが、格好が犯人の犯沢さんレベルで怪しい。
第1話以降、全く登場しない。
そんなものはいません。
奇形獣
今作のエネミー。『A』のヤプールに続く縦軸の敵キャラ。
ウルトラの母曰く「貧困・疑心・欲望といった人間精神の産物」であり、「宇宙の戦士」で「地球の未来の生物」とも評されている。
なんだかよくわからないと思う人もいるだろうが、とりあえず邪悪なバケモノという認識で間違いない(本家ウルトラシリーズ風に言えばマイナスエネルギーから生まれる怪獣やスペースビーストみたいなもの)。
本編でタロウが戦う個体以外にもどう見てもデーモン族としか思えない個体が多数描写され、タロウが戦わないと未来の地球はこうした怪物たちが跋扈する地獄のような世界になるのだとか。
そもそも存在の成り立ちが邪悪なので、ウルトラマンの顔から出る光の力を嫌うらしい。
野犬奇形獣 シロ
第1話「タロウ誕生」に登場。アストロモンスではない。
健一の同級生・山田タツオ少年が拾ってきた成長速度が異様に早い犬。
性質はとても凶暴で、野犬や民間人を食い殺し成長、やがてケロイド状の皮膚を持つ巨大怪獣と化した。
テレパシーや「タロウ絶命」の血文字で光太郎を挑発、さらに光太郎を工事現場に誘き出し鉄骨を落とす狡猾さを持ち、完全に化けの皮が剥がれた後は体から酸っぽい特性を持った原生動物のようなもの(※描写があいまいなので、こうとしか言いようがない)を出す。
タロウに変身した光太郎を自分と同じ怪物になったと嘲笑するが、北欧神話のフェンリルよろしく顎を引き裂かれてお陀仏に。
アースメシア ゾブァー
第2話「失われた町」に登場。
名称は原文ママ。むき出しの脳から人間の上半身が生えている。
東京の地下に神経を張り巡らせ、やがては地球との同化を目論む。
思想はエコテロリスト的であり、街で液状化現象や人を飲み込む大口を発生させたり、マンホールの蓋を飛ばしてサラリーマンを大切断したりして石川節を読者に叩き込んだ。
最後は巨大な怪獣としての姿を現すが、タロウに敗れる。死ぬ間際にタロウに自分を倒したことを後悔するという旨の発言を残すが、それでもタロウは人類の可能性を信じて戦うことを誓うのだった。
ロボット鬼獣 ジンマ
第3話「鬼がくる…」に登場。
光太郎の友人が住職を務める奈良の寺院の近くにある古墳で出土した、4本腕の鬼の像。
その正体は宇宙人のガードロボットで、古墳荒らしが宇宙人の住処を偶然発見したことから起動し、槍と口から吐く無数の針で古墳荒らし及び地元の猟師数名を惨殺した。
タロウにいつもの残虐ファイトで破壊される。
鬼宇宙人 エンマ
第3話「鬼がくる…」に登場。
奇形獣ではない。その正体はゲッター1みたいな防護服で体を覆った宇宙人であり、防護服の下の姿は体が腐りかけた鬼そのもの。
15万光年前(光年だと距離の単位である)に母星が死滅したため、地球を侵略しに来たが、地球の病原菌に感染して重い病を負ってしまった。
地球侵略のために度々人々の前に姿を現していた彼らの姿が、所謂「鬼伝説」の起源と目される。
最後は光太郎に殴り殺された。
小さな独裁者 ミュータント
最終話「小さな独裁者」に登場。
肥大化した頭脳とM字の眉毛を持つ赤子。下水道から現れ、超能力によって健一達を洗脳し、各地で暴動や略奪を行わせ、「子供の世界」を築こうとした。
流石の光太郎も子供を盾にされてしまったために手を出せなかったが、子供にジャックされた戦車から放たれた砲弾の直撃で割れたタロウのマスクから「尊いウルトラの光」が溢れて洗脳が解除される。
最後は醜い怪獣としての姿を表すが、まだ赤子の身で力を使いすぎたために肉体が限界を迎え、ストリウム光線で頭を吹き飛ばされあっさり荼毘に付した。