データ
概要
母星であるスペル星がスペリウム爆弾実験の失敗により放射能で汚染され自身も被爆したため、自分たちの血液の代わりとして地球人の血液を奪っていた。目からビームを放つ能力を持つ。
複数体が百窓のアジトに潜伏しており、血液を結晶化させられるスペリウム製の腕時計を使って女性の血液を採血していた。血を抜き取られた女性は白血病に似た症状を起こした状態で死亡してしまう。
星人のうちの一体は佐竹三郎を名乗り、アンヌ隊員の高校時代の友人である山辺早苗(演:桜井浩子)に近付き、彼女に時計をプレゼントする。しかし、彼の弟である伸一少年が腕時計を羨ましがって1日中付けていた事から子供の血液のほうが純度が高いことを発見し、ターゲットを子供に変更、『ロケットの絵を描いて腕時計を貰おう』などと言うキャンペーンで吸血腕時計を子供たちにばら撒き、仲間を大量に地球に呼び込もうと企む(伸一は幸いにも脳貧血で倒れる程度で済んだ)。
腕時計にメーカーが記載されておらず、アンヌの問いにもはぐらかした様子を見せた事から計画がバレる。
アジトの近くにやってきた子供達を送り返すためにウルトラ警備隊が出動したところ、佐竹が巨大化、続けて現れた円盤とのコンビネーションでウルトラホーク1号の追跡を撒く。
その後、奥多摩の氷川貯水池にやって来たソガ隊員のエレクトロHガンの狙撃を受け、伸一少年を奪還されて巨大化。円盤を召喚してウルトラホーク3号を撃ち落とすが、乗っていたダンが変身したウルトラセブンと夕焼けの中交戦する。円盤は回転させて発生させるバリアと発光でセブンを苦しめたが、ウルトラスパイラルビーム(実はこの回が初使用である)でバリアを解除されてウルトラホーク1号が撃墜。残る星人も逃走しようとした隙を狙ったアイスラッガーで唐竹割にされた。
真実を知った早苗は落胆するが、いつか異星人と人間が本当に心通わせられる日を夢見てダンたちと共に沈みゆく夕日を見つめるのだった(なお、このときに初めてダンの出自が明かされている)。
なお、名前の由来は「昴」。
容姿
能面のようなのっぺりとした顔と全身真っ白の身体に火傷の痕を思わせる黒いシミが混在する身体が特徴。
前述の放射能汚染と相まって危うい設定と言える。
シナリオ上では「かぶとむしのような形のスペル星人が洋館を破壊し、パトカーを角から放つ光線でとかしてしまう」という記述がある。しかし、撮影段階で実相寺監督が「白い服にケロイドのような模様を付けてくれ」と変更を要求したとされている。
もし脚本通りの昆虫型の形状であれば、そして種別も『吸血宇宙人』のままであればと思うとやるせなくなってくる。
デザインを担当した成田亨氏は、自身の怪獣デザインの三原則の一つ「身体が破壊されたような気味の悪い怪獣は作らない」に反する実相寺による変更案には忸怩たる思いがあったようで、画集にデザイン画は掲載せず、自著に高山良策氏に前述の実相寺監督の要求通りの簡易な依頼をして造形してもらったと記述している。
このことから明確なデザイン画は存在しないと思われていたが、2014年に開催された『成田亨 美術/特撮/怪獣』展において、図録でもある『成田亨作品集』には掲載されていないが、会場の一角にシンプルなデザイン画が展示された。
黒歴史?
事情により第12話が欠番となったためスペル星人もお蔵入りしている……のだが、現在ではインターネットが普及しているためスペル星人と検索するだけで情報が結構出てくる。そのため意外と認知度は高かったりする。
スペル星荒廃の原因になったスペリウム爆弾は『セブン』第38話で「新型スぺリウム爆弾」として再登場しており、バンダ星人に対するブービートラップとしてウルトラ警備隊が使用している。
こちらは特に封印作品にはなっていない。
ちなみに第38話の脚本も本話と同じ佐々木守氏。
お蔵入りになった後、スペル星人のスーツは茶色にリペイントされるなどの改造を施され、アトラク専用の怪獣に生まれ変わったと噂されている。
この新怪獣の名前は「ドジンゴ」だとする説もあるが、確たる証拠はなく実態は不明瞭(そんなもう一度地雷を踏みに行くような名前にしなくても……)。
このドジンゴとされる怪獣らしきスペル星人に似た謎の怪獣が登場している怪獣ショーの写真が現存している。
これに関して、「スペル星人を茶色に塗装したソフビ」が存在していたことが明らかになっている。(足裏には円谷プロとソフビ制作会社であるMarmitの表記がある)
一説では当時の原型師が勝手に制作し、裏で販売していたものであるとされ、未塗装のソフビも流通していることから可能性は高い。
漫画『ウルトラマン超闘士激伝』のOVA版ではスペル星人がモブとして登場した。
2012年9月に講談社から発売された「ウルトラ怪獣DVDコレクション6 メトロン星人」において、「セブン」放送当時の雑誌記事の再録という形でひっそりとスペル星人が復活を果たしている。
また、ソユーズに搭乗した古川聡宇宙飛行士が出演したNHKの番組(2013年)で、幼いときにウルトラセブンに憧れて宇宙飛行士になったというエピソードを紹介する際、彼が子どものころに描いた「すぺるせいじん」が「めとろんせいじん」等とともに紹介されている。子どもの描いたものとはいえ、40年以上の時を経てスペル星人が日本の公共の電波に乗った瞬間である。
第12話が問題になった1970年10月という時期は、『ウルトラファイト』の放送開始直後であり、円谷プロとTBSの間で『帰ってきたウルトラマン』の企画が本格化したころであった。円谷プロと小学館が謝罪・作品の封印という対応を迅速に行ったことで、抗議・報道は沈静化し、問題はほぼ年内に収束した。翌1971年に入り『帰マン』の撮影が始まり、4月から放送開始。第二次怪獣ブームが巻き起こり、ウルトラシリーズは続いていくこととなる。
仮に円谷プロが対応を誤り、ウルトラシリーズの印象が大きく損なわれることになれば、『帰マン』の企画が頓挫していた可能性もある。そうなれば円谷プロの存続自体が危うくなり、その後のシリーズもなかったかも知れないのだ。
スペル星人が犠牲になったことで、円谷プロとウルトラシリーズは守られた。そう考えると、帰ってきたウルトラマンの声をスペル星人と同じ声優(谷津勲)が演じているのはどこか意味深である(といっても、谷津氏は非常に多くの作品に出演した方なのだが)。
ちなみに『ウルトラ怪獣大百科』の『こうもり怪獣バットン』の回で『秘密の腕時計を使ってまんまと大量の血液を集めた』と言うスペル星人の犯行と思しき解説があった。なお、バットンはスペル星人とは逆に子供の血液は不味いという理由で子供を狙わなかった。
チャイヨー・プロダクションは、その話題性を知ってか知らずか独自にスペル星人を復活させており、現地タイで行われたショーなどに登場させていた他、未製作に終わったテレビシリーズ『PROJECT ULTRAMAN』でも、地球に出現した13体の怪獣のうちの1体として登場予定だったという。
ただし、チャイヨー自体がスペル星人並みの大人の事情の塊であり、これらの言わば「チャイヨー版スペル星人」に円谷プロは一切関与していない。
こちらも円谷プロ公式ではないが、ガイナックスの前身である「DAICON FILM」主催のSF大会「DAICON 4」のOPアニメーション『DAICON IV OPENING ANIMATION』にて某白い猿と共に数秒だけ登場している。
関連イラスト
関連タグ
トゥエルヴ:デザインと名前がスペル星人のオマージュ。
プレアデス星人: 原義が同じく「昂」である別作品の異星人。但し、性格は別物で良心的である(性格や境遇はむしろタイニーバルタンに近い)。
ポリゴン:スペル星人と同じく登場回が欠番扱いになってしまい、これ以降、映像作品には出演していない。こちらは存在自体が黒歴史になっていないのでスペル星人よりかはまだマシなのかもしれないが……。
なお、登場回の初放送日は1997年12月16日であり、奇しくもスペル星人登場回からピッタリ30年の1日違いであった。